2017年12月にリリースされたNIRVANAのTシャツブック『HELLOH?』。制作の中心となったのは、NIRVANA関連のTシャツを100枚以上所有する、門畑明男。前回は、NIRVANAを好きになり、カート・コバーンのコスプレをするようになった経緯が明らかになったので、今回は、NIRVANAのTシャツを収集するようになったきっかけを中心に話を聞く。

また、現在、20万円のTシャツがあるらしいのだが、その値段を提案した、本の発行者でもある〈ラボラトリー/ベルベルジン®︎
(LABORATORY/BERBERJIN®︎)〉〈オフショア(offshore)〉の的場良平の言葉とともに、皆さんにお届けしたい。

『HELLOH?』より

前回はNIRVANAが好きになり、カート・コバーンの見た目に惚れ、コスプレをするようになったところまで、お伺いしましたが、Tシャツを集めだしたきっかけを教えてください。

はじめは、集める意識は全くなくて、2000年くらい、20歳前後だったはずですが、原宿のとんちゃん通りにあったVOICEって古着屋にふらっと入ったら、NIRVANAのTシャツがあったので買ってみました。確か2980円でした。当時は5000円でも高いっていわれてました。

最初は、Tシャツ自体には、ハマってなかったんですね?

そうですね。なんか、古着屋さんで違うNIRVANAのTシャツを見つけるたびに、一応買っておく程度で。「一応、買っておくか」が積もり積もった感じです。

それで100枚ですか(笑)?

前は、これ持ってないから一応買っておこう、といった気持ちで買っていたんですけど、途中で「買わなきゃ」みたいな義務感になったときもありました。僕がたくさん持ってるのを知っている人からは勧められましたしね。ただ、知人に「NIRVANAのTシャツのコレクターでしょ」って言われたことがきっかけで、全然意識してなかったんですけど、「あれ、俺ってそうなの?」となり、より買わなきゃ、という意識が強くなりました(笑)。

意識して集めだすのは、いつからですか。

20代半ばくらいなので、2007、2008年ですかね。その頃は、もう60から70枚は持ってました。当時は安かったので、たくさん買えたんです。

どういう基準で買っていたんですか?例えば、オフィシャルのみとか?

当時は、NIRVANAの新品のレプリカはありませんでした。THE ROLLING STONES、GRATEFUL DEAD、PINK FLOYDは、いっぱいありましたが、NIRVANAには、新品でレプリカをつくるほどの価値がなかったんです。要するに、2980円のTシャツのレプリカをつくっても、しょうがないじゃないですか? だから、今みたいにレプリカかどうか、疑うことはなかったです。Tシャツの袖や裾のステッチが、シングルかダブルかだけは、気にしていましたけどね。

また、90年代半ばくらいまでのTシャツであれば、ブートかオフィシャルかは、全く気にしませんでした。90年代後半になると、一般的には、Tシャツのボディがダブルのステッチ、つまり、米国製ではなくなるので、ダブルは買わないようにしていました。あとは、カート・コバーンが実際に着ていたTシャツを探していました。

つまり、NIRVANAがリアルタイムで活動していた時代のTシャツであれば、オフィシャル、ブートを問わず買っていたということですね? そこらへんは、古着好きの感じで集めるんですね?

そうですね。例えばカート・コバーンが愛用していたCONVERSEのジャックパーセルも90年代の前半までで、MADE IN USAじゃなくなるんですよね。中国製とかに切り替わるんです。古着好きからすると、MADE IN USAしか履きたくない、というのと同じ感覚だと思います。

MADE IN USA製のCONVERSE、ジャックパーセル。

ジャックパーセルは、ヒールパッチとインソールに、MADE IN USAと表記が入るか入らないかくらいの違いで、それ以降のモデルと、フォルムや素材など、見た目は全く違いがないですよね? 例えば、フォルムがちょっと細くなってる、丸くなってるとか違いがあるのなら、わかりますが…。

それは、もう、満足感じゃないですかね。プライドの問題ですね。こういう仕事をしてるのもありますね。

その感覚が、NIRVANAのTシャツともリンクしてるんですね。オフィシャルかブートかというよりも、いつの時代につくられたか、MADE IN USAかどうかで、モノの価値が変化するってことですね。

まさに、そうですね。

なるほど。状態はどれくらい気にして買うんですか?

