ニューヨークの音楽家、グレン・ブランカ(Glenn Branca)が、咽喉癌が原因で5月13日に逝去した。享年69歳。彼の妻で、同じくミュージシャンのレッグ・ブロワー(Reg Bloor)が自身のFacebookで明らかにした。

§

昨夜、グレン・ブランカは眠っているあいだにこの世を去りました。咽頭癌でした。     

18年と半年、アイデアの源泉であり、創造力そのもの、としか表現しようのない彼とともに生き、活動できたことに感謝しています。彼が音楽で表現したのは、彼のアイディアの細片でしかありませんでした。音楽界における彼の影響は計り知れません。

荒々しい外見とは裏腹に、彼は思いやりに溢れた誠実な人間でした。私たちは、私たちだけの小さな世界で暮らしていました。心から彼を愛しています。今は悲しみに暮れるばかりです。

彼は精いっぱい生き、何も後悔していませんでした。支えれくれた全てのファン、ミュージシャンに感謝します。

彼の遺志を尊重し、葬儀は非公開にさせていただきます。

私は、スケジュール通りに活動します。

§

 1948年10月6日、ペンシルバニア州ハリスバーグ生まれ。1976年にニューヨークに移住し、THEORETICAL GIRLSを結成。CONTORTIONS、TEENAGE JEJUS AND THE JERKS、MARS、D.N.A.、リース・チャタム(Rhys Chatham)などとともに〈NO WAVE〉シーンを築き上げた。歴史的名盤『NO NEW YORK』には、直前で参加を断られたが、攻め続けるパンク精神をベースに、前衛的な不協和音の世界を探求。ノイズギター・ユニットのTHE STATICを経て、1980年にはファースト・ソロ『Lesson No. 1.』を99 Recordsより発表。「NO WAVEシーンに初めて生まれた現代音楽的なセンスの器楽曲(インストゥルメンタル・ミュージック)」と称され、グレン・ブランカは、ポストモダン・コンポーザーの草分け的存在となった。

『Lesson No. 1.for Electric Guitar』

更に彼は、レーベル〈NEUTRAL RECORDS〉を立ち上げ、記念すべきSONIC YOUTHのファーストアