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Photo courtesy of the artist

グラインドコアは決しておふざけではないし、グラインドコアを演るプレイヤーたちも舐めた真似はしないから、私は、Grindmotherに少しビビっていた。彼女は、グラインドコア・シーンに彗星の如く現れた反逆者だ。彼女に電話取材を申し込んだとき、私は、もし会話が噛み合わなかった場合どう対応すればいいのか、すごく心配だった。しかし、実際に彼女と話すと、懸念などなかったかのようなありふれた会話ができた。

「グラインドマザー」は本名を公表していないが、その女性は、カナダのオンタリオ州ウィンザー(Windsor)を拠点に活動する、67歳のグラインドコア・バンドのリードシンガーだ。彼女がエクストリーム・ミュージックの血塗られた世界に足を踏み入れたきっかけは、彼女の息子で、CORRUPT LEADERSのメンバー、熱帯雨林(Rain Forest)がバンドの楽曲「Any Cost」にスクリームを加えるために、何気なく母親に声をかけたのがキッカケだった。「Any Cost」が収録された、CORRUPT LEADERSの4分にも満たない4曲入りEP『Grindmother』は、ネット上で瞬く間に拡散され、2015年11月には、全能なる暗黒王子ことオジー・オズボーンの血走った目に留まった。 「Any Cost」を聴いたオジーは「何だよコレ?」と礼儀正しくツイートした。

腹を括って彼女に電話をかけた。その結果、「環境破壊」「人間苦」「人口増大」など、彼女がムカつく世の中の事象への怒りを音楽でブチまけていることを聞き出せた。さらに、お世辞にも熟達しているとはいえないものの、何かに憑依されたような歌唱法をどうやって身につけたか、菜園、カモジグサへの驚嘆の念など、いろいろな話を聞かせてくれた。

ギタリストに息子の熱帯雨林、ドラマーにタイソン(Tyson)を迎え、彼女は、グラインドコア・トリオ、THE GRINDMOTHERを結成。デビュー・アルバム『Age of Destruction』の収録曲は全曲1分以下。しかも、その猛烈な10曲にはグラインドマザーの悪魔じみたヴォーカル、骨を粉砕するかのようなブラスト・ビート、絶え間なく耳に突き刺さる破滅的ギターノイズが詰め込まれている。このアルバムはTOXIC HOLOCAUSTのジョエル・グラインド(Joel Grind)によってミックスされ、Black Matter Masteringのダン・エメリー(Dan Emery)がマスタリングを担当した。

エクストリーム・ミュージックの素晴らしさがわからなかったり、グラインドマザーは家で大人しくしてろ、なんて考える偏狭な連中はくたばればいい。 グラインドマザーと熱帯雨林は、ポジティブなヴァイブスしか放っていない。

2016年4月28日、『Age of Destruction』がリリースされた。歪み狂い混乱を極めたアルバムの全貌は、絶賛ストリーミング中だ。以下、グラインドマザーと熱帯雨林の親子インタビューをどうぞ。

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グラインドマザーのスクリームを初めて聴いた感想を教えて下さい?

熱帯雨林:笑えたし、イカしてた。母ちゃんが初めてスクリームしたときの映像を見返したんだけど、今はかなり上達してる。

あなたが子どもの頃、グラインドマザーもハードコアを聴いていたんですか?

熱帯雨林:母ちゃんは素晴らしい人間で、無欲で情け深い。母ちゃんは、パンクやメタルを聴いてなかったけど、俺のアートや音楽活動にはいつも協力的だった。

世間の注目についてはどう思いますか?

熱帯雨林:メインストリームのメディアはたまに間抜けだけど、世間はクールだ。クール過ぎて圧倒されたりするから、対処法はちょっと難しいかな。俺たちは活動にかなり慎重になってるから、プレッシャーを受けるような面倒なコトはしない。

グラインドマザー、初めてマイクを握ったときに何が起きたんですか?

グラインドマザー:息子の熱帯雨林からスクリームを頼まれたとき、世界の現状が頭に思い浮かびました。殺人、爆破、権力掌握に躍起になる人々などなど、そういったものが人生初スクリームの動機でしたから、深く息を吸い、絶叫したんです。かなりいいスクリームでした(笑)。解き放たれた気分でした。それは意図してませんでしたが、うまくいきました。「ワォ!」と驚きましたよ。自らの内にあるすべてをブチまけたのは壮快でした。ですから、私のスクリームは現状に対するフラストレーションの昇華です。そうすることで、スクリームは充実します。

最初は特定の曲だけでスクリームしたんですか? それとも、他の曲でもスクリームしたんですか?

グラインドマザー:何回かスクリームしただけです。熱帯雨林から、CORRUPT LEADERSの曲で、ゲストボーカルとしてスクリームして欲しい、とお願いされましたから、指示通りにやりました。その約1年後に、息子が、「もう1曲やろう」と提案してきました。その曲でも同じようにスクリームしました。リリックをスクリームしたのですが、リリックがあっても同じです。スクリームだけのときと同様に、リリックとともにフラストレーションを吐き出します。「 10年間続く独裁!(10 years of your leadership!)」(「Any Cost」のリリック)といった感じです。

歌唱法はどうやって身につけたんですか?