ジーンズと同じく、中途半端に穴があいてるのは嫌ですね。穴があくのか、あかないのかって状態のも買わないです。

他にも、NIRVANAのTシャツの特徴というか、魅力はあるのですか?

カート・コバーンは、画家になりたいくらい絵が好きだったようで、どういう意図でピカソかはわからないですが、Tシャツのデザインに絵画を使用したりしてますね。また、カート・コバーン自らが描いた絵をTシャツにしていたり、シルクスクリーンを刷っている写真が残っていたり、そういうのは特徴かもしれません。

最も想い入れのあるTシャツは?

好きなのは、カート・コバーンがギターを弾いていて、横顔のものです。買ったときは確か5千円くらいだったはずですが、今は、4万くらいしますね。あとは、上のアメコミ風のTシャツですね。なんとなく可愛いですよね。この白ボディのTシャツは、はじめてみて、ソッコーで買いました。

ちなみに、普段は着てるんですか?

着てないですね。

飾ってるんですか?

タンスにしまってます。たまに、何を持ってるかわからなくなります(笑)。

保管方法には、こだわっているんですか?

全然気をつけてないです。基本的には、コットン100%のアイテムなので、虫食いの心配もないので。一応、防虫剤を入れていたかもしれないですが、覚えてないくらい適当な感じで保管しています。

NIRVANAのTシャツ以外では、Tシャツを何枚所有してるんですか?

バンドはNIRVANA以外は持ってなくて、基本的には無地かボーダーで10数枚くらいですかね。

ということは、持っているTシャツは、ほぼNIRVANAなんですね。

でも、着ることも、見返すこともほとんどないですね。買ったら、タンスにしまってそのままですね(笑)。

ちなみに、NIRVANAのTシャツのデザインは好きなんですか?

そういわれると、どうなんだろうな…。

他に持ってるTシャツは無地とボーダーじゃないですか?

そうですね。僕は基本的にプリントTシャツは着ないです。高校のときから着なくなったんですけど、文字が書いてあると、それを誰かに読まれたりするじゃないですか? それが、嫌だったんですよね。だから、無地とかボーダーは、無難中の無難じゃないですか。それもあって無地とかボーダーばかりです。NIRVANAが好きだから、という気持ちが強かったんで、正直デザインはどうでもよかったのかもしれないです。

普段はタンスなんですよね。虚しくてバカみたいだと思ったことはないんですか?

何やってるんだろう、とは思ったりしますね。ただ、ここ4、5年で急に値段が上がったんです。最初は値段が上がるとは、予想してなかったんですよ。その証拠に、自分で着れるようにサイズを直してたんです。直さなければ良かったですよね。しかも、今はXLとかLでもファッション的には〈あり〉ですけど、昔はTシャツだけ異常にデカいとか、そういうスタイルが受け入れられなかったですから。体型とあってるのが良いとされていたので、全部直しちゃったんです。価値が半減です。僕の先見の明がなかったんですけどね(笑)。

値段が高騰し、収集癖も加速するんですか?

一瞬ありましたけど、やっぱ高いなっていう(笑)。今、4万、5万っていうのが当たり前になってしまいましたからね。

値段が上がってからも、変わらず収集してるんですよね?

買ってますね。

止まらなくなってるんですか?

モノによります。買う数はすごく減りましたけどね。年に2、3枚くらいになってるんじゃないですかね。

高くなってから、合計で何枚くらい買ってるんですか?

20枚くらいですかね。でも5万アップは、そうそうないです。マックスで39800円くらいを目処に買っています。

フロントはNIRVANAの1stアルバム『ブリーチ(Bleach)、1989』のジャケ、バックはイタリア文学の古典、ダンテの『神曲』の地獄篇で用いられる地獄図。

ジョン・レノンとオノヨーコの著名な写真のパロディー。『HELLOH?』では、すぐ上のTシャツと見開きで掲載されている。

では、門畑さんが所有しているなかで、最も高価だったTシャツはどれですか?

