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Photos courtesy of Sam Adonis

ドナルド・トランプ(Donald Trump)が、メキシコ口撃を始め、共和党の大統領候補に指名された頃から、サム•アドニス(Sam Adonis)には閃きがあった。サム・アドニスという名は、27歳のプロレスラー、サミュエル・ポリンスキー(Samuel Polinski)のリングネームだ。ポリンスキーは、ピッツバーグの田舎で、フリーのプロレスラーとして興行していた父親に育てられ、現在は既に引退している元WWEレスラーのコリー・グレイブス(Corey Graves)の弟でもある。レスリングだらけの環境で育った彼は、リック・フレア(Ric Flair)、テリー•ファンク(Terry Funk)、ブラックジャック•ムリガン(Blackjack Mulligan)などの大物レスラーから、スタイリッシュにキャラクターと自身を同化させている昨今の格闘家たちまでを研究してきた。膝の怪我が原因で、WWEとの育成契約を早期に打ち切られたポリンスキーだが、その後、5年間を海外で活動。オールスター・レスリング・UKでは、年に何百もの試合をこなしながら、自分自身の道を拓いた。

そして2016年4月、メキシコシティへ移住し、現存する世界最古のプロレス団体、CMLL(Consejo Mundial de Lucha Libre:コンセホ・ムンディアル・デ・ルチャ・リブレ)に入団し、バカでかく、ワザとらしい金髪の悪役になって、観客を狂乱させている。「自分のパフォーマンスによって、客が最高に喜ぶ。こんな経験、ほかにあるもんじゃない」。彼は自ら〈エル・ルド・デ・ラ・チカス(女性の仇敵)〉と名乗って暴れていた。そして米国の大統領選挙が激化するにつれ、ポリンスキーは、エル・ルド・デ・ラ・チカスに加えて、新たなキャラをつくりあげた。メキシコ全土が毛嫌いをするであろう〈ドナルド・トランプ支持者キャラ〉である。そしてトランプが選挙に勝つと、彼はそのキャラをさらに押し進めた。

ポリンスキーは、どのようにして悪役になったのか。そしてトランプ大好きキャラに対する最悪のリアクション、 新しく選ばれた最高司令官に対する彼の気持ち、そしてポリンスキーの首を取りたくて絶叫する観客への満足感について、彼は語ってくれた。

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実をいうと俺は、ずっと人気者になりたかったんだ。子供の頃からの憧れだった。ハルク・ホーガン(Hulk Hogan)が大好きで、俺もそんな人気者になりたかったんだ。彼は、女の子たちにモテて、男連中も仲良くしたがり、子供たちも尊敬するようなレスラーだったんだ。俺は悪役だけど、今はそのほうが観客が楽しめるエンターテイメントを提供できるとわかっている。他のやつらよりも、観客を挑発する術を知っているんだ。ほとんどの人は、「黙れ!」とか、「座れ、デブ!」とか叫べば、簡単に悪役ができると勘違いしている。しかし実際は、その悪役ぶりが本性だ、と観客に信じ込ませるほどなりきらないと意味がない。レスリングの美学はそこにあるんだ。だから俺は、酷くて、度を超えた悪役なのに、試合後は大きな拍手を貰える。ファンは一緒に写真を撮りたがる。ちゃんと尊敬と感謝に繋がっているんだ。

メキシコのプロレスは、カオスと狂気で溢れまくっていて、そこにストーリーなんて必要ない。米国のプロレスは、ドラマ仕立で、観客の心理に訴えようとしている。選手の優れた能力ではなく、感情を商品化したいんだ。でもメキシコでは、ただのレスリングだ。親も祖父母も、同じものを観てきた。1930年代から、レスリングはマスクとともに、メキシコシティの文化の大部分を占めてきた。エル・サント(El Santo) というスーパー・ヒーローもいるぐらいだ。それに試合運びも米国よりずっと速い。3対3でのタッグマッチもある。まるでサーカスだ。とてもカラフルで、ちょっとワイルドで、わけがわからなくなるんだけど、最終的にはすべてオッケーになるんだ。