グラインドマザー:まず、「彼女は喉を痛めるだろう」というコメントが集まりました。熱帯雨林も、スクリームにはコツがある、といってました。実を言うと、私はスクリームの後に喉を痛めていましたから、いろいろな絶叫法にトライしました。スクリームのコツは、喉で空気を押し出すのでなく、横隔膜から空気を押し出すんです。喉でやりますと、空気が喉に引っ掛かり、すぐに喉を痛めてしまいます。声帯をダメにしたくなかったので、下腹部から空気を押し出す練習をしました。理由はよくわかりませんが、そうすると、空気は何事もなく通り抜け、喉や声帯を痛めるずにスクリームできます。

そうやって歌うのは難しいんですか?

グラインドマザー:1曲演りきろうとすれば消耗しますし、それなりに鍛錬しなければ無理です。しかし、私は健康だから平気です。ガーデニングなどいろいろやってますし、いろんなプロジェクトに参加しています。

ファーストEPのリリックは、「環境」「人道的努力」「政治」ですが…

グラインドマザー:そうです。「人間の苦脳」「食品」「モンサント」「遺伝子組み換え」「人口」「人道的貢献における、ポジティブな事象」です。

ニューアルバム『Age of Destruction』について教えていただけますか?

グラインドマザー:アルバムを完成させるのは大変でしたけれど、すごく楽しかったです。作品の出来も素晴らしい。アルバムの10曲はグラインドしまくってますが、バンドの違う1面も表現できました。

はじめての曲、「Any Cost」の政治的なテーマに回帰するのでしょうか?

グラインドマザー:私たちは、政治的なバンド、とは自称しません。「社会問題」と「環境」について歌っていますが、多くの曲は「人類の強さ、弱さ」、「思考の力」などについてです。

どんな動機で『Age of Destruction』に収録されている「Media Spin」を書いたんですか? 曲中で使用されているサウンドバイトはどこで手に入れたんですか?

グラインドマザー:あれは、テレビやラジオで私たちが取り上げられたのを切り抜いただけで、ネガティブなものではありません。私たちのようなエクストリーム・ミュージックは、ときどき、メディアに理解されないことがあります。なので、彼らは、私たちを茶化すようなコメントをしたりします。例えば、THE GRINDMOTHERはマフィンのレシピや、何を食べたかついて歌っている、という類のコメントです。

もう仕事はしていないんですか?

グラインドマザー:していません。私はソーシャルワーカーでした。また、有機菜園についても学んでいたので、しばらくは、それにまつわることもしていました。以前に比べて小さくなってしまいましたが、今でも菜園で野菜を栽培しています。トマトやその他の野菜は室内で育てており、気候が良くなるのを待っているところです。気候が良くなれば、外で野菜を育てられます。最近、カモジグサの良さがわかったばかりです。麦の仲間なんですが、スプラウトとして発芽した芽と茎を刈り取って食用にできます。カモジグサは新たなスーパーフードになるでしょう。ミキサーを使って、ジュースにもできますし、好きなように調理できるのです。カモジグサは素晴らしい植物ですから、栽培を始めたところです。平豆や他の豆のスプラウトにも挑戦したいですね。マメ類はタンパク質を豊富に含んでいますから、サラダにしたり、スムージーにしたりするのもいいでしょう。

あなたは本名を明かさず匿名で活動していますが、あなたが何をしているかを知っている友人もいますよね?

グラインドマザー:はい。

彼らはどう思っているんですか?

グラインドマザー:みんな協力的です。みんな、私の活動を認めていますし、ネット上に私たちの音楽が投稿されれば、それを聴いてくれます。彼らからのフィードバックもあります。「なんであんなことをするんだ?」なんて訝しむ友人はいませんよ(笑)。

以前と変わらず友人たちとは交流していますか? バンドの練習で彼らと顔をあわせる機会は減ってしまったのでは。

グラインドマザー:以前と変わらずです。持ち寄りの食事会やお互いを見舞ったりしています。オンタリオ州チャタム(Chatham)に友人たちがいますから、彼らを訪ね、いろんなことを計画をしています。今のところ、彼らとの交流は途絶えていません。また、私は熱心なキャンパーでもあります。2015年、オンタリオ州セサロン(Thessalon)近郊の、約86ヘクタールの茂みの中でキャンプをしました。ミソーキー川(Missaukee River)の側でテントを張りましたが、素晴らしい経験でしたよ。

あなたの活動に対する肯定的なフィードバックをたくさん耳にしますが、あなたを単なる珍奇なキャラクターと捉えるヒトたちもいるはずです。そんなヒトたちに何か言いたいことはありますか?

グラインドマザー:私の活動には物珍しさ以上のモノがあるはずです。物珍しさだけで、私たちのファーストCDはネット上で25万回も再生されるでしょうか? もし世間が物珍しさ以上の関心を示さなかったなら、私たちは完全に消えていたでしょう。私たちは、彼らの関心に応えていくつもりです。もし、それが面白くなければ潔くマイクを置くつもりです。

どのくらいグラインドマザーを続けたいんですか?

グラインドマザー:ご存知のように、私は健康です。それに、音楽が面白くて興味が続く限り、そして、リスナーが私たちの音楽を聴きたがる限りは続けるつもりです。なので、もうしばらくはグラインドマザーでいられます(笑)。人生に「何か」が顕われ、それが面白いようであるれば、私は身を任せるタイプです。 「マイクを置き、引退します」と宣言するような、終幕は準備していません。.