初めての個展について聞かせてください。

2013年2月で、そのときはマキエマキではなく本名でやりました。内容は家にあるものをマクロレンズでテキトーに撮りました。写真やってる人って森山大道さんが好きな人多いじゃないですか。真似して首からカメラぶら下げて、そのへんをパシパシ撮ってモノクロで。私、あ〜ゆうのが大ッ嫌いなんです。

森山大道の〈もどき〉のような写真撮ってる人をよく見かけます。

やたら多い。死ね!って思います。アハハハ。とにかく嫌いなんですよ。それ以外だと、女のコに声かけてお洒落ヌード撮ったり。あ〜ゆうのも嫌いで。

90年代にはコニカのビッグミニのブームがありましたよね。荒木経惟やHIROMIXに憧れた若い人たちのあいだで。

そんなの買うんだったら服買ったり化粧品買ったりしたほうがいいと思ってました。みんな好きでしたよね。自分のカノジョを部屋で一生懸命撮ってさ。何が楽しくてそんなことやってんだとか思うんですよ。

畳のうえで裸を撮ったり。

そうそうそう。あえてオッパイやアソコ撮ったり。そんなくだらねえことやってどうすんだ。そんなんだったら、もっとセックスで悦ばせてやれよ、ぜったい女の頭のなかは萎えてるぞ、と思いますよ。

嫌いな写真の話をしてるとき、実に生き生きしてますね(笑)。

いわゆる写真好きの奴らがやりそうなことってすべて嫌いなんですよ。アハハ、実は写真好きじゃないんですよ、私。写真をメシの種としか考えてなくて(笑)。
話を戻すと、入谷にラッキードラゴンえんというカフェバーがあって、壁を展示の場所として提供しているんですけど、その店に通ってる知り合いから、予定されていた展示ができなくなったからスケジュールを埋めてくれないかと声をかけられたんです。「写真撮れるからさ、なんでもいいから出せばいいじゃん」と。なんでもいいと言ったな、ヨシ!って、思いっきりクソなもの出してやるぞと決めて。写真好きな奴らが撮る写真へのアンチで行こう。とにかくマクロで撮りゃ、きれいに見えんだろうと、洗濯物、腐りかけのみかん、枯れかけの花、使いかけのクリームの中身なんかを2時間ぐらいで撮って画像処理もそこそこに。タイトルは「UN JOUR PAS SPECIAL」。特別じゃない一日という意味のフランス語です。

まさかそんな気持ちで撮られた作品だと、観た人は思いもしないでしょう。

ちょっと写真をかじった人は何か深い意味が込められていると思うのか、いろいろ聞いてくるんですよ。「何やっていいかわからないから、とりあえずマクロで撮りました」と答えると、かえって哲学的なものを感じるらしくて、コイツ、ただもんじゃねえ! みたいな顔をされるんです。ただの写真屋なのに。

キビしいですねえ。だけど、その後もちゃんと写真展を続けている。

翌年のラッキードラゴンえんでの展示はなんとなくテーマをつくったんです。もう少しまともにやろうかなと。女の一生をイメージして、薔薇のつぼみから枯れて落ちたところまでのどアップを並べて、タイトルは小野小町の歌から「ながめせしまに」。
そして2015年1月、「Love to Eros」というグループ展(クリエイションギャラリー日本橋箱崎)にリカちゃん人形をちょっとエロチックに撮った写真を出しました。それは去年まで3回続いた大きな展示で、世界的な緊縛師のHajime Kinokoさんや『花と蛇』の緊縛を担当された有末剛さん、あとは常盤響さんとか、そういう方たちも出展されると聞いたので、さすがにマクロで洗濯物撮るわけにもいかないなと思って。愛とエロスがテーマなので、ほとんどの人が女性のヌードを出展するんですよ。私はまともに女性のヌードを撮ったことなかったので、埋没しないためには何か違うものやらなきゃいけないなと思って、それでリカちゃん人形を。「Love to Eros」に参加させていただいたのが、私の分岐点になりました。エロチックな表現をやりたいとずっと思っていたけどアウトプットのやり方がわからずにくすぶっていて、そこでやっと見えてきた。

©マキエマキ

それまではエロチックな表現のアウトプット先を写真とは考えていなかった?

