Bild: Hutschi | Wikimedia Commons

たいてい、コーヒーの染みのようで、どうやっても消せない。あるいは、ディスクの表面をピンで引っ掻いたような傷であったり、全体が変色していたりもする。いずれにせよ、このような〈ディスク・ロット(ディスクの腐敗)〉を発見したときには、名盤も、おもしろい映画も、二度と鑑賞できない。

光学メディアをダメにしてしまうこの腐食は、デジタル公文書のアーキビストにとっても、今となっては珍しい〈レーザーディスク〉のようなフォーマットで映画を観たいみなさまにとっても、かなり深刻な問題である。

この現象について探ってみよう。

「ディスクをナイフで切りつけるのはオススメしません。ディスクを灰皿がわりにタバコをもみ消しても、ディスクは壊れてしまいます。でも、ジャムをこぼすくらいなら大丈夫です」

これは、1988年、レコード・レーベル〈ニンバス(Nimbus)〉が調査したCDのパフォーマンス研究に対し、EMIの広報が発表したアンサーコメントだ。ニンバスは、英国で初めてCDを製造したメーカーで、ディスク・ロット問題について研究した結果、8~10年でディスクの大半が自壊するだろう、と発表した。ニンバスの報告は、当時優勢だった「CDは半永久的」という通説に逆らうもので、「保護層が適切に処理されておらず、ディスクの質が落ち、問題が発生する」と指摘していた。上記のコメントからわかる通り、レコード会社は当初、この問題について懐疑的だったが、結局、ニンバスによるディスクの完全性への懸念は、重要なうえに真実だった。

2010年。入手直後から、ディスク・ロット状態のゲーム・ディスクがある事実に不満を抱いたビデオゲーム・サイト〈RF Generation〉のブロガーが、〈大切なお知らせ〉として、コレクターに向けて記事を公開した。ディスク・ロットに対しては、自分自身で意識的に管理をしたほうがいいという内容だった。

〈slackur〉、または〈Jesse Mysterious〉というハンドルネームで記事を投稿するブロガーがそこで明らかにしたのは、真摯なコレクターにとっては涙モンの経験だった。ディスク・ロット問題について知った彼が、自分のコレクションを確認したときの話だ。ほとんどが新品だったのに、たくさんのディスクに白いシミのようなものを発見した。典型的なディスク・ロットの症状だ。

以下、彼の文章を引用する。

小さなひとつの点でしかないのに、それは修復不可能なダメージを意味する。傷を消すべく処置しても、失われたデータは戻らない。ゲームが受けたダメージは永遠なうえに、年月が経つにつれてひどくなる気配すらある。

ネット上のソースによると、ディスク・ロットは限定的な問題だとされている。特定のメーカーで、特定の期間に製造されたディスク(そしてCD-R)だけに現れる問題であり、全般的な問題ではないそうだ。

しかし、この問題について知った私が、所有する数百枚のセガ、ターボ、サターン、ドリームキャストのディスクを確認してみたら、数十枚にディスク・ロットを発見した。高価な新品ゲームたちも、光に当ててみたら白い点がひとつ以上見つかり、ダメージを受けているとわかった。何年も触っていなかったゲームをいくつかプレイしてみたら、時折フリーズしたり、あるいはまったく動かなかった。工場から出荷された状態で保管していたゲームも、開封してみたら同じ状態だった。

私のようなコレクターにとっては、本当に気が触れてしまいそうなくらいの悪夢だった。

米国議会図書館の保管専門家ミシェル・ユケット(Michele Youket)も、彼女の業務において同様の現象に悩まされているという。〈静かなる崩壊〉ともいうべきディスク・ロットの症状は、3タイプあるらしい。ディスクの〈ブロンジング(褐色化)〉、ディスク表面に現れる〈ピン先ほどの穴〉、そして〈エッジ・ロット(ディスク端の腐食)〉だ。彼女が働く図書館でも、音楽をCDで保管するようになってから、すぐに脆弱性が明らかになり、ディスク・ロットは重大な問題のひとつとなっているそうだ。

光学ディスクについて留意しなければならないのは、全て同じように見えるディスクだが、製造過程における些細な違いから重大な差異が発生し、それが最終的に深刻な影響を及ぼす可能性があるという事実だ。技術は、時とともに発展するだけに、古いディスクの製造には、新しいディスクと違う化学物質が使用されている可能性もある。

ここで例として、英国のCDメーカー、〈Philips and Dupont Optical〉(PDO)を紹介しよう。この企業は、消費者の〈ブロンジング〉したディスクを返品交換するための特別カスタマーサポートを提供した。

1988年から1993年にかけて、PDOは、硫黄に対して抵抗力のない、質の悪いラッカーを使ったCDを多数プレスした。なぜそれが問題かというと、CDに付属しているブックレットやインレイなどに微量な硫黄が含まれているからだ。つまり、ディスクを保護すべきパーツが逆に、ディスクにダメージを与えてしまうのだ。その結果、ディスクのアルミニウム・レイヤーが腐食、褐色化して、ディスクに記録されている音質にも悪影響を与えた。1991年から2006年まで、PDOはホットラインを設置し、ダメージを受けたディスクの交換を受け付けた。

かつてのPDOのようなディスク・ロットは、時を経るにつれ減ってきたとユケットは語る。

「ディスク黎明期に起きた問題の原因のほとんどは、テクノロジーの進歩につれてなくなりました。とはいえ、新しい、より複雑な記録媒体の場合、今度は、別のメカニズムに起因する問題が発生する可能性があります」とユケットは懸念する。(ちなみに、ユケットによると〈ディスク・ロット〉という通称は、厳密には正しくないらしい。なぜなら、ディスクに問題が起こるのは、保護膜が適切に機能していないからだ。)

守るべき対象が国の文化遺産であれ、個人的なコレクションであれ、ディスク・ロットは簡単には解決できない大問題といって差し支えないだろう。