Image: Hands-Free Hectare

2017年9月6日の日没過ぎ、英国、シュロップシャーの静かな農園で祝賀会が催された。研究者たちによる、1年間にわたる努力と綿密な計画が結実し、不可能だと諦められていた試みが身を結んだ。それは、土地を耕すところからはじまり、豊かな農作物が育つまでを管理する、世界初の完全オートメーション農業だ。全ての作業をロボットだけでまかなう〈ハンズフリー・ヘクタール(Hands Free Hectare)〉は、食糧供給の大改革に向けた、新たな歩みなのだ。

2016年10月、政府の資金提供20万ポンド(約3000万円)を受けたハーパー・アダムス大学のチームは、トラクターと、25年選手のコンバインにカメラやレーザー、GPSシステム搭載からプロジェクトに着手した。畑の監視にはドローン数台を使用。〈偵察係〉のロボットは、調査のために土壌のサンプルを集めた。

これまでの無人運転トラクターの研究では、大型マシンが使用されてきたが、ハーパー・アダムスのチームは別の戦術でアプローチした。彼らが使用したのは小型トラクターとコンバイン。小型化した結果、これまでより細かな動作が可能になり、土壌のダメージも将来の収穫に悪影響がないよう抑えられ、効率も上がった。

プロジェクトで収穫できたのは大麦4.9トン。プロジェクトリーダーのキット・フランクリン(Kit Franklin)が『Times』紙に語ったところによると、「ヘクタール単価で史上最高額の大麦畑」となった。もちろん最終的には規模の経済を成立させ、自動農業の低コスト化を目標にしている。

〈ハンズフリー・ヘクタール〉以外にも、全自動農業を推進しようと試みる企業や団体が多々ある。今年9月には、トラクター・メーカーの〈ジョンディア(John Deere)〉が、自動雑草除去のためのマシン・ビジョン・ツールの実用化を目指し、AI企業の〈Blue River Technology〉を買収した。フランスのブドウ収穫ロボット〈Wall-Ye〉は、長年、フランス、ブルゴーニュのワイン生産地で大いに活用されている。京都のロボット・レタス工場〈スプレッド〉は、日量3万株のレタスを生産し、エネルギー・コストの3分の1の削減を目指している。また、ドローンの導入により、世界中の農家で、作物監視の方法が変わりつつある。

ロボットは、高齢化と人手不足に悩む農家を救うためのカギだ。カリフォルニアなど米国内でも、労働力不足により農業の未来への懸念が高まっており、農業はいっそうロボットに頼るようになっている。「人の仕事を奪うのではない。人の仕事を変えるのだ」とフランクリンは声明で述べている。「トラクター運転手は、実際にトラクターを運転して畑を耕す必要がなくなる。その代わりに、車両マネジャーや農業アナリストとして、農業ロボットの数を管理し、作物の成長に細心の注意を払えばいい」

人間の仕事を奪うのが、オートメーションの全てではない。むしろ、人間にはできない仕事をこなすのだ。それは、多くの農業テクノロジー企業にとって、データ収集や深層学習を意味する。たとえばスタートアップ企業の〈Descartes Labs〉は、衛星画像の分析データを利用して、作物生産高を予測している。食物不足や気候変動の影響を知りたい政府にとっても、価値のある情報源だろう。

一方、〈ハンズフリー・ヘクタール〉は、収穫したての大麦で乾杯しようと計画している。全自動で収穫した大麦で、おいしいビールを醸造しようとしているのだ。