現代美術家であるロッカクアヤコ。アクリル樹脂を使った立体物に、彼女が描き出す世界を閉じ込めた作品が「OBSCURA」だ。この展示を機に、彼女のこれまでの歩み、そして今回の作品について聞いてみた。ファンタジックな世界観でありながら、ヒリヒリと迫りくる作品のパワーは、どこから湧き溢れ、生まれるのだろうか?

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ロッカクアヤコ アクリルに閉じ込めた二面性

現代美術家であるロッカクアヤコ。アクリル樹脂を使った立体物に、彼女が描き出す世界を閉じ込めた作品が「OBSCURA」だ。この展示を機に、彼女のこれまでの歩み、そして今回の作品について聞いてみた。ファンタジックな世界観でありながら、ヒリヒリと迫りくる作品のパワーは、どこから湧き溢れ、生まれるのだろうか?

自身の手のひらに絵具をとり、まるで子供の頭を撫でるかのように、ダンボール、あるいはキャンバスに絵を描き出していくロッカクアヤコ。ファンタジックな空間に、ある意味溶け込んでいるようでいながら、そこから抜け出せず、もがいているように生きる女の子たちの力強い眼差しが、ヒリヒリと生々しく迫ってくるのが、これまでの彼女の作品の特徴だ。現在、日本で開催中の「OBSCURA」では、透明のアクリル樹脂に、彼女が描く世界観が閉じ込められた立体物が展示されている。新たにチャレンジした立体作品は、どのようなコンセプトのもとに描かれ、創り出されているのだろうか? 幼い頃からこれまでの活動とともに、今回の作品について語ってもらった。

Untitled2017acryl on canvas_91x116.7cm

Untitled2002Acrylic on cardboard_80x55cm

Untitled2002Acrylic on cardboard_80x55cm

路上で描きながら、GEISAIに参加したんですよね?

2003年、21歳で、GEISAIの4回目に参加しました。GEISAIも、アマチュアであろうと、お金を払えばオリジナルを出品できます。審査も特にありませんから。

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初参加は、同じノリでした。でも、実はデザインフェスタとGEISAIは、コンセプトが明確に違います。デザインフェスタは、好きなことを好きなように、GEISAIは、美術界の登竜門。美術について何も勉強していなかったので、違いもわかっていませんでした。どちらも誰でも出展できますが、GEISAIには審査員がいて、賞もあります。

次のGEISAIに出展するまでの期間、生活はどうしたんですか?

Untitled2004Acrylic on cardboard_100x80cm

そんな中、再びGEISAIに出展しますよね? どういう心境の変化があったんですか?

それも行き当たりばったりです。日本では、ギャラリーで展示するのに、貸画廊、というシステムがあります。作家がお金を払って場所を借り、絵を売るまで、全て自分でやります。でも、海外の話を聞くと、ギャラリストが展示会を企画して、お互いがリスクを持つようなシステムでした。絶対そっちの方がいい、と直観しまして、本場、ニューヨークに行ったんです。ブルックリンの黒人街でみた、バスキア(Jean-Michel Basquiat)の大回顧展が、特に印象的でした。観たこともないような大きな絵を、黒人のお客さんが鑑賞して、考えているのを目にして、アートは奥深い、と思いました。ただ観てもらうだけではなく、社会的な背景まで感じさせたり、怒りや悲しみを共有する手段になったり、ダイナミックなことができる気がしたんです。それから、MOMAで観たジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)も印象的でした。抽象表現ですが、サイ・トゥオンブリー(Cy Twombly)みたいな「バッ~」とした作品も、エネルギッシュでダイナミックでスタイリッシュで素晴らしかったです。ちょうどそのタイミングで知り合いの日本人が現地で展示をしていたので、足を運びましたが、私の展示ができるところまでは進みませんでした。ただ、すごい影響を受けて帰国しました。そこで初めて、GEISAIがニューヨークで経験した美術の世界への登竜門なんだ、と気づいたんです。だから、違う気持ちでトライしました。

その前は即興で、その場限りで、観てくれたギャラリーだけに何か残せればそれでいい、と思っていましたが、GEISAIでちゃんとチャンスを掴んで、自分の作品を作家として観せたい、と考えるようになりました。

GEISAIに出すときの観せ方が変わる、ということですか? 大きくして観せたり。

Untitled2005Acrylic on cardboard_80x55cm

9回目のGEISAIに出展した後、絵で生活できるようになるのですか?

Untitled2017Acrylic on canvas_162x162cm

Untitled / 2017 / Acrylic / 40x60x12cm Photo By Kenji Takahashi

では、ここからは今回の作品「OBSCURA」について教えてください。

ダンボールからキャンバスに移行して、アニメーションも使ったので、さらに新しい技法がないか探していました。しかも、ずっと、立体物に挑戦したかったんです。ただ、3Dで、女の子をそのまま人形にする、というのも形だけだし別に意味がないな、というタイミングで、ちょうどお話をいただきました。

Untitled / 2017 / Acrylic / 25x25x7.5cm Photo By Kenji Takahashi

「OBSCURA」というタイトルですが、パックされた中で浮かび上がる〈像〉、そんなイメージで創りました。キャンバスであれば完成形を決めずに塗り重ねますから、現在であり未来であり外側であり、といったところです。でも、この作品は、想い出、子供の頃の夢、ファンタジーなどが混じり合った過去があり、今が中心なんですけど、そこから未来が映し出されるようなイメージで創りました。

Photo By Kenji Takahashi

Untitled / 2017 / Acrylic / 13x15x4.2cm Photo By Kenji Takahashi

1982年千葉県出身。2006年村上隆が主催するGEISAIでスカウト賞を受賞したことをきっかけに、日本やヨーロッパで活躍する画家。主な展示にはオランダ・ロッテルダムのクンストハル美術館、スロバキアのダヌビアナ美術館で大規模な個展を開催しする。今回紹介した立体作品「OBSCURA」の展示を、原宿にあるGALLERY TARGETにて、2017年5月18日から6月8日までの、12:00 から19:00まで(日祝日休廊)開催している。

Special Thanks:三菱ケミカル株式会社 / 株式会社シンシ / 株式会社アディクタム
「アクリル立体絵画」patent pending