Rose Blanchard. Photo courtesy of subject and Stocksy

イギリスのブリストルには、ティーンエイジャーたちが学校で直面する性差別やホモフォビア(同性愛嫌悪)に立ち向かうためにトレーニングする、〈高校生ジェンダーアンバサダー・プログラム〉がある。その制度を通じて任命された第1期のアンバサダーが16歳のローズ・ブランチャード(Rose Blanchard)だ。

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小さい頃から、私は、自分のことを特別女の子らしいと思ったことはありません。いつもズボンを履いて男の子とばかり遊んでいました。そのせいでいじめられたり、からかわれたりもしませんでした。でも、今は、学校で居心地の悪さを感じることがよくあるんです。

例えば、体育の授業で、女子はスコート(ショートパンツにスカートがついているもの。テニスの女性用ユニフォームとしてよく利用されている)を履かないといけません。スコートでは落ち着かないから、という理由で、ズボンが履きたい、と訴えた女子は私だけでした。見下された感じがして、私が変なんだ、と言われたような気がしました。ドレスは着ないし、お人形さんみたいに着飾らないといけないのが嫌で卒業パーティーにも参加しませんでした。典型的な、〈女の子らしい女子〉じゃないと、居場所がないような気がしていたんです。

学校で友達といっしょに全校集会に出ていたとき、フェミニストの活動家の〈Tiger〉というグループが開催しているジェンダーアンバサダー・プログラムを知り、フェミニズムやLGBT、トランスジェンダーについてもっと勉強したくなりました。今、流行りだし、メディアでもよく取り上げられていますが、きちんと知るのは10代の私たちにとって、簡単ではありません。

学校ではほとんど何も学べません。男女平等については、ずっと大切だと思っていましたが、フェミニズムという言葉も、何年か前にTVで聞いたのが初めてです。インターネットで調べようとしても、間違いだらけの情報を正確に取捨選択しないといけないし、情報が正しいかどうかを判断するのは大変です。私たちがTV、家族、ポルノから得る間違った悪質な情報は、正確で有意義な情報よりもはるかに多いんです。

10人集まったジェンダーアンバサダー・プログラムの参加者を前に、ファシリテーターは「私たちは、ジェンダーに関する問題の深い知識を学び、学校の生徒や先生たちの間に広まる性差別や、ホモフォビア、トランスジェンダーの人たちへの嫌悪であるトランスフォビアなどを無くすために取り組むのだ」と言明しました。ゼロ・トレランス(zero tolerance, 不寛容)方式によってすぐ退学にされてしまいますから、私の学校にはいじめはあまりありませんが、ジェンダーに関する問題を知らない生徒はかなりたくさんいます。

子どもたちは今でも「ゲイっぽい」などと平気で口にします。私は、社会学のクラスでジェンダーについて勉強していますが、フェミニズムについて語る女性の動画を授業で見ると、男子たちはあきれ顔で目をまわしたり、露骨に嫌な顔をしたりします。自信が無くて大きな声にこそしませんでしたが、「そういうのはよくない!」とずっと内に抱えていました。

こういうことは、先生よりも同年代の生徒から指摘されたほうが効果があるはずです。年が近い友達グループの話ならちゃんと聞くし、受け入れやすいですから。先生たちが誰かを傷つけるようなひどい発言をするのは、聞いたことがないけれど、もっとジェンダーについて知っておいたほうがいいのに、と思ったりはします。

週に1回、全部で6回続いたトレーニングのセッションで、私たちは、ジェンダーにまつわる固定観念や、男らしさ、女らしさについて詳しく勉強しました。友達の男子をひとり、一緒に連れていったのですが、最初はいやいや参加していたのに、男同士の付き合い、男性は感情を見せてはいけない、という偏見などを通して〈男性とは何か〉を議論することがとても身近に、自分ごととして感じられたそうです。彼は、こんなことは誰とも話した経験がなかったそうです。これは、私の友達の男子全員、そして、彼らの兄弟たちにも深く影響を与えている問題です。男子たちはみんな、強くなければいけない、泣いてはいけない、と信じ込んでいるからです。

ジェンダーアンバサダー・プログラムのワークショップのポスター。

トランスジェンダーに限らず、幅広くジェンダーについても学びました。ノンバイナリーといわれるみなさんにも実際に会ったのですが、参加者のなかでノンバイナリーについて、誰も知らなかったので、とても面白い経験でした。この経験を通して、私は、様々なアイデアに心を開くこと、見た目が男性や女性だからといってジェンダーを決めつけてはいけない、ということを学びました。

それから、ハラスメントとは何か、どうやって声をあげるかも学びました。同じクラスのほとんどの女子たちは、何がハラスメントか知らず、男子がやることだから仕方がない、と諦めていたんです。

私たちは、知識が無いせいで間違った発言をしてしまったみんなと冷静に向き合いました。その人たちが考えていること、信じていることと〈真実〉は違うということを説明したりもします。怒ってはいけません。特に10代の若い人たちはただ間違った情報を知らされているだけかもしれないし、それは彼らのせいではないんです。

トレーニングを終えて学校に戻ったとき、私は、差別や偏見に立ち向かうことにかなり自信がついていました。つい昨日も、ノンバイナリーになれるなんて信じられない、という生徒たちがいたんですが、友達と私がなかに入って話し合った結果、ちゃんとわかってもらえました。

これだけで十分でないことはわかっています。学校は、もっと早く、小学生くらいの段階で、差別や偏見に立ち向かえるよう準備すべきです。ジェンダーアンバサダー・プログラムのリーダーに、もっと小さな子どもたちにはどうやってこういう考え方を教えたらいいか、と聞かれ、私たちは、ビデオブログやイラスト、詩など、見た目にもわかりやすいツールを利用した子供向けの展示開催を決めました。

男性であるのがどういうことか、いかに私たちが理想の女の子でいないといけないとプレッシャーを感じているか、友達と私でポスターにしました。まだ私が12、3歳の頃です。いつも体重を気にして、芸能人と自身を比べていた友達がいたのを覚えています。同級生の妹に聞いた話だと、それくらいの年の子たちは今でも、ウエストは細くないといけない、常にメイクをしないといけない、とノルマになっているそうです。すごく悲しいことです。自分らしく生きていいはずなのに。こういう状況ですから、学校が子どもたちを救えているか、というとまだ全然十分ではありません。

男性らしさについても積極的に話してもらうように働きかけることで、学校の男子たちにとって、ジェンダーの問題は身近なんだから考えるべきだ、と伝えたいです。今はまだ、女子にしか関係ない、と思われているからです。一緒にトレーニングに参加した友達の男子以外、アンバサダーは、みんな女子なんです。

10代の私たちがYouTubeやTumblrが好きなのは、同年代の子たちが発信しているからです。でもその声のなかにも、たくさんのホモフォビアや性差別が混ざっています。私の弟も、YouTubeでレイプがジョークにされているのを見てから、ずっとその真似をしていたりします。ジェンダーアンバサダーとして、10代の私たちがジェンダーについて、もっと積極的に話すことができる、よりよい方法を築きたいです。