Juergen Teller(ユルゲン・テラー) が語るサッカーへの情熱

FYI.

This story is over 5 years old.

Juergen Teller(ユルゲン・テラー) が語るサッカーへの情熱

「私は常に世界中を旅しているので、普段、家族に費やす時間や生まれ育ったドイツで過ごす時間が、あまりありません。だからこそ、ドイツがFIFAワールドカップの決勝に進出した際の状況を、カメラに収めておくのは、私にとって非常に重要な行為でした」

Above photo by Grey Hutton. All other photos by Juergen Teller

セレブのイメージ、マーク・ジェイコブズ(Marc Jacobs)の巨大なショッピングバッグで度々話題になるユルゲン・テラー(Juergen Teller) 。一方でサッカーにも並々ならぬ思い入れがあるようだ。彼が2015年にリリースした写真集では、ブラジルで開催されたFIFAワールドカップでドイツが優勝した2014年の夏、酒やソーセージとともに楽しむ自らと、家族や生徒の様子を綴っている。

一言でいうと、彼の新著『Siegerflieger』は、家族、写真、サッカーに対するテラーの愛に溢れている。しかし、少し感情移入しながらこれらの写真を見ると、一連の写真は基本的に、父と子の絆、それも単なる血を分けた親子というだけでなく、試合への情熱を通じて生まれた絆への喜びで満ちている。ベルリンで行われた写真集発売を記念したオープニングで、テラーに尋ねてみた。

新たな写真集について、少しお話しいただけますか?

Advertisement

この本は、私が興奮に満ちたエネルギッシュな状態で過ごした2014年を、いろいろな側面から切り取って編集したものです。クレージーでカオスに満ちているけど、とても楽しい本。私自身の2014年の出来事やドイツについて綴った、すごくプライベートな本になっています。

私は常に世界中を旅しているので、普段、家族に費やす時間や生まれ育ったドイツで過ごす時間が、あまりありません。だからこそ、ドイツがFIFAワールドカップの決勝に進出した際の状況を、カメラに収めておくのは、私にとって非常に重要な行為でした。当時、私はニュルンベルク美術アカデミーで教鞭をとり始めたところで、18人の学生とともに写真の研究をしており、私の人生における大きな転機を迎えていました。私が彼らに与えるだけでなく、彼らから与えられるものの大きさは、本当に驚くばかりです。学校で教鞭をとる前日は、母の住む家に泊まり、朝、母に学校まで車で送ってもらっています。

それはいいですね!迎えも頼んでいるんですか?

帰りはタクシーです。私にとって、教職に携わるのは、今が最もベストなタイミングだと感じています。8年前だったら、準備が整ってなかっただろうし、10年後だったら、ちょっと年をとりすぎているかもしれない。だから今がチャンスだと思い、教職につける場所を探し始めました。それから、これは私にとっては新たな試みですが、デジタルカメラも使い始めました。

デジタルカメラを使ってみて、どのような利点を感じましたか?

カメラの電池やフィルムの本数を心配しなくて済むので、なんとなく、少し自由な気がします。費用がかからないので、まずはいろいろ試せる。叔父さんの80歳の誕生日パーティーで、ただ好きなように撮影したり。フィルムで撮るとしたら、もっといろいろ考えてから撮ったはずです。

当初、デジタルカメラを使うのをためらったのはなぜですか?

私はわりと、いつも同じようなやり方で撮影するのが好きなんです。アナログ・カメラの見た目も好きだったし、できた写真の仕上がりも好きだった。私の表現方法と合っていたので、あまり変える必要がなかったんです。ただ、プリントに適した満足いく印画紙が製造中止になって、手に入らなくなって、表現方法をデジタルへと変えざるをえなくなりました。フィルムの製造生産数が減少して、同じフィルムを買うのが難しいときがあったり、印画紙が使い物にならないほど薄くなってしまったり、フィルムで撮影するのが馬鹿げてるように感じました。

私は、あなたたちがみんなで試合を観ている写真が好きです。写真だけでは引き出せないような感情も、サッカーを通せば引き出せるんですね。

あれは本当に良いですね!すごく開放的でもあります。人生には苦労も多いし、向き合いたくない問題もたくさんある。でも素晴らしい。あの瞬間、世界で起こるすべてを忘れて、ただただ、試合に夢中になっているけど、試合の結果は自分ではどうにもできない。選手たちがボールを追いかけているのを観ているだけで、すごく気持ち良いんです。

息子さんと一緒にサッカーを観ると、一味違ったものになったのでは?

全くその通りです。試合を観ていると、息子とのあいだに、信じられないぐらい大きな絆が生まれました。恥ずかしいけど、本当に信じられないほど、心にグッとくるものがありました。とても素晴らしい絆です。ワールドカップに勝ったときは、本当に天にも昇る心地で、このクレージーさを写真に残したい、と思いました。それで、デジタルカメラに手を伸ばしました。

Advertisement

これらの写真にはご自身がたくさん写っているようですが、写真は誰が撮ったのですか?

アシスタントのカレンです。構成や一般的なアイデアを伝えて、あとは彼女に任せました。これら全てをフィルムで撮影したら、ものすごく費用がかかったでしょう。彼女はただ、撮って撮って撮りまくって、後で私が編集をしました。この方法がこのシリーズにとって最善の方法でした。

個人的なプロジェクトで忙しそうですね?

そうですね。でも、何か歯車があえば急速に進むし、そうでないときは、ゆっくり考えて構成する必要があるので、その時々です。同時に複数のプロジェクトに関わってるので、ある雑誌のエディトリアルをやって、一方で写真集のプロジェクトに関わって、それから香港の展覧会があって…と、いつもこんな感じです。

初めてタトゥーを入れたと聞いたのですが?

今までは、タトゥーを入れる人の気持ちが、ほとんどわかりませんでした。なぜ自分の体を傷つけるのか、と不思議でした。他人がタトゥーを入れるのは別に構わないけど、自分自身では、これまで入れようとは思いませんでした。でも今年の夏の休暇に、息子がヘナのタトゥーをひとつ入れたんで、じゃあ、私もと、この4つの星を腕に入れてみたら、すごく気にいった。自分が、男らしく強くなったように感じました。ロンドンに戻ったら、本物のタトゥーを入れようと予定していたのですが、実際のところ、まだ決心がついていません。