text by Soushi Matsukura
Libertin DUNE

80年代後期に端を発するこの国のグラフィティ・シーンは、今や狂い咲きの只中にある。街中を見渡してみたとき、視界に一切の痕跡を認めないのは難しい。それが脳裏にしっかりと残っているかどうかは別として、両手では足りない数と、一日にして確実に貴方はすれ違っている。溢れかえる思惑。5年後にはいやでも大人しく、綺麗に装わなければならないことを、街も寂しく思っているのだろうか。まだまだ遊び足りない東洋の大都市は、ある一定の周波数で、ここぞとばかりに声を荒らげている。

1975年にフランスはパリ、レ・アール地区にあった古い肉屋の店舗を改造したブティックから始まったagnès b。ブランドの創始者でありデザイナーも務めるアニエス・トゥルブレ(=アニエス・べー)は、若き日に美術館のキュレーターとしての夢を抱いていた。何よりもまず、見つめること。過度な装飾を排したagnès bのデザインに落とし込まれているのは、そんな彼女の美に対する姿勢に他ならない。世界各国に店舗を展開し、広く人々に認知された今でも、そこには変わることのない姿勢が貫かれている。精力的な慈善活動への参加、作品への衣装提供や全面的に監督をバックアップすることにとどまらず、自身がメガホンを取って製作も行ったことのある映画事業など、自らの真意に基づいたアニエスの視線は様々なレベルへ、数多の事象へと遍く及ぶ。

その最たるケースが、グラフィティとの関わりである。今日ではアートとして認識され、数多のアパレルやデザインに用いられるグラフィティ。しかしながら資本主義やコマーシャリズムとは対極に位置するそれは、元来その性質から上流文化とは相容れず、ファッションとは距離をとる存在であった。アニエスがその表面的なカテゴライズを積極的に無視したのは、双方に通ずる精神性、“本当にいいものを追求する”という行動原理に惹かれてのことだろう。グラフィティの夜明けを告げたNYストリートアートのシンボル、キース・ヘリングやジャン=ミッシェル・バスキアと親交を深めたことは、以降のファッションとグラフィティの密接な関係性を育む契機の一つとなった。その後も、パリにあるギャラリーでグラフィティを扱った展示を行ったり、グラフィティの写真を転写プリントしたアイテムを発表したりと、常にその意識を保ってきた先駆者。この度その高感度のアンテナに、静かに猛る日本のシーンがキャッチされた。

アニエスベー青山店にて5月20日(水)から6月28日(日)の一ヶ月以上に渡って開催される『“PRINCIPALITIES”』展には、日本のグラフィティ・シーンを語るに欠かすことの出来ない御両人、FA.IRAKとMOZYSKEYが参加する。ここでは細かな説明は抜きにして、ひとまず実際に足を運んで直に目撃することを強くおすすめしておこう。街と、道と、シーンと、そしてagnès bの心意気と現在進行形で彼らが生み出す化学反応を、会場では体感することが出来るはずだ。

本展示は “On aime le graff!!”(グラフィティが好き!!)と題し、グラフィティをテーマにしたアイテムを発売するプロモーションの一環として開催される。本展示の他にも、グラフィティアーティストMANBOによるライブペインティング、伊勢丹新宿店本館でポップアップショップ、347CAFÉ&LOUNGEでの展示と、色々な角度からagnès bとグラフィティとの関わりを見つめることができる。雨が続く日々は足取りも重くなりがちではあるが、そこは一興、靴を濡らして各企画を巡るツアーを組んでみるのもいいのでは?きっと陰鬱な気分を晴らしてくれる出会いが、そこにはある。

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“PRINCIPALITIES”

期間:
2015年5月20日(水)~6月28日(日)

会場:
アニエスベー青山店

〒107-0062
東京都港区南青山5-7-25 ラ・フルール南青山

電話番号:
03-3797-6830

営業時間:
11:00~20:00

*当ページにピンときた皆様にオススメ。期間中会場で販売しています。(STAFF)

%22On aime le graff !!%22 グラフィティが好き!! agnès b の心意気_01


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No.9