1 なぜ日本人は未だにCDを買い続けるのか

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海外で暮らしていると、日本にいるときと比べてCDというフォーマットの衰退を肌で感じることができる。日本でも「CDの売り上げが落ちている」と聞くこともあるが、海外とは比べ物にならないというのが正直なところだ。

そんな「CDの衰退」を象徴する出来事が今年1月ロンドン中心部で起こった。HMVオクスフォード・サーカス店の閉店だ。オクスフォード・サーカスという場所は、東京で言うところの渋谷や新宿にあたるような場所で、常に若者や観光客で賑わっているようなエリア。そのど真ん中に店を構えていたHMVが突然閉店することになった。閉店のニュースに加え、さらに残念に感じたことは、閉店に対する周囲の反応や店舗に漂う空気感であった。

「HMVの閉店」と聞けば、2010年のHMV渋谷店の閉店と比べたくなってしまうのだが、渋谷店の閉店は当時音楽ファンの間で大きな話題になった。閉店最終日には、夜遅くまで無料ライブが行われ、閉店を惜しむファンたちやアーティストが多く詰めかけた。それに比べるとオクスフォード・サーカス店の閉店は淡々としたものだった。大々的に閉店セールを掲げていたものの、渋谷店のような熱量を感じられず、どこか「仕方ない」というような空気さえ感じ取れた。その状況を単純に「CDというフォーマットに対する思い入れの差」と決めつけるのは早急かもしれないが、少なくともCDショップに対する思いの差があることは明らかだ。

というわけで今回、異常にCDに思い入れが強い日本人に対して、海外の音楽ファンがどう思っているのかを海外目線で紹介していきたい。「未だにCDが売れている国」と称される日本の特殊な音楽市場に、これからの世界の音楽産業を考える上で重要なヒントが転がっているのかもしれない。

2 なぜ日本人は未だにCDを買い続けるのか

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未だに多くの音楽ファンがCDに夢中になっている日本

Luke Morgan Britton(VICE UK)

日本という国は「未来の象徴」である。SF映画「ブレードランナー」(※1)で描かれた未来都市のような街並が広がっており、常に他の国より一歩先を行くような最先端の電子機器で溢れ返っている。中でも奇妙なのは、ポップミュージックの進化だ。アニメの世界から飛び出てきたような「きゃりーぱみゅぱみゅ」というキャラクターがチャート上位に
上ることは、他の国では考えられない。

全てにおいて世界の最先端を走っているような日本という国について、一つだけ府に落ちない点がある。それは未だに多くの音楽ファンがCDに夢中になっているということだ。最近のイギリスの若者にとってCDは、音楽を聴いたり保存したりするツールとしては時代遅れだと思われている。今や見かけることが少なくなった計算機やMDと同じ扱いだ。

CDに関する驚くべきデータを紹介したい。「アメリカ57.2%、イギリス64%、日本85%」これは国内のアルバム販売におけるCDの割合である。アメリカでは2006年に全店舗を閉店したタワーレコードが、日本では未だに国内に85店舗を構える人気CDショップなのである。さらに奇妙なことに、日本では2009年に10億円規模あったデジタル配信市場が、昨年4億円程度にまで落ち込んだのだ。しかも日本にはまだSpotify(※2)、Deezer(※3)、Rdio(※4)といったサービスがローンチされていないのにも関わらずだ。

最近ニューヨークタイムズが社説の中で、「様々な市場環境の中で、音楽産業が大きな変化を強いられる中、日本人特有のコレクター癖がこのような状況を生んでいる」と語っていた。そこで今回はそのような「日本人の特殊性」をひも解くため、東京のインディペント・レーベル「タグボート・レコーズ」(※5)の小山田浩氏に話を伺った。

3 なぜ日本人は未だにCDを買い続けるのか

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時間がかかるものや我慢が必要なものに愛着が湧くことだってある

なぜ日本人はこんなにもCDが好きなのですか?

理由の一つとして挙げられるのは、未だに多くの音源がデジタルで配信されていないということです。また日本人は目に見えるもの、手で触れられるものを好みます。例えば日本人は形ある通貨を好むので、他の国に比べてクレジットカードの普及率が低いということを聞いたことがあります。さらに日本には「ジャケ買い」という文化があるのですが、それはつまりCD、レコード、本などを購入する際にカバーアートやデザインの善し悪しで判断するというものです。

なぜデジタル配信の売り上げが下がっていると思いますか?Spotifyのようなメジャーなストリーミングサービスはほとんど存在していないのですか?

その理由はデジタルで音楽を聴くリスナーの傾向によるものだと思います。彼らはYoutube、それからSoundCloud(※6)、そしてオンラインの音楽ストアという流れを辿ります。おそらく彼らは手前のサービスで満足してしまっていて、オンラインの音楽ストアで音源を購入するというところまで辿り着かないのだと思います。またストリーミングに関しては、徐々に普及してきていると感じています。

日本では違法ダウンロードは多いのでしょうか?

違法ダウンロードする人もいますが、あまり一般的ではないし、文化と呼べるところには至ってないと思います。あくまで希望的観測ですが。

欧米ではフィジカルなアイテムの中で唯一レコードが息を吹き返していると言われているのですが、日本の状況はどうですか?

イギリスやアメリカほどではないにせよ、レコードを置く店舗が増えているので、レコード復活の兆しは感じています。我々のレーベルはレコードを取り扱っていないのですが。

CDとデジタルの売り上げの割合はどれくらいですか?

大体CDが80%、デジタルが20%という割合です。

フィジカルなもの、特に日本人のCDへの愛着についてどうお考えですか?イギリスではCDは時代遅れ感があるので、そういったCDへの愛着とテクノロジーは矛盾するようにも思えるのですが。

それに関して矛盾はないと思っています。人間は便利なものや技術的に進んだものを好みます。ただときには時間がかかるものや我慢が必要なものに愛着が湧くことだってあると思いませんか?

確かにそうですね。本日はありがとうございました。

Inteview by Luke Morgan Britton(VICE UK)
Translated & Text by Shotaro Tsuda