NIRVANAのTシャツではなくて、カート・コバーンが着ていたものなんです。新品のレプリカしか見たことがありませんでした。90年代のボディで、さらにデッドストックのもので、6万円出しました。僕が値をつけるなら、絶対、10万は超えるので、6万なら安いと思って買ったんですよね。

この上のTシャツも6万円くらいで買いました。はじめてみたときは、6万円で店頭に出ていて、経験で6万だったからやめようと思ったんです。そしたら、しばらくして、また入ってきて、8万円に価格が上がっていたんです。あの時、買っておけば良かったってなりますよね。そしたら、ちょうど別の店で6万円で出たいたんです。これを逃しちゃダメだな、って思って買いました。2000年代の後半だったんですが、今じゃ20万円くらいの値が付いているお店もあります。

えっ、20万円ですか?そんなに高騰してるんですか?

そうですね。このページ(上記2点が掲載されているページ)は、見開き2枚で40万円くらいです。

NIRVANAのTシャツで値段が高くつく、つかないはどうやって決まってるんですか?

基本的にはどのアイテムも、年代は、ほぼ90年代で同じですからね。ここまでくると、見たことないから、というのが大きいですね。あとは、マルチプリントとか、フォトがデカイとか、奇抜なモノですかね。デニムもそうですが、好きじゃないと魅力を見出すのは難しいかもしれません。子供の頃のカート・コバーンの写真がプリントされたTシャツをみて、カート・コバーンの子供の頃の写真だ、すげえ、欲しい、と思うのがカート・コバーン好きな人です。普通の人からしたら、ただの子供が写っているTシャツですからね。7千円くらいなら、それを可愛いと思ってギリギリ買う人もいるでしょうけど、4万、5万しちゃうんで。値段の張る古着全般、見た目と金額を比べちゃうと、難しいですよね。

しかし、何で、そんなに高いんですか?

一緒に本をつくった的場が上げている、といっても過言ではないので(笑)、的場に聞いてもらえると、よりわかりやすいでしょう。

的場さん、何で、そんなに高くなってるんですか?

的場(以下M)NIRVANAに関していうと、近年ではカニエ・ウエスト(Kanye West)やジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)などのセレブリティなアーティストが着用し相場が上がり、日本の市場もそれと同じ現象で、EXILEさんなど影響力が大きい方々が着用して、それを若い子たちは、そんなことは知らないけど、その金額が当たり前だと思って手にとってくれます。ヴィンテージの市場を全然知らずに、ずっとSAINT LAURENT(サン・ローラン)を買って着てた子たちなら、7万円でも抵抗もなく「買います」ってなる。それで成り立って相場が上がっていく。だから、買う人たちも値段を問わないんですよね。

ラボラトリー/ベルベルジン®︎では、急に値段を上げたのですか?

M:ジワリ、ジワリ上げていきました。5千円から1万円になって、2万円になって。

当たり前に売れるから、上がるんですよね?

M:需要と供給があったからこその値段なんで。もちろんいっぱいあるものを、そんなに高く売るつもりはないです。希少なものは希少というか。カッコ良いものはカッコ良いっていう。

アメリカでも同時に値段が上がるんですよね?

M:そうですね。同じタイミングで上がります。今はネットがあるんで、こっちの値段をほとんど知っています。それでシッピングとかを計算して、その上で値段をふっかけてきたりしますからね。また、ほかの店が高い金額を付けているのをみて、その金額をふっかけてきたりとか。

なるほど。ちなみに値段が高騰しているのはNIRVANAだけですか?

M:いやいや、RADIOHEADも、RAGE AGAINST THE MACHINEも、RED HOT CHILI PEPPERSも高いです。

えっ?

M:もうバリバリですよ。

信じられないですね。

M:もちろん、モノによってですけど。それこそ昔は2千円とかですけど、今は3、4万円はあたり前ですね。90年代のアーティストが全体的に高くなってます。いわゆるヴィンテージの概念というのが、ここ3年くらいで完全に崩壊していますよね。

ヒップホップ、例えばWU-TANG CLANも高いんですか?

M:WU-TANG CLANも高いですよ。

PUBLIC ENEMYも?