考えてないです。写真はメシの種。あるとすれば、ロバート・メイプルソープの花の写真みたいなことはやってみてもいいかなとは思ってました。好きではないけど、みんながカッコいいって言うから(笑)。

エロチックな表現をやりたいと思いはじめたのはいつごろですか?

それは、中学生ぐらいからありました。漠然とですけど、そういう小説を書ければいいなと思っていました。

官能や耽美を感じさせる本を中学生で読んでたんですか?

はい。筒井康隆、ユングやフロイト。あと好きだったのはアポリネールの詩集。それから古典文学ですね。源氏物語や万葉集。そのあたりに物凄いエロを感じていました。

当時、そういう感覚を共有できる友達はいましたか?

いました。エッチなこと言いながらゲラゲラ笑い合った女子が。彼女とはいまでも付き合っていて、唯一の友人だと思っています。

そのお友達は、いまのマキエマキとしての活動は知ってるんですか?

はい。必ず観に来てくれます。

リカちゃん人形から自撮りに至る流れはどうなってるんですか?

「Love to Eros」の翌月にリカちゃん人形のシリーズの写真を増やしてラッキードラゴンえんで「Jeux Erotiqus」というタイトルで展示しました。フランス語で、〈楽しいエッチ〉くらいの意味で捉えています。しばらくリカちゃん人形でやっていこうかなと思っていたんですけど、次の月に自撮りを始めたんですよ。

2015年1月と2月にリカちゃん人形の写真を展示、3月に自撮りを開始。その間に何か閃きがあったんでしょうか。

それがラッキードラゴンえんの「セーラー服ナイト」なんですよ。なんてことはない、みんなでセーラー服着て酒飲もうってだけのイベントなんですよ。参加するためにAmazonでセーラー服を買って、試着して自撮りをして、Facebookにあげたら反響があったんです。

どんな反響でしたか?

「脚がきれい」「モデルの写真撮ったんですか?」とか。当時49歳、もうババアですからヴィジュアルに全然自信がないところにいきなり褒められて、私、イケてる(笑)と思っちゃったんですよ。

Facebookにコメントくれたのは知ってる人ですか?

本名のアカウントだったのでみんな知人です。ほとんどが仕事関係で、あとはラッキードラゴンえんで会う人とか。仕事関係の人からは「どうしちゃったの?」とビックリされました。「仕事ふりにくくなるから、あんまりあ〜いうのあげないほうがいいよ」と言われたり。実際なくなった仕事、いくつかありました。

でも、褒められて楽しくなった。

そうですね。エロで何かやりたくても、モデルと交渉しないといけなかったり、いろいろあるんで面倒くさいなと思ってたんですよ。自撮りだったら文句言われないでエロやり放題だなと思って始めたんです。

Facebookが嫌いだとTwitterに書いてましたよね。わりと最近。

そうです。展示をするようになってから情報を流すためにマキエマキでFacebookのアカウントをつくったんですけど、そこに来るメッセージが凄いんです。「ヤりたいです」とか、そういうのがダーッと。相手のアカウントは実名登録なので人格が見えちゃうんですよ。真面目そうにしている人がこんなメッセージ送ってくるのか、なんて考え込んでしまう。病みますよ。Twitterのリプのほうが、まだ軽く受けられるんです。Twitterが電車でお尻触られるぐらいだとすると、Facebookは仕事で直接知ってる人からいきなりおっぱい摑まれるみたいな、そんなイメージです。だから自撮りを始めてから若いころの男性恐怖症が復活してきちゃって。もう3年目ぐらいになるので慣れましたけど。いや〜、ほんと男の人ってしょうがないなって思います。

自撮りを始めるまでの期間、男性恐怖症が治まっていたのはどうしてですか?

それまでずっとあったのが、いまの夫に会ってようやく解消されたんです。

旦那さんとは、いつ出会ったんですか?

2001年です。私が35歳で、夫は私より10歳下の25でした。

仕事がきっかけで?

はい。空手の専門誌がありまして。彼はそこの社内デザイナーだったんです。

魅かれあうものがあったんですか?

初めてあったときに何か感じたんですよ。たぶん、向こうもそうだったと思います。なんといってもルックスが私の好みド真ん中だったんです。

どういう顔が好みなんですか?

メガネ男子(笑)。あまり男性的な雰囲気が表に出てないのが。

2004年8月、マキエマキさんのご主人が初めて撮影したマキエさんのスナップ