レスリングは、道徳劇だと俺は考えている。いろんな悪徳や美徳など、リングの上では道徳的属性が人格化されるんだ。だから当然ながら、悪役中の悪役になりたくなる。バットマンやスパイダーマンと同じだ。みんなが心からヒーローを受け入れるためには、本気でムカつき、アタマから消せない最強の厄介者が必要なんだ。さらにメキシコのレスリング・ヒストリーを踏まえると、悪者は外国人でなければダメだ。

タイツにエアブラシでトランプの顔を描いて臨んだ最初の試合、ケーブルテレビにそれが映った。番組のエンディングでアップになったんだ。そしたらバカバカしいほどの圧倒的な反響を呼んだ。それでこのアイデアを膨らませた。「スゲエ、面白い!」といった肯定的な意見もあったし、「ちょっと、やりすぎだろ」という声も多かった。しかし、それこそが俺の目指すリアクションだったんだ。トランプが選挙に当選するだいぶ前、7月の話だ。正直いって、彼が当選するとは考えてもみなかった。

そして、彼が当選すると同時に、俺は、旗をつくってもらうために業者にすぐさま電話した。一日も無駄にしなかった。で、その続きはいうまでもない。

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初めて旗を持って出たのは、選挙のあとの土曜日だった。 観客の怒りは、説明しようのないほど凄かった。まず、大きなオレンジ色の照明が当たった米国旗が見える。その真ん中に顔がある。そいつが誰かわかった瞬間に、観客はレスリングショーにいることすら忘れた。「そいつを潰せ!」ってね。そのリアルな感情とパッションこそが、俺の生きがいだ。観客はなにも考えず、できる限りのすべてを、俺にぶつけてきたんだ。

今のところ、とくに身の危険について心配はしていない。俺は193cm、113キロもある。大きいんだ。もし俺がもう少し小さかったら、運試しをしたがる輩が増えるかもしれない。

みんな、俺にポップコーンを投げてくるし、ビールも投げつけられる。缶ビールじゃない。バーガーキングの紙コップみたいなヤツだ。まぁ、よく当たる。ある日曜日、俺は気を失った。リングで打ちのめされ、横たわっているところへ、キンキンに冷えたビールを投げつけられた。偶然、なにかのショックが重なったんだろう。しかし今のところ、それほどヒドい状況にはまだなっていない。そうならないよう祈っているよ。

たまに酔っ払ったファンが、トランプについて突き詰めたがる。あと、俺に手を出させたがるヤツが結構いる。俺と握手をしていうんだ。「いいファイトだった。でもお前は役立たずだ」「そうか、ありがとな」と返す。「本気でいっているんだ。お前は役立たずだ」と彼らは続ける。俺が何をするか見てみたいんだよ。だけど、俺はそれほどバカじゃない。ここでそんなことに関わりたくないいんだ。

俺は、トランプが政治家だからではなく、型にはまっていないから好きなんだ。彼はビジネスマンだ。それについてはとても尊敬している。しかし同時に、国を動かすにあたって、今までどんな経験をしてきたのかはわからない。わかっているのは、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)の発言や、民主党の様々な意見から、俺は、いつでも共和党を選ぶってことだ。

俺は決してレイシストではないし、世間にもそのようなイメージを絶対に持って欲しくない。俺のガールフレンドはメキシコ人だ。俺はただ、真っ当なプロレスを信じる純粋主義者なだけだ。俺は、観客を幸せな気持ちで家に帰らせる。彼らのあらゆる感覚を可能な限り刺激して、最高のパフォーマンスを提供するんだ。

殴られるかもしれない、刺されるかもしれない、そう考えながら俺は会場を後にしている。しかし実際は、たくさんの観客が子供を連れて、俺と写真を取りにくる。俺が売ってるパフォーマンスですごく楽しんだからだ。バットマンを観たら、ベインの格好をした悪役とだって写真を撮りたくなるだろ?