「Facebook、Instagram、Tinderを探し回ります。飽きるまでスワイプし続けます」。マリー・ヒルド(Marie Hyld)は、デジタル時代のデート体験について語る。24歳の写真家である彼女は、超表層的な特性のSNSが、実生活での他人とのかかわり方にも影響している、と信じている。その明白な例は、デート文化の進化の仕方だ。私たちは、Tinderに載せる、完璧に加工した自分のイメージを、実際に相手と会うときにも必死にキープしようとする。その結果、出会いの場で心からオープンに、そして、確固たる存在としていられなくなってしまった、と彼女は語る。そこから着想を得たのがヒルドの新しいアートプロジェクト〈Lifecontruction〉だ。彼女がTinderで出会った他人と撮影した、親密なポートレート・シリーズだ。

手始めに、ヒルドは、Tinderのアカウントを再開し、プロジェクトに沿うよう手を加えた。彼女のプロフィール欄には、マッチした相手に会いたいということ、写真を撮らせてほしいということ、その写真は、まるで愛し合うカップルのような、あるいは長年連れ添ってきたようなカップルのような演出を施したい、と詳細を記した。また、撮影した写真は公開する、と明記した。つまりヒルドとマッチした相手は、必然的にプロジェクト参加を承諾したことになる。「そうしてスワイプを始めました。私のアイデアを気に入って、提案を受けいれてくれたみんなに会うのはおもしろかったですね。見つけた相手、ほぼ全員とマッチしました。みんな、企画に乗ってくれたんです」と彼女は回想する。

写真の左下には、彼女がデート相手と知り合ってからの時間が記載されている。初めて会って、ふたりがラブラブ写真を撮るまでの時間だ。彼女の親密な写真の演出、撮影のプロセスは、いったいどうなっているのだろう。

相手と会う前から、どんなシーンを撮影するか決めているんですか?

基本的には、インスピレーションに任せています。対面するまで撮影場所は見ません。そうするのがこのプロジェクトのおもしろみです。どんな場所に足を踏み入れるのかわからないから、前もって計画できない。だからとにかく、与えられた条件でやるしかないんです。このプロジェクトで、私が決めている目標は、物事に身を任せ、しっくりくることを何でもやる、です。

今、私たちには、顔と顔を突き合わせる時間が不足している気がしています。交流していても、そこに本当の自分がいるかもあやふやです。状況は悪化していて、その原因は主にSNSだと私は感じています。ただ、このプロジェクトは、そもそもTinderがなければ実現しなかった、というのは皮肉ですね。

特に気になった写真が2枚あります。1枚目は、あなたとデート相手がゴム製のコスチュームに身を包んでいる写真です。撮影の経緯を教えてください。

確か、相手のユーザーネームは〈Mr. BDSM〉だったはずです。彼が嬉々としてありのままでいたので、すごく良いな、と思いました。それに、プロジェクトには、誰かが全部されけだして、みんなをびっくりさせるようなシーンが欲しかったんです。私はBDSM愛好者ではないけど、ひとつのプロジェクトとして取り組みます、と彼に伝えました。

ドアを開けて迎えてくれた彼は、ゴム製靴下以外は普通の服装でした。温かい人柄を感じさせる目をしていました。そして、クローゼットのなかを見せてくれましたが、ゴム製の服ばかりでした。私には、元カノの服を1着を貸してくれました。身体じゅうにオイルを塗りたくらないと、その服は着れませんでした。彼もそうです。そのとき、何もかもが可笑しくなって、私たちは、ひとしきり笑いました。彼は、彼のボディスーツに空いた、ペニス用の穴を見せてくれたり、全身スーツだと皮膚呼吸ができないこと、着心地がかなり悪いことなど、教えてくれました。私たちは写真を1枚撮り、私の母に送りました。娘が知らない男の家に行くことを、心配していたんです。とある火曜午後の話です。無心に撮影に取り組めました。オープンマインドで、全てを受け入れていましたから。

もう1枚気になったのは、あなたと相手がふたりでパソコンの前に座っている写真です。どうしてこのセットを選んだんですか?

彼はコンピューターヲタクで、部屋全体が、コンピューター仕様でした。これを生かして、かりそめの関係を表現しようと考えました。そういうふうにして、雰囲気やアパートで見つけたモノからインスピレーションを得ているんです。