男性型セックス・ロボット
〈ネイト(Nate)〉. 〈Realbotix〉社の男性型セックス・ロボットのベースとなる〈RealDoll〉. Image: RealDoll

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男性型セックス・ロボット

2018年1月6日、〈Realbotix〉社CEO、マット・マクマーレンが、年内に男性型セックス・ロボットをリリースする予定だと発表した。このニュースが報道されると、ウェブメディアは、ペニス付きロボットに沸き立った。しかし、セックス関連のテクノロジーが進歩するごとに、私は不思議になる。「誰がよろこぶんだろう?」

セックス・ロボットは、〈好色なディストピア的悪夢〉、もしくは〈ファンタジー〉と報道をされがちだが、それでも私たちはワクワクする気持ちを抑えられない。性に貪欲なセックス・ロボットなら、永遠にセックスができる。ただ、自我をもつ、人間そっくりのセックス・ロボットを、全ての家庭が購入できるようになるのは、まだまだ先になりそうだ。

とはいえ、勢いはある。〈男性型セックス・ロボット〉の年内発売の可能性が報道されると、ウェブメディアは、ペニス付きロボットに沸き立った。しかし、セックス関連のテクノロジーが進歩するごとに、私は不思議になる。「誰がよろこぶんだろう?」

2018年1月6日、〈Realbotix〉社CEO、マット・マクマーレン(Matt McMullen)が、〈Daily Star Online〉に語ったところによると、同社は2018年内に、男性型セックス・ロボットをリリースする予定だという。ただし、現在、同社が宣伝しているのは、リリースを控えた女性型ロボット〈ハーモニー(Harmony)〉だ。〈Realbotix〉は、〈Abyss Creation〉の子会社で、〈RealDoll〉の姉妹企業でもある。〈Realbotix〉によると、新しいロボットは、現在発売中の男性型〈RealDoll〉と同じようなかたちになるらしい。

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〈RealDoll〉シリーズの〈ニック(Nick)〉. 読書家. 〈Realbotix〉社の男性型セックス・ロボットのベースとなる. Image: RealDoll

これまでのセックス・ロボットの大半は、女体をプロトタイプにした、ストレート男性向けだった。2017年、スペイン、バルセロナにできた〈ロボット売春宿〉が話題になったほどだ。

しかし、人間を悦ばせる、完全なヒト型ロボットなど、本当に可能なのだろうか。しかも、年内発売が真実であれば、驚くほど速い進歩だ。セックス・ロボットに期待しすぎる前に、男性型セックス・ロボットが年内に発売されるという噂が本当なのか、〈Realbotix〉に真相を尋ねた。

「はい、当社は、ラインナップに、男性型ロボを準備しています」。メールで回答をくれたのは、同社広報のガイル・リンドロース(Guile Lindroth)。具体的なスケジュールまでは明かさなかったが、リンドロースによると、男性型ロボは、携帯用AIアプリでコントロールする予定で、より人間らしくなるという。さらに、ハーモニー同様、男性型ロボットにも、温度センサーとタッチセンサーが備わる予定らしい。

しかし、批判もある。「結局これは、マット・マクマーレンが、男性視点でつくったロボットです」と電話越しに語るのは、ブログ〈MakeLoveNotPorn〉の創設者、シンディ・ギャロップ(Cindy Gallop)だ。彼女は、ある記事から引用したマクマーレンの発言を大声で読み上げた。「ロボットは、電源ケーブルを差せるので、〈あなたが望むだけ腰を振る〉」

「〈あなたが望むだけ腰を振る〉のは、女性が求める最高のセックスの定義にはあてはまりません」とギャロップ。「女性は、挿入時間が長いほどよろこぶ、と決めつけています。ふざけてますよ」

女性型セックス・ロボットは、陰茎のある個人にとって、とてもシンプルだ。適当な〈穴〉を選んで楽しめばいい。しかし、女性にとっては、そんなに単純ではない。「セックス・ロボットも男女平等だというなら、このロボットは、口、舌、唇をどんなふうに使って、シビれるようなオーガズムに導いてくれるんですかね」とギャロップ。「女性主導で立案、設計された男性型セックス・ロボットが見たいです」

まさに、コンピューター科学者で、『Turned On: Science of the Sex Robot』の著者、ケイト・デヴリン(Kate Devlin)博士の研究テーマだ。「セックス・ロボットとセックス・トイは、別モノです。現在の形態のセックス・ロボットは、ダッチワイフ市場から生まれました」と博士。

「ふたつが、抽象的で非ヒト型の、インタラクティブなセックス・テクノロジーとしてひとつに収束すれば、もっとおもしろくなるし、反対も減るでしょう」

基本的に、セックス・マシーンは、異様にセクシーな女性型しかないので、それがより多様な性的嗜好に応えられるようになるのは素晴らしい、とセックス・ブロガーの〈ネット女子(Girl on the Net)〉(仮名)は、メールに記した。例えば、男性のセックス・ロボットは、ヒト型ロボのパートナーを探している男性同性愛者にとって僥倖だ。しかし、それも結局、社会的に定義された〈性欲の対象〉だ。

「長らく、ストレート男性が何に興奮するのかを基準に、セックスが定義されてきました。それが今でも、セックス産業の欠点です。本来、性欲の対象は幅広いのですが、メインストリームのポルノやセックス・ロボットには、ストレート男性の性欲しか反映されていません」とネット女子。

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それが、〈あなたが望むだけ腰を振る〉、という発言に結びつく。

男性型ロボは、セックス関連のテクノロジーにおける、さらなる多様性へのステップだが、決して前進ではない。くっきり割れた腹筋、引き締まった腕、妙に生気のないありきたりな目つき。ロボットのセクシュアリティの限界を広げるどころか、〈Realbotix〉は、ストレート男性が想像する〈女性が求める男性像〉に固執している。しかし、実際、ヘテロ女性向けのポルノに出る男性は、もっと草食系だ。それでも今は、現実味のないセクシーな女性型ロボット、現実味のないセクシーな男性型ロボットしかない。セックス・ロボットは、ジェンダー規範を打ち砕いたり、性的嗜好の未知のテリトリーを切り拓いたりはしない。

同様に、セックス・ロボットのAIによるパーソナリティも、ヘテロ視点のステレオタイプに設定されている。デヴリン博士は、抽象的な非ヒト型の不愉快でないセックス・ロボットを望んでいる。

結局、男性型AI搭載セックス・ロボットは、今のところ、机上の空論だ。遠隔操作できるセックス・トイ、〈テレディルドニクス〉の開発者、カイル・マチュリス(Kyle Machulis)からのTwitterメッセージによると、われわれが見ているニュースは、せいぜい企業による開発段階の話か、「最悪、まったくのデタラメ」だという。

文字どおり相手が死ぬまでイカせたり、陰茎がもげるような口淫もせずに、触れたら反応して、AIによるコミュニケーションが可能なセックス・ロボットが現れるのは、まだまだ先だ。そもそも、歩くのもままならない今のロボットに、良いセックスなんてできるはずがない。

「セックス・トイ市場や、ロボット関連市場に、そこまでのレヴェルに達していません」とマチュリス。「みんなが想像する〈セックス・ロボット〉のためには、今の技術では不十分です」

今のところ、〈男性型セックス・ロボット〉は、ペニスバンドを装着したマネキンにすぎない。