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社会に溶け込んでいるサイコパス

「サイコパスは、数々のドラマを乗り越えてきています」
Photo by Evynne Morin, courtesy of Penguin Press

「元カレがヤバい男だった」という女性は少なくないだろうが、「夫が真正のサイコパスだった」となると、どうだろう? 作家のジェン・ウェイト(Jen Waite)が2017年に上梓した回想録『A Beautiful, Terrible Thing』で語るのはそんな体験だ。素敵な旦那様、かわいい義理の息子、生まれたばかりの赤ん坊…。ニューヨーク在住の女優、モデルとして、ウェイトは数年間、完璧な生活を謳歌していた。それが崩れ始めたのは、出産から1カ月経ったときのこと。彼女の妊娠中、夫の不倫が判明したのだ。あろうことか、夫は、妻の分娩中にも、若い愛人との電話にかまけていた。さらに育児休暇も、愛人と過ごすために費やした、とウェイトは主張する。

不倫の実態は、少しずつ明らかになった。ウェイトは、数カ月にわたり、大量の証拠を集めた。そして、夫が張り巡らした嘘を解きほぐしていくうちに、彼女は、驚くべき事実に直面する。自分の結婚相手は、実はサイコパスだったのだ。サイコパスとは、良心の呵責を抱かずに嘘をつき、自らの行動を認めず、その責任をとることを拒否するタイプの人間だ。

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『Psychology Today』によると、「サイコパスは精神疾患のなかでも、気づきにくい。サイコパスは、普通、もしくは、それ以上に魅力的な容姿に恵まれている。しかし、その仮面の下には、誠実さや共感のかけらもない心を隠している。サイコパスは、他人を操り、気まぐれで、場合によっては犯罪者になりうる」。一般的に、サイコパスといえば、残忍な犯罪者や連続殺人犯が想起されるが、そういうタイプのサイコパスは、ごくいち部だ。多くは、私たちのなかに溶け込んでいる。神経科学者のケント・A・キール(Kent A. Kiehl)博士は、サイコパスの存在率を、150人にひとりと想定している。

ウェイトは、2017年の回想録で、結婚生活の破綻と、夫に受けたダメージから立ち直る経緯を記録した。サイコパスの危険信号に気づくにはどうしたらいいのだろう。

§

今付き合っているパートナー、配偶者、あるいは、最近デートしている相手がサイコパスである可能性を示す兆候を教えてください。

警戒すべき点は、たくさんあります。私の経験上いえるのは、何よりも、大げさな愛情表現は危ない、ということ。甘い言葉、気遣い、コミュニケーションなど、常に大げさに愛情を表現します。文字どおり〈常に〉です。初めのうちは、すごいな、と面喰うんですけど、徐々に慣れてしまいます。そうなると、ドラッグみたいに、こちらからそれを欲してしまう。自分が宇宙の中心にいるかのように感じます。溺愛されていると実感しますし、まるで映画のヒロインのような気分です。でも、1歩引いて、「数週間経っても、ここまで強く愛情を感じられるのかな?」と客観的になってください。それは危険信号です。

その他には?

私自身が何度も経験したのは、同情心を煽る行動ですね。彼らは、お涙ちょうだい的なストーリーを多々披露してくるんです。サイコパスは、言葉と行動が一致しないことがあります。そして、こちらがそれを非難すると、涙を誘うようなストーリーを話し出す。でも、よく考えてみれば、その内容って、こちらの指摘とは何の関係もないんです。つまり彼らは、相手に「かわいそうだな」と同情させたいんです。だから突然被害者ヅラをしては、話を脱線させる。元夫もそうでした。普通の人が反射的に抱く共感や罪悪感を、彼らは利用しているわけです。

サイコパスは、誰に対しても同じような行動を繰り返すのでしょうか?

できる限り客観性を保ちながら、彼らの過去を探ってみればわかります。多くのサイコパスは、同じような人間関係を何度も繰り返しています。例えば、〈ヤバい〉元カノがたくさんいるとか、縁を切った人が多いとか、家族や友人たちといい関係を築けていないとか。そうなっているのは、この人との関係がダメになったら次の人、と彼らがどんどんターゲットを乗り換えてきたからです。

パートナーや、デート相手がサイコパスだったら、どうすればいいですか?

普通の関係を清算するのとは違うので、難しいですよ。サイコパスは、数々のドラマを乗り越えてきています。彼らの望みは、相手の人生を、可能な限り惨めな状態に陥れることです。私自身の経験からいえるのは、彼らにとって〈超つまらない人間〉でいるようにしよう、ですね。サイコパスは、絶対に、やたらドラマティックなメッセージを送ってきますが、それにいちいち付き合ってしまってはダメです。本当に面倒なことになりますから。私がいうんだから間違いありません。

サイコパスについて誤解されがちな点ってありますか?

サイコパスと連続殺人を結びつける人が多いんですが、それは違います。実は、サイコパスの多くは、まったく普通で、感じがよくて、素敵で、魅力的なんです。サイコパスだからといって、みんながみんな連続殺人犯ではありません。確かに、連続殺人犯にはサイコパスが多いんですが、サイコパスの特徴を有しながらも、社会に溶け込んでいる人はたくさんいます。そういったサイコパスが殺人を犯さないのは、誰かを感情的に傷つけたり、経済的に破綻させたりするほうに歓びを感じるからです。彼らは、殺人を犯さなくとも、他者の人生を破壊しようとするんです。