数ヶ月前、ケリー・オケレケ氏(脚注①)がBBC 1Xtraに対して批判的な記事を寄稿した。その内容は「昨今イギリスのブラックミュージックが低俗なダンスミュージックに追いやられている」というものであり、その要因となっているのは「伝統的にブラックミュージックをフックアップし続けて来たBBC 1Xtraの変化」だと主張した。もともと英国内のメディアに対する皮肉的な物言いがいつも注目されるケリー・オケレケではあるが、具体的にアーティスト名やプロデューサー名を挙げるなど、今回はいつにも増して強い論調でBBC 1Xtraに食ってかかっているような印象を受けた。その背景には、彼自身のブラックカルチャー全般に対する危惧がある。オケレケ氏は、BBC 1Xtraが予算削減という名目のもとレジデントDJを解雇し、専門性の高い番組を減らすことによって「良質なブラックミュージックを紹介する機会が減っているのではないか」という不満があるようだ。昼間のBBC 1Xtra はHardwell、Calvin Harrisといったダンスミュージックばかりが流れているとも言及している。その一方で、BBC 1Xtraがブラックカルチャーにとって非常に重要な役割を果たしてきたと主張した。
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というのも、ブラックミュージックの紹介はもちろん、ブラックカルチャーが直面する社会問題について多くの議論を交すような重要な「場」であったからだ。歴史問題、教育問題、黒人コミュニティの現状などが議論されることも多く、そのような「場」を失うことに対する危惧が、オケレケ氏にあったことは間違いない。一ラジオ局という立場を超えた意味を持っているBBC 1Xtraだからこそ、彼はその変化(昨今の編成)に不満を覚え、敢えて痛烈に批判したというわけだ。ブラックカルチャーと密接に結びついているブラックミュージック。そしてその密接な結びつきを象徴する場所であったBBC 1Xtra内の良質な番組の減少に対する批判、すなわち「専門性の高い番組をきちんと提供できているのか。ブラックミュージック、ひいてはブラックカルチャーの発展の一翼を担えているのか」というケリー・オケレケの問いかけに対して、BBC 1Xtraマネージャーを務めるAustin Dabohが声明を出した。今回はその一部始終を紹介したい。グラストンベリーのピラミッドステージ(メインステージ)に出演したRudimentalAustin Daboh:
我々はラジオ局として、百万を超すリスナーがいるわけで、その中で批判的なフィードバックがあるのはいたって普通のこと。それは歓迎すべきことだし、リスナーがラジオ局を良くしようというような動きは我々にとっても大事なことだ。ただケリー・オケレケ氏が最近の記事で「BBC 1Xtra内でイギリスのブラックミュージックの割合が減っている」というようなことを言っていることに対しては、反論しなければならない。私は、現在イギリスのブラックミュージックは未だかつてない成功を収めていると信じている。Meridian Danの「German Whip」が全英シングルチャートで13位を記録したことに始まり、Rudimentalがグラストンベリーのピラミッドステージ(メインステージ)に出演したことにいたるまで、BBC 1Xtraによって見出され、大きくなっていったブラックミュージックの成功事例は挙げるとキリがない。BBC 1Xtraは、ブラックミュージック、とりわけイギリス発のブラックミュージックを支えてきて、他のどんなラジオ局でもここまで自国のアーティストをサポートしている局はないはずだ。プレイリストの少なくとも40%は英国内発のものであり、番組に関しては100%自国制作で、イギリスのブラックミュージックを広めることに全てを捧げていると言っても過言ではない。アメリカのアーティストをゲストに迎えたとしても、「イギリスのブラックミュージックとどこか繋がりはないか?」なんてことを常に考えているのだ。今夏、英国内のフェスに多く出演し話題を集めたKwabsのBBC 1XtraセッションBBC 1Xtraの幅広い、そして一貫したブラックミュージックへのサポートは音楽業界に大きな影響力があると言えるだろう。多くの黒人アーティストがメジャーレーベルと契約するに至っており、Stylo G、Fekky、Wretch 32、Kwabs、Mista Silvaなどが、BBC 1Xtraによって見出され、ときには誰にも注目されていない頃からサポートしてきたわけである。
イギリスのブラックミュージックは未だかつてない成功を収めている
