Illustration by Lia Kantrowitz

1987年のヒット曲「Opposites Attract」でポーラ・アブドゥル(Paula Abdul)が歌った〈何もかも正反対ながらも惹かれあう〉カップル像は、当時、キャッチーに響いたが、実のところ、まったく異なる性格のふたりが恋人としてうまく関係を築ける、という説を裏付ける科学的な証拠はほぼない。自分に似た誰かとセックスしたい、なんてちょっと倒錯的な感じもするかもしれないが、むしろ、自分とよく似た特質を持つ他人に惹かれるほうが、きわめて普通なのだ。

英国、バース大学(University of Bath)の心理学教授アンソニー・リトル(Anthony Little)博士は、顔認知、配偶者選択、社会的認知の専門家だ。彼は、〈同類交配〉説、すなわち、カップルはなぜか似る傾向にある、という説を裏付ける数多の証拠があるという。「実は人間以外の動物にもよく見られるパターンです。人間同士のカップルにおいては特に、宗教や政治思想などの社会的変数、教育や知性、人格などの要因において、強い類似性が見られます。また、特に身長や体重など、多くの身体的特徴がマッチする場合もあります」

社会心理学者の故ロバート・ザイヤンツ(Robert Zajonc)教授は、特に、顔の特徴をベースにしてカップルの身体的類似性を研究した第一人者だ。1987年のミシガン大学の研究で、彼のチームは110名の学部生を集め、学生たちに12組の夫婦の白黒写真を分析させた。写真は夫婦1組につき2枚。1枚は新婚当初の写真、もう1枚は結婚生活25年の写真である。学生たちは、年を重ねてからのほうのふたりが似ており〈夫婦感〉が滲み出ている、と結論づけた。

この結果の解説にあたり、ザイヤンツ教授は〈共感〉を指摘した。「結婚すると、夫婦は基本的にすぐ近くにおり、同じ環境で過ごす。そして夫婦という関係上、配偶者のあらゆる感情の状態を理解する」「時間が経つにつれ、様々な感情状態が共有されるようになる。感情の激しさはそのまま伝わるわけではないにしろ、妻のあらゆる感情を夫も経験する。逆もまた然り。そしてそれらの感情の状態や気分の生成において、顔面筋肉組織が重要な役割を果たしているとすると、夫婦の外見は時間とともに似てくるはずである」

つまり、「いっしょに笑ったり泣いたり、時間をかけて感情を共有することにより、カップルの顔はもっと似てくる」とリトル博士。

さらに他の説もある。例えばジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)とジェシカ・ビール(Jessica Biel)夫妻、トム・ブレイディ(Tom Brady)とジゼル・ブンチェン(Gisele Bundchen)夫妻のように、血縁と間違われるほど似ているカップルもいるが、それは、人間は自分に似ているパートナーを好む傾向にあるからだ、と説明できる。2002年の研究で、リトル博士のチームはこの現象について詳しい調査を実施した。少々フロイト派的な手法ではあるが、人間は自らと違う性別の親が持つ身体的特徴に惹かれるのか否か、というテーマを立て研究を進めたのだ。約700名の参加者に質問した内容は、自分自身の性別、年齢、パートナーの理想の性別などに加え、理想のパートナーの家族の髪の色、瞳の色の特徴だった。そこからリトル博士が導き出したのは、「人間は、自分自身、または自分と同じ性別の親よりも、自らと逆の性別の親に似たパートナーを選ぶ」という傾向だった。

「しかし、基本的に人間は、親しみのある刺激に前向きに反応する。これはよく知られた事実である。そして、親の特徴に〈親しみがある〉のは間違いない」。研究ではこのように解説されている。「人間は、自分の親(の髪や瞳)の色によく似た色のパートナーを選ぶ傾向にある。それは、異なる色のパートナー候補よりも、初対面で親しみを感じやすいからだ」

リトル博士はさらに説明してくれた。「私たちは、親しみのあるものが好きなのです。例えば、ある曲を聴いていればいるほど、その曲に対する評価はポジティブになります。抽象画も同じです。よく知っていればいるほど、好意が高まるのです」

もしかしたら、遺伝子のせいかもしれない。コロラド大学ボルダー校の2014年の研究によると、人間は似たDNAを持つ配偶者を選ぶ傾向にあるそうだ。配偶者選択における遺伝的特徴の重要性は低い(その重要性は、完全な後天的特徴である教育レベルの3分の1程度)が、米国在住の白人夫婦825組を分析したところ、無作為に抽出した人間ふたりのDNAと比べると、夫婦のDNAには差異が少なかった。

一方、異なるふたりが惹かれあう仕組みについても科学的に解明されている。2009年に実施された調査で、人間は自分とは違う免疫遺伝子を持つ相手に惹かれやすい、という事実が判明した。それは、違う免疫遺伝子を持つ配偶者であれば、より健康な子どもが産まれる可能性が高いからだ、と予想されている。

しかし、カップルにおけるDNAの類似性が、長いあいだいっしょに過ごすことにより生まれるとしても、無意識の選択によって生まれているとしても、似ている相手といっしょになればメリットがある、とリトル。「見た目が似ているということは、行動も似ているということです。つまり、見た目が似ているカップルは、うまが合う。似ていないカップルは、似ているカップルよりも離婚率が高いという証拠もあります。パーソナリティが大きく異なっていれば、軋轢も生まれるでしょう。想像に難くありません」

リトルは続ける。「類似性は遺伝的なメリットがあるとも考えられます。通常、子どもには親の情報の50%しか受け継がれません。しかし、配偶者同士が似ていて、同じ遺伝子を持っていれば、子どもには50%以上の情報が受け継がれる可能性があります。つまり、自分と似た相手といっしょになると、次世代に残せる自分の遺伝子も増えるということです」

金髪碧眼の男女において顕著だが、歴史的に、遺伝子プールを重視するペアリングはうまくいかない(ヒトラーはご存知だろう)。「もちろん、遺伝子的に好ましい血縁集団を形成する、という意図を悪用した団体もあります」とリトル。「しかし、ある意味、まっとうな発想ではあります。共通の遺伝物質を持っているため、人間は、見知らぬ他人より血縁者を好みます。ただ、このアイディアも度が過ぎると、多数派との違いを理由にしたマイノリティ集団差別の正当化に利用されてしまいます」

しかし、遺伝子については、「集団ではなく個人レベルの話ですから」一概には語れない、と彼は指摘する。

ただ、似ているカップルは持っている遺伝子も似ている、と考えると、ひとつ引っかかることがある。「あまりに似すぎていると近親交配の危険性も出てきます」とリトル。「カップルの類似性には限度があるはずです」