音の国の王子さまは竹馬に乗ってやって来る ICHIインタビュー_top

友だちと談笑していると、遠くの方から、ハーモニカとチャリンチャリンとポコンポコンって音が聞こえて来ます。どんどん近づいて来るハーチャリポコ。子どもたちがわらわらと集まって来ます。そう、竹馬に乗ってICHIがやって来た!現在は奥様であるレイチェル・ダッドとブリストルに在住し、正に音楽(音と楽器)を発明しながら、世界各国をハーチャリポコしているICHI。友だちとの談笑も、子どもたちの笑い声も、ICHIが抱えて演奏が始まる。ト音記号も音符たちも元気良く宙に羽ばたいて行く。森の動物たちもやんややんやと集まって来た。…それがICHIの音楽なのです。

五年ぶりの新作『maru』を引っさげて、ジャパンをハーチャリポコのICHIにインタビューしました。赤ちゃんのように澄み切った瞳に吸い込まれましたよ。

ツアーが終わったらすぐにブリストルに戻られるのですか?

はい。もうすぐ二人目の子どもが生まれるので。

それはおめでとうございます!お兄ちゃんがいるんですよね。何歳ですか?

二歳です。

わー、やんちゃな頃ですね。お子さんが生まれてから、音楽性に何か影響とかありましたか?

確実に創作時間が少なくなりました(笑)。前はもっといろんな楽器を使って曲作りしていたのですが、今はひとつの楽器で作ることが多くなりました。でも僕自身も言葉の方に興味が出て来まして…言葉の音、声を使った感じの曲が多くなっているので、時間が足りないという訳ではありません。

新曲が出来たらお子さんに聞かせたりするのですか?

いえ、それはあまりしません。逆に僕が演っていると、ブチ壊しに来るんで。

(笑)。お子さんにしてみたら、物心付いたときから、面白いオモチャみたいなのがゴロゴロしている訳ですよね。

はい。いじられてます。スティールパンとか打楽器系を叩きまくって。でもリズム感は良くなっているようです。

ICHIさんは元々パンクで音楽に目覚めたと聞いていますが。

はい。中学校くらいのときに…クラッシュとかラモーンズとかダムドとかです。

そして、のうしんとうのメンバーもやってらして。のうしんとうとパンクは繋がるのですが、ICHIさんのソロを初めて聞いたとき、のうしんとうのイメージとはかけ離れているのでビックリしました。どのようなきっかけでソロ活動はスタートしたんですか?

イベントにソロで出演してって頼まれたんです。そのとき身近にあったのが木琴とリズムボックスだったので、まずはこのようなスタイルで始めました。

その頃から民族音楽に興味があったのですか?

はい。それもあったので、ソロでは違ったことをやろうと思いました。

音の国の王子さまは竹馬に乗ってやって来る ICHIインタビュー_01

at gallery SEPTIMA (Photo by Ryo Mitamura)

楽器をご自身で作ろうと思ったきっかけは?

木琴をやっていましたが、ベースも入れたいと思っていたんです。そしたら持っていたウッドベースのボディ部分が割れてしまいまして、ちょっと合体させてみたらどうなるかな…ってやってみたら、結構いい音が出たんです。それに既存の楽器だと自分の音じゃない…っていうのが元々頭にあったんです。自分で作った楽器なら自分の音になるわけですから。

作るのを失敗しちゃった楽器とかもあるんですか?

ええ、もちろんたくさんあります(笑)。

やはり(笑)。楽器を作るときって「こういう音を出したいなぁ」が最初なのですか?それとも「こういう音が出たから」で、曲作りを始めるのですか?

前者です。それと作るときは、持ち運びも考えます。軽さとか。

そうかそうか!移動が大変ですものね!

はい、とても大事なことなんです(笑)。

ICHIが作った楽器を紹介 via huck magazine

今までどれくらいの数の楽器を作りましたか?覚えてないくらい?

覚えられないほど作ってはいませんが…竹馬はたくさん作りましたね。

おお!竹馬のきっかけを教えてください。

子どもの頃は普通にやっていたんです。で、ライヴのときに普通にステージに上がるのは面白くないなぁって思っていて…マイナー・スレットとかスケボーで登場したりするじゃないですか。いいなぁ、かっこいいなぁって思っていて。そしたら「あ、竹馬…」と頭に浮かびました。それでやってみたら、すごくイイ感じだったんです。

最初からご自分で作っていたんですか?

はい、まずは竹で作っていました。でも竹だとどうしてもすぐに割れてしまうので、途中から丈夫な木に変えました。

海外公演のときはどうするのですか?

現地で作ったりもします。でもなかなか材料が揃わないこともあります。フランスでやったときも見つからなかったんですが、現地のお婆ちゃんが畑仕事をしていて、その横にいい棒があったんです。「譲ってくれませんか?」って言ったら、「じゃあ終わったら、その竹馬ちょうだい。孫にあげるから」って。

素敵ですね!竹馬で登場もそうなのですが、子どもは喜びますよね。元々そのようなパフォーマンス性の高いライヴをやっていたのですか?

いいえ。最初は普通に演奏していました。子どもに見せる…という認識もありません。ただ子どもからお爺ちゃん、お婆ちゃん、国とかも関係無く楽しめるものが好きなので、そういう音楽はずっとやりたいと思っていました。でもやはりワークショップとかも頼まれるんですが、僕、そういうの出来ないんです…(笑)。

でも「おんがく世界りょこう」(NHKの人形アニメ。ICHIがモデルの「イチくん」が楽器を演奏しながら世界中を旅する。音楽もICHIが担当)もありましたから、そりゃ、お子さん増えますよねー。

はい。でもアニメと僕は、全然見た目が違うので、子どもはポカーンとしています。結びついてないと思います。

はははは!さて最新作『maru』についてお訊きしたいのですが、先ほどもおっしゃっていた通り、声とか言葉に興味があると。例えば「わっかP」。言葉遊びですよね?

そうです。「ぱ行」の曲です。それと英語のPを使った早口言葉を合わせたんです。

「九九」もそうですよね。

リズムが好きなんです。最初は日本のとイギリスのを合わせようと思っていたんですが、イギリスは12の段まであって、更に語呂も良くなかったんで止めました。

言葉に興味を持ったのはどうしてですか?

色んな国の言葉に興味があったんです。フランス語講座とか中国語講座とかのテープを集めたりしました。言葉の響きってそれぞれ面白いなあって、言葉を音として感じるようになりました。言葉の音に合うように楽器を選んでいます。

本をパラパラ…の音が入っている「本」。まさかこんなにリズミカルになるとは思いませんでした。どうして思い付いたんですか?

本を題材にした展覧会に誘われたんです。いわゆるブックアートみたいな展覧会でした。本で何か作ろうかなぁ~と思っていたんですが、「本の音」って面白いのではないかと思って。それで音で参加したんです。

音の国の王子さまは竹馬に乗ってやって来る ICHIインタビュー_02

at gallery SEPTIMA (Photo by Ryo Mitamura)

今まで作ったことのない理想の楽器ってありますか?

はい。夢の中の話なんですけど、海辺にスティールパンを一日忘れて来ちゃったんです。そしたらすごく錆びてしまって。それで目が覚めたあとに思い付いたんですが、ガラスでスティールパンのカタチのものを作ったらどうだろうと。ガラスパン!イイ音するんじゃないかと。夢の次の日にガラス工房に行って相談したら「ああ、無理です」って即答されましたが。

(笑)。今後はどんな活動をされたいですか?

やはり色んな国に行って演奏したいです。まだ日本以外のアジアの国々やアフリカとかも行っていないので。

今まで演奏して来た国で印象深かったところを教えてください。

フェスだったからかもしれませんが、オーストラリアが凄かったです。お客さんが、はじめからずーっと踊ってて。普段は僕のライブ、じっと見入る感じの方が多いんですが…。すごく楽しかったですね。

日本ではいかがですか?

今回のツアーで初めて徳島に行ったんです。そこの企画をして下さった女性の方が、とても物静かでおしとやかな方だったんですね。それがイベントの最後にどなたかが縦笛で阿波踊りの音楽を吹き始めたら、いきなり踊られて(笑)。すごく普通にカッコ良く踊っていらして。わー!って感動しましたし、とても羨ましく思いました。

ICHI
名古屋出身。2005年に1stアルバム「mono」、2010年には2ndアルバム「memo」をリリース。全国各地のライブハウスから映画館、劇場、ギャラリー、カフェ、庭園、小学校、幼稚園などでライブを展開。海外ではイギリスを中心にオランダ、ベルギー、フランス、ドイツ、スイス、イタリアでツアー、そしてUK最大規模のグラストンベリーフェスティバルにも2年連続出演した。2011年からはNHKのアニメーション「おんがく世界旅行」への楽曲提供と主演アニメキャラクターとして出演中。スティールパン、木琴、鉄琴、トランペット、アコーディオン、メロディカ、タップシューズ、風船、タイプライター、声、自作楽器などを一人で自在に演奏し、唄い踊り、奇想天外でおもちゃ箱をひっくり返したようなステージングをみせる。音楽活動と並行して造形作品や映像作品も手がけており、mama!milk生駒祐子、パートナーでもあるレイチェル・ダッドの作品やPV映像作品も提供している。2015年、5年ぶりのニュー・アルバム『maru』を発表。そしてレイチェル・ダッドとの子供のための音楽ユニット「パカピキ・ミュージック」もスタートさせている。名古屋のバンド「脳振頭(のうしんとう)」ではダブ担当。

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『maru』via SWEET DREAMS PRESS 
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