M:全然します。当時、本当に安く買い漁ってたものが、今だとすごい値段になっています。ここ最近で一番上ってるのがビヨーク(Björk)ですね。

NIRVANAがSonic Youthの前座を務めた際のTシャツ。

SONIC YOUTHは?

M:FUGAZIとかMINOR THREATとかと同じで、それこそ、SEX PISTOLSとか、SEDITIONARIES(セディショナリーズ)の値段が、ちょっと落ち着いたくらいから、高くなってますね。時間をかけて提案していって、値段を上げてきた感じですかね。

昔は、それこそGREATFUL DEADとかの方が高かったですよね?

昔は高かったですけど、今は落ち着いてますよ。高くても2万円とかですね。THE ROLLING STONESもそんなもんですよ。よっぽっどスペシャルでデッドストックだと4万円とかありえますけど。完全に世代交代してますね(笑)。

まじっすか?

THE ROLLING STONESのベロのグラフィックなんて、9800円くらいですよ。

じゃ、いわゆる王道のバンドTは値段が下がってるんですね。

落ちましたね。ロックTブームが落ち着いたんですよね。多分5年くらい前から、ずっと落ち着いてます。今はストリートのファッションのトレンドに合わせちゃってますよね。90年代のスタイルが流行ってるから、90年代のバンドのTシャツが高くなるみたいな。

バンドTシャツ以外で高騰しているTシャツもあるんですか?

Tシャツでいったら、今、スケートボードがいちばん高いと思います。1万円くらいから3万、10万くらいのものまで、同じようにあるんですけど、何枚かしか存在しないというTシャツがあるんですよ。ジム・フィリップス(JIM PHILLIPS)のスクリーミングハンドのTシャツですが、それが50万くらいで売買されたりしています。確か他にもそいうTシャツが2、3枚あります。

80年代以降のユースカルチャーのTシャツが、全体的に高くなってるんですね。

そうですね。Tシャツはそうですね。

ちなみに、働いているフェイクアルファでは、NIRVANAのTシャツは扱ってるんですか?

扱いませんね。

THE ROLLING STONESとGRATEFUL DEADは扱ってますか?

扱ってますね。

もどかしさはありますか?

ほぼ、ないですね。

仕事では扱いたくないですか?

それもありますし、フェイクアルファの色もあるので、90年代のバンドTシャツをフェイクアルファに置くのは雰囲気的に違うかなと。あと系列店で、ラボラトリー/ベルベルジン®︎もあって、それを奪っちゃうのは違うんで。あと、この値段で売る自信がないですね。僕は買ってますけど、お客さんの毛色が違いますからね。ボブ・ディラン(Bob Dylan)のTシャツを39800円で売る自信はありますけど。

なるほど。ちなみにNIRVANAのTシャツコレクターでは門畑さんが世界一ですか?

世界一かどうかはわかりませんが、持ってる量は、かなり上位でしょうね(笑)。1枚1枚にウンチクをつけて説明できるかどうかっていうと、また違う人がいます。この本をつくるうえで、僕が所有しているモノ以外も集めたんですが、名乗り出てくれた人もいれば、本が出ることを全然知らなかった人もいると思うので、実際には、どうかはわからないです。

なぜ、そこまで収集しているのですか?

古着屋で働いていたのと、買いだしたら止まらなくなったのと、あとTシャツだったら、誰も収集していないだろうなと。NIRVANA好きでTシャツを持っている人は限られるだろうと。CDを持っている人は大勢いるだろうし、音楽について詳しい人や、曲を弾ける人は、いるでしょうけど、90年代当時のTシャツだけを買ってるとなると、まぁ、いないだろうと。ただ正直、この本を出したので、Tシャツを追うことも全部フラットになって、楽にはなりましたね(笑)。

バックプリントはカート・コバーン自身が描いたグラフィック

次回は、収集したTシャツをもとに、本を製作し出版した経緯を探る。

「カート・コバーンに唾を吐かれても…」NIRVANA TシャツBOOK(前編)はこちら

「カート・コバーンに唾を吐かれても…」NIRVANA TシャツBOOK(後編)はこちら