私たちの知らない「ロンドン」
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週末の若々しい喧騒と、ここで暮らす人たちが作るのんびりとした日常、この二面性こそがイーストロンドンの魅力だ。この両面を体験しなければ、イーストロンドンを語ることは出来ない。
そんなイーストロンドンを12年間にわたり撮影し続けて来た写真家ドギー・ウォーレスが、自身の作品をまとめた写真集『Shoreditch Wild Life』を出版した。ショアディッチに生きる様々な世代、民族、職業の人たちの姿がなんとも面白い。生きていることのリアリティさが滲み出ている。ここ10年強のイーストロンドンの隆盛と、そして影を堪能出来るはずだ。そんなイーストロンドンの生き証人ドギー・ウォーレスにインタビューを敢行。イーストロンドンの変化から、ドギー流のリアリティのある写真の撮り方の秘訣までを語ってもらった。『Shoreditch Wild Life』の写真とともに、イーストロンドンのリアルをお楽しみ頂きたい。
写真家ドギー・ウォーレスにインタビュー
撮影許可なし?ドギー流の撮影手法
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ーストリートやバスの中で写真を撮られるのをプライバシーの侵害だと思う人もいると思うんだけど、撮るなって言われたり、写真を消すように言われたりしたことはある?消すように言われることもあるけれど、まあ消さないね。ストリートマジシャンみたいなもので、写真を撮ったらすぐにそこを離れればいいんだよ。以前ビクトリアパーク(脚注⑧)で犬を連れている女の子の写真を撮ったときに「撮らないで」って言われたんだけど、こう言ってやったよ。「公園の写真を撮ってたんだけど何か?」ってね。まあ、ちょっと行き過ぎなところもあるのは分かってるけど、そういうことなんだよ。もし君が小説家だったら、実際の人に基づいたキャラクターを登場させるでしょ? それと同じで実際に何かを見て、それをアートに変えていってるだけのこと。写真を撮ることにケチをつけたらキリがない。ちょっと前にフランスでニュースになっていたけど、ゲッティが発表したような細かい決まりを無視して写真を撮ったり使ったりしちゃいけないんだってね。例えば道を撮影したくても、誰か一人でも通りにいたら写真を撮っちゃいけないってことだよね。もしプロがトラファルガー広場(脚注⑨)で写真を撮ろうと思ったら、人をストップさせて撮影しないといけないってこと?ショッピングセンターで撮るときも?そんな写真がいいものだとは全く思わないね。ー『Shoreditch Wild Life』には口が開いていたり、かなりリアルな写真が多いと思うんだけど、ああいった写真を撮る技術はどうやって身につけたの?確かに人が口を開けた瞬間をたくさん撮ってるかもね。あれは2回のフラッシュに対する反応なんだ。誰かと話していたり、叫んでいたり、自分を表現していたり。2回目のフラッシュはそんな瞬間を捉えてくれるんだよね。ーでは最後に。スタジオでポーズを決めているモデルより、普通に暮らしている人を撮る方が楽しい?僕はこれまでにきちんとポーズを決めて撮ったことなんて一度もない。だってそんなの退屈すぎるでしょ?
写真集『Shoreditch Wild Life』の購入はこちらドギー・ウォーレスの他の作品はこちらText by Tsuda Shotaro*脚注①ショアディッチ:ロンドン東部にある街ショアディッチ。ライブハウス、クラブ、パブ、アパレルショップなどが集まる若者の街。ショアディッチを起点に徒歩10分圏内にホクストン(北)、ブリックレーン(南東)、オールドストリート(西)が位置する。ダルストン(北)までは徒歩30分脚注②ラフトレード・イースト:ブリックレーンの真ん中にある老舗レコードショップ脚注③the Vibe Bar:ブリックレーンにあるバー。昼間はライブ、夜にはクラブイベントが行われる脚注④Sandra's bar:ブリックレーンの西に位置するコマーシャルストリートにあるパブ。現在の店名はThe Golden Heart。脚注⑤Shoreditch House:ショアディッチ駅前にあるウェアハウス脚注⑥オーバーグラウンド:ロンドン地下鉄(アンダーグラウンド)に対し、主に地上を走ることから命名された鉄道脚注⑦カムデン:ロンドン北部にある街。音楽、ファッションの街として有名脚注⑧ビクトリアパーク:イーストロンドンにあるロンドンで最も歴史のある公園。フェスやコンサートが行われることも多い脚注⑨トラファルガー広場:ロンドンの中心地ウェストミンスターにある広場