シアワセになれないと思ってない?ローラのトランスジェンダー相談室 Pt.3:sirなのか、ma'amなのか (1eye)

ようこそ、ローラの相談室「シアワセになれないと思ってない?」へ。連載第三回目です。今回はトランスジェンダー告白後の呼ばれ方について。細かいことのようですが、とってもとっても大事なことですね。なんたって生活そのものに大きな影響があるのですから。

ローラ・ジェイン・グレイス:フロリダ出身の人気パンク・バンド、AGAINST ME!のフロント・ウーマン。2012年にトランスジェンダーを告白し、その後は女性として日々を送っている。AGAINST ME!での活動はもちろん、彼女を追ったドキュメント・シリーズ「True Trans」も公開された。

第一回:性を変えようとしている親たちに

第二回:タトゥーの先にあるもの

 

 

こんにちは、ローラさん

少し前にトランスジェンダーを告白しましたが、誰も私を新しい名前や敬称で呼んでくれません。どうしたら呼んでくれるでしょうか?

 

銀行の窓口で行員は「いらっしゃいませ、何か…」と声をかけてきますが、私は最後まで言わせません。大きい声は出しません。声のトーンを変えて、可能な限り親しみやすい穏やかなトーンでこう言います…。

「こんにちは、ご機嫌いかがですか? 新しいデビットカードが欲しいんです。前のカードが盗まれてしまったので…これが私のIDです。こっちが正式な名前。でもローラって呼ばれてます。敬称はいりませんよ。」

そして「トーマス」と表記され、性別は男性の免許証を渡して微笑みます。彼らは免許証をじっくり見つめます。免許証に何と書いてあろうと気にしません。まずは私の伝えたいことに敬意を払って欲しいんです。

次のステップで彼らを圧倒したいので、わざと乱暴に早口で話します。相手を惹き付けたいんです。私の名前にフォーカスするのは、服装にフォーカスするのと同じでしょ。少しずつ彼らは理解しはじめます。そして、彼らの思考経路に私も参入します。それにはちょっとだけ忍耐が必要ですが、大丈夫。目的は、彼らに笑ってもらい、その笑いを共有することですから。

 

去年は地球を3往復しました。どの空港職員も私に対して「Sir」を使って来ました。チェックイン、セキュリティ、入国審査、飛行機の乗り降り、そしてタクシーを捕まえる時、ホテルへのチェックイン、チェックアウト、クラブの警備員、バーテンダー、ウェイトレス、酔っ払った男たち…。更に私は女性と見られる前に「俳優のマーク・ウォールバーグに似てるね」と言われ続けました。そんなとき、この忌々しいルックスを呪いました。

タバコが無かったら…忍耐力には自信がありません。私にも限界があります。ときには感情に流されて、何かに当たり散らしたり、悪態をついたり、物を壊したりすることもあります。何に対しても反応する気力が湧かない日もあります。そんなときは、ただただ涙を流します。負けたような気分になりますが、無感覚になるのも悪くないものです。

 

少し前、アップルビーだったか、そんな感じのお店で食事をしたのですが、そのお店のウェイトレスは、誰に対しても、男性や女性を表す代名詞を一切使わないことに気がつきました。驚いたので、他の客がいなくなったのを見計らって、彼女を呼び、チップを追加して感謝の気持ちを伝えました。彼女の努力を讃え、そして、気づいていたのかどうかを尋ねました。彼女は「いえ、自分はいつもそうしていますから」と言いました。そんなこともあるんですよ。

 

ああ、それにしてもsirとかma’amとか。クソったれ。

 

こんなこともありました。どうでもいいことなんですが、例えば、とあるラジオに出演したときのこと。「dude」とか「bro」とかを使うのにすごく慣れているDJがいるのですが、私に対して突然そのような言葉を使っても平気なのか、と意識してしまったようで。「dude… man… bro… man… dude… man… bro… man」なんて繰り返し、言葉に詰まってしまったのです。

彼の額に汗が浮かんで来ます。私は彼の背中を親しげにタッチし、中断された会話を再開させましたっけ。

 

こんなことまでありました。一年ほど前、古くからの友人と、オーランドでショーを見ました。性転換を公にしてからは会っていない人たちでした。楽屋で飲み、それから、バーに行きました。友達の一人はへべれけになり、鼻水や唾でぐちゃぐちゃになって、ずっと愚痴を言っていました。

彼が車で家に帰ろうとしていたので、それはまずいと思って、車の鍵を隠しました。それまでは礼儀正しく、私を「ローラ」と呼び、女性として扱ってくれていたのですが、鍵を隠したこと知るや否や、怒りに任せて、「トム!!」と叫んだんです。その瞬間に知りました。誰が自分の人生において誰が大事な人で、誰がそうでないのか。それを判定するリトマス紙を私は持っていたんです。

 

私はみんなに新しい名前を知ってもらいたい、ニックネームを使って欲しい、なんてことは期待していません。尋ねられることも気にしません。特に最初は失敗するものです。それがその人にとっての調整期間。彼らが気を使っていないワケではないのです。

みなさんも、私も、一生懸命に対応してくれようとしている人と、私たちがどう感じるか全く気にかけない人との違いはわかるはず。どう呼んで欲しいか相手に伝えたら、それを尊重してもらいたいけれど、そうならなければ、もういいのではないでしょうか。

みんなが私をどう扱うか気になりますが、他人の評価で自らのアイデンティティを形成したくはありません。自らの人となりを認めてくれない他人がいれば、みなさんの人生からその人を切り離し、前に進むことをお勧めします。

 

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