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Photo by Aaron Nardi

今年2月に、41歳で自殺した伝説的BMXライダー、デイブ・ミラ(Dave Mirra)が、慢性外傷性脳症(Chronic traumatic encephalopathy 以下CTE)であったと報道された。CTEは、頭部への反復する衝撃が原因で発症する神経変性疾患及び、認知症同様の症状を持つ進行性の脳障害疾患だ。アメリカン・フットボール、ボクシング、サッカー、アイスホッケーなど、これまで多数のコンタクト・スポーツのプレーヤーたちがCTEと診断されてきたが、未だ、死後に脳を解剖しなくては最終的な診断ができない症例である。

ミラは、エクストリーム・スポーツ(以下Xスポーツ)界で、初めてCTEと診断された。しかし、繰り返される頭部への強打が、大きな危険を孕んでいるのは誰しもわかっていた。今回のミラのケースを知り、驚く関係者はいない。

「自分の指の数より多くの友人がCTEを患っていると保証する」と17歳からプロBMXライダーとして活躍しているマイク・エスカミーラ(Mike Escamilla)は語る。「デイブは最初じゃない。つまり、これからが怖いんだ」。エスカミーラは、現在38歳。

エスカミーラも何度も頭を打っている。意識不明になったのは10〜15回。脳震盪は7、8回。特に、2012年の事故は酷かった。彼は、イラク駐留米兵のためのイベントに出演。消防車の上にバイクで乗り上げたのだが、前輪のブレーキがスリップし、3メートルほど下の地面に叩きつけられた。その衝撃でヘルメットは壊れ、頭蓋骨を損傷。目の周りも黒いアザに包まれた。このような事故は、あまりにも多い。

「あのときが一番怖かった。頭の中に焼けるような痛みを感じたんだ」とエスカミーラは話す。「何回かの酷い事故が、僕の生活を変えてしまった。以前のように読んだり、話したりできない。同時に複数のことができない。そんな自分に気づいたんだ」

エスカミーラと他の選手たちは、頭の怪我についてよく話しているが、気がつくとヘルメットの話をしているという。ミラやエスカミーラは、ヘルメットが簡単に手に入らない時代からバイクに乗っていた。手に入ったとしても、おさがりでボロボロだった。でもそれはそれで満足していた。しかし現在は、スケート場やスキー場でも、子供たちは、みんなヘルメットを着用している。

NSAA(National Ski Areas Association:国際スキー場協会) は、2014〜15年シーズンのスキー場調査で、9歳以下の児童の97%がヘルメットを着用していた、と報告している。18歳〜24歳は最も着用率が低く、70%という結果であったが、2002〜03年シーズンの18%からは大きく上昇している。

さらに現在のアメリカでは、子供、若者がバイクやスケートボードを楽しむ場合、ヘルメットの着用を義務付けている州もある。ヘルメットは悲惨な事故から頭を守り、命を救う。この法律は間違っていない。

しかし、アメリカン・フットボールが実証するように、どんなに頭部が保護されていても、脳は繊細で脆弱なままだ。ゼラチン状の塊が、頭蓋骨の中に浮かんでいる。それを卵の黄身とすれば、頭蓋骨は卵の殻に相当する。その卵を発泡スチロールやデュポン社のスーパー繊維で包みこんだとしても、中の卵黄は激しい衝撃、運動量、そして突然の方向転換などによって、大きく揺さぶられてしまう。

あるヘルメット・メーカーの弁護士は、こう語っている。「ヘルメットの構造は、通常のXスポーツに適応しているし、まったく問題はない。しかし、スキーで10メートルの崖からジャンプしたり、BMXでの後方宙返りは、ヘルメットの構造とは関係なく、脳を危険に晒しているのではないか」

エスカミーラは続ける。「1980年代の選手たちは凄い技をたくさん生み出した。それは、脳の損傷とスポーツが繋がるレベルだったし、そんな時代の始まりだった。そしてさらに今は、もっとクレイジーな要素が加わっている。障害の可能性はかなり大きくなっているんだ」

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Coco Zurita on a ramp last fall. Photo by Aaron Nardi

小型化と軽量化を目指すヘルメットの構造は、耐久性と防護性のバランスによって成り立っている。

衝撃に対して頭部を保護するのに加えて、広範囲の視覚を確保し、空気抵抗を最小限に抑えねばならない。「やろうとすれば、誰でも最高に安全なヘルメットを開発できる。ただ、ビーチボールぐらいの大きさになってしまうだろう」と語るのは、「全力でアスリートを重大事故から守る」をミッションとするスウェーデンのスポーツアクセサリー企業「POC」の北米マーケティング・ディレクター、デイビッド・デマルティニ(David DeMartini)だ。「我々にとって最も重要なのは、ビーチボールサイズにならず、軽量で空気力学に適ったヘルメットをどのようにして製造すればいいのかということ」

ほとんどのXスポーツ用ヘルメットは、いち度だけの大きな衝撃から守るために設計されている。これらはEPS発泡スチロールでつくられているが、このタイプは一度衝撃を受けると、新品時の効力を失ってしまう。しかし現在では、様々な衝撃を処理できる新しいタイプのヘルメットも開発されている。より弾力性に優れたEPP発泡ポリプロピレンが使われるようになり、POCやカリフォルニアのメーカーPRO-TECなども、EPP発砲ポリプロピレンを調合したヘルメットを製造している。

度重なる頭部への衝撃がCTEと関連づけられるようになってきた。医学的にも科学的にも、「反復性脳外傷」はCTEの要因であり、リスクを伴う、と示唆されている。また、バイクにしろスケートボードにしろ、転倒後も「構わず競技を続けろ」というルールも考え直さなければならない。POCのデマルティニも、「アメリカン・フットボールがそうしているように、Xスポーツもパラダイムを変える必要がある」と指摘している。脳震盪は、その日のうちに復帰していいような傷害ではない。治療を経て、医療関係者から正式な許可を受けるまで、欠場するのが当たり前なのだ。

デマルティニは、さらに続ける。「これまでのヘルメットは、いち度の重大事故を防ぐために設計されていた。しかし、CTEの問題から、私たちは最も重要視していたこのポイントを捨て去る時節が来た、と考えている。もしヘルメットが壊れていなかったとしても、将来的に傷害を負わずに済むわけではない。子供が倒れ、パッと起き上がったとしても、怪我をしていないとはいい切れない」

悲劇的なミラの自殺をきっかけに、Xスポーツ界はCTEについての議論を発展させた。そして、デマルティニのようなメーカーのスタッフたちには、防護ギアの刷新を促した。エスカミーラも、その他のプロ選手たちも、自分たちの頭を守りたい、と望んでいる。だからこそ、CTE予防にもっと注意を払わなければならないし、ヘルメットだけでは解決しない事実を理解しなくてはならない。ヘルメットは、重要かつ必要な防御のいち部ではあるけれど。

「今は、ストリートにいる多くのプロたちがヘルメットを着用している」とエスカミーラはいう。「ヴァン・ホーマン(Van Homan)やゲイリー・ヤング(Gary Young)のようなスター選手もヘルメットをつけている。スケーターのマイク・バレリー(Mike Vallely)も、すべてのビデオで着用していた。みんな有名なプロ選手だし、彼らが率先してヘルメットに飛びつき、サポートしている姿は本当にクールだ」

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Van Homan wearing a helmet. Photo courtesy Mike Escamilla