我々はラジオ局として、百万を超すリスナーがいるわけで、その中で批判的なフィードバックがあるのはいたって普通のこと。それは歓迎すべきことだし、リスナーがラジオ局を良くしようというような動きは我々にとっても大事なことだ。ただケリー・オケレケ氏が最近の記事で「BBC 1Xtra内でイギリスのブラックミュージックの割合が減っている」というようなことを言っていることに対しては、反論しなければならない。私は、現在イギリスのブラックミュージックは未だかつてない成功を収めていると信じている。Meridian Danの「German Whip」が全英シングルチャートで13位を記録したことに始まり、Rudimentalがグラストンベリーのピラミッドステージ(メインステージ)に出演したことにいたるまで、BBC 1Xtraによって見出され、大きくなっていったブラックミュージックの成功事例は挙げるとキリがない。BBC 1Xtraは、ブラックミュージック、とりわけイギリス発のブラックミュージックを支えてきて、他のどんなラジオ局でもここまで自国のアーティストをサポートしている局はないはずだ。プレイリストの少なくとも40%は英国内発のものであり、番組に関しては100%自国制作で、イギリスのブラックミュージックを広めることに全てを捧げていると言っても過言ではない。アメリカのアーティストをゲストに迎えたとしても、「イギリスのブラックミュージックとどこか繋がりはないか?」なんてことを常に考えているのだ。
BBC 1Xtraの幅広い、そして一貫したブラックミュージックへのサポート
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若いオーディエンスの好みが変わっていくにつれて、ブラックミュージックのジャンルというものは常に進化していく。R&B、ヒップホップ、ハウス、ガラージといったように、それぞれ色んなところでピークを迎えては、また変化していく。ラジオ局としては、このような多種多様な多くのリスナーの需要に応えながらも、我々の本質を維持していかなければならないわけで、ブリクストンのレゲエ好きからグラスゴーのグライム好きといった幅広い層にアピールしていかなければならない。必ずしも全ての曲が全てのリスナーに受け入れられるとは言えないが、BBC 1Xtraは常に一定のクオリティを維持しながら、信頼できるブラックミュージックを提供し続けていると感じている。だからこそRoute 94やDJ Zincを流しながら、Krept & KonanやPopcaanというようなアーティストをヘビーローテーションのリストの中に置くことができるのだ。昨今多くの1Xtraユーザーは自分たちが夏の間にホリデーで楽しんだときに流れていたような音楽をラジオにリクエストする傾向がある。ソカやヒッフホップと同様に今年はハウスへの反応がいい。そういったことを反映していくのも我々の役目なのだ。また「セルアウト(商業的な成功を最優先に考えた楽曲制作や活動)」について、アンダーグラウンドでは度々議論の的になることがある。So Solid Crewが「21 Second」をリリースしたことは「セルアウト」だったのか否かなんてことは、何年も前にも議論したことを覚えている。そういう類いの議論は数年たってもほとんど何も変わっていない。(名前とかジャンルが変わっただけである)。いずれにしても、ブラックミュージックというものは、マイクに向かって唾を吐きかけているような若い黒人男性に限定すべきジャンルではないことは確かだ。そこは刺激的なアーティストの宝庫であり、より大きな市場が存在する。 KwabsやJacob Banksを純粋な黒人アーティストとして分類するべきなのか?Geroge the Poetは?Laura Mvulaは?Ill Bluは?とにかく言えることは、これらのアーティストは全てBBC 1Xtraで強くプッシュされているアーティストであるということだ。我々は依然として専門性の高い番組を提供しているイースト・ロンドンの現状を詩にしたGeorge the Poetの「My City」BBC 1Xtraは変化する経済の影響を受けるわけではないが、厳しい現実として、生き残るためには色んなものをカットしていかないといけない。つまり全てのアーティストを全て紹介している余裕はない。しかし新しい才能をどんどん紹介していかなければならないのだ。例を挙げるなら、「Seani B」、「Sian Anderson& A.Dot」というような番組でそういったことを行っている。レゲエ、ドラムンベース、アフロビート、ガラージなどそれぞれのジャンルにおいて、我々は依然として専門性の高い番組を提供しているはずだ。英国のアーティストのサポートもさることながら、我々は世界中のブラックミュージックにもスポットライトを当てている。今年1月には、ジャマイカにてDamian Marley、Ninjaman、Tarrus Rileyというようなアーティストの演奏やインタビューを収録し、数週間後には「Destination Africa」というアフリカの最もホットな音楽の祭典のためにナイジェリアに入り、今後の予定としては8月にドラムンベース、11月にヒップホップが大々的に特集される予定である。とにかくBBC 1Xtraは、ブラックミュージックに全てを賭けているといっても過言ではない。
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