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大音量でもご近所さんに迷惑かけず!? 21世紀最初の大発明 音楽ファンは要チェック

セルジオ・コルドバ氏は、スペインのマスタリング・エンジニアで、音響心理学を利用した音響システムの特許を取得。このシステムを使えば、コンサートホールやクラブで音量を上げても、騒音レベルは上がらないという。
Xergio Córdoba

お隣さんに嫌な思いをさせずに、音楽を大音量で楽しむシステムが開発されました。

セルジオ・コルドバ氏(Xergio Córdoba)はスペインのマスタリング・エンジニアで、音響心理学を利用した音響システムの特許を取得。このシステムを使えば、コンサートホールやクラブで音量を上げても、騒音レベル(dBA=A特性音圧レベル)は上がりません。Masn´live©と呼ばれるこのシステムは、基本的にはプロセッサであり、どのようなサウンドシステムでもこれを一度挿入してしまえば、騒音規制を犯さずに、音楽を理想のクオリティーで楽しむことができます。

要するに、いつも文句を言ってくる近所の住民や大家さんに気づかれずに、音量を上げられるのです。

Masn´live©は、パーティー・フリークの悩みを解決できるのか、コルドバ氏に訊いてみました。

この発明は、何をきっかけに思いついたのですか。

2、3年前、ナイトクラブを経営している顧客と話をしているときに思いつきました。どこのクラブでも、音の大きさに関しては法規制があるので、運営に四苦八苦しています。規則では音圧の低減が求められるので、低周波数を制限しようとすると、音質が極端に劣化してしまいます。サウンドが悪いと、店の評判に影響します。

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そうした規則は、不要な騒音や、有害な騒音を制限するのに役立っていると思いませんか。

そうですね、クラブ営業はかつて、何でもありの無法地帯でした。ですから、法律を制定する側は、もちろん環境に配慮し、一般家庭への影響、クラブのビジネス事情を考慮した上で、適切な法律を制定しているはずです。それに加えて、開発者や土地の所有者は、建物と周辺環境が実際にナイトクラブに適しているか否か、確かめることからスタートして、物事を適切に進める必要があると思います。

では、あなたがこんなツールを創ろうと決めたとき、まず何をしましたか。

覚えていないほど長い時間眠れずに過ごした後、機材のテストを行い、修正とあらゆる解決策を試しました。そういうときのほうが、頭が自由に働くようです。実は、このシステムの圧倒的大部分は、眠れない夜に考え、開発したのですが、もとになったのは小型レコーダーに記録した私のばかげたアイデアでした。でも、そんなに簡単ではありませんでしたね。
創り終えて、発表する準備ができると、その製品の特許権取得にとりかからなくてはなりません。そのためには、製品全体について本当に細かく、人々に誤解を与えないような表現で書類を作成します。常に心配していたことは、私たちが開発しました、という企業が突然現れることです。特許を取得していても、これまでに発表されていないものがたくさんありますから。実際、似たような技術を研究している企業が一社ありました。その会社は事実私たちの特許を阻止しようとしたのですが、幸いにも私たちが勝ちました。

素人にもわかるよう、システムがどのように働くのか説明してもらえますか。

かなり複雑なので、このプロセスを簡単に説明するのは難しいのですが、要するに、実際の音波と、脳による音波解釈の関係を上手く利用するのです。音響心理学の話です。

たとえば、ヘッドフォンで音楽を聴いても、音楽の重要な要素である、ドラムやベースの低音を、ヘッドフォンでは正しく再生できません。その問題を解決するために、私たちは、ヘッドフォンでも低音がきちんと聴こえるよう、補正をかけます。これと同じロジックで補正するんです。マスタリングでは頻繁にやっていることですから、私たちの目的達成のために応用しました。

そのシステムは、過度の騒音や耳が損傷を受ける可能性から守ってくれるのでしょうか。

聴覚損傷の度合いは、騒音レベルと、耳が音に曝された時間によって変化します。残念ながら私たちのシステムでは耳の損傷は防げませんが、実際よりも大きな音だ、と脳に知覚させる働きがあるので、損傷が最小限にとどめられます。

求めていたものができたと分かったのは、どの時点ですか。

低音を実際よりもパワフルに再現できたときに、成功を確信しました。騒音レベルを変えずに、しかしオーディオ音質とインパクトは改善しながら、音の強さを倍にできたのです。

騒音レベルを変えずに音を倍にするとは、すごいですね。どこが限界だと思いますか。

そうですね、音を倍にするだけで、私たちにしてみれば万々歳です。なにしろ音の整合性と品質を維持しながら達成したのですから。それほど前のことではないのですが、マドリッドでは有名なクラブで、普段の3倍近く大きな音でプレイしました。フロアが超満員だったせいで、音質が劣化し始めましたが、その日はクラブの記念日だったので、音質よりも音量を重視しました。

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ほかにはどこでそのシステムを使えますか。ホームパーティーはどうでしょうか。

バルセロナのホームパーティーでテストしました。でも、ターゲットは、可能な限りの高品質で音楽を届けたい、と願っているアーティストです。音の問題がなければ、本当の奇跡を起こすことができます。基本的にはオーディオ・マスタリングと同じなのですが、それをスタジオでやらずに会場でやるのです。たくさんの場所でテストしましたが、結果はどれも驚くほど良好でした。音像の奥行きがより深くなります。ブルース、ポップス、サルサ、ロックなど、あらゆるジャンルで試しました。

試したアーティストを教えてください。

ローラン・ガルニエ(Laurent Garnier)がLa Rivieraで試しました。ソナーでは、エレン・アレン (Ellen Allien)、スティーブ・ローラー(Steve Lawler)、ヨリス・ボーン(Joris Voorn)、ミス・キトゥン(Miss Kittin)などが使いました。バルセロナのTeatro Arteriaではジェイミー・ジョーンズ(Jamie Jones)が使っています。リー・フォス(Lee Foss)は、ロンドンのEgg ClubやマドリッドのPendulum、それからFabrikとAtlántida Barcelonaでは何度も使いました。オスカー・モレロ(Oscar Mulero)とChristian WunschもReverseで使っています。

野外レイブにもかなりよさそうですね。オープンスペースでも使えますか。

もちろんです。優れた音響システムがあれば、どんな場所でも利用できます。屋内、野外、どちらでも効果が証明されています。ソナー・フェスティバルの期間中、多種多様な状況で実際に試用しました。今年はもっと多くの有名なフェスティバルで使う予定です。

では、次の段階は何ですか。商用化ですか。

そうです。いちばん難しい部分です。新しいものを創る必要がありますが、新しすぎてはいけません。ほとんどの人は新しすぎると理解しようともしませんから。私たちは音の体験を「コード化する」のですが、問題は、頭が「解読」できるような方法でコード化するというところです。次の段階、その最終段階はまちがいなく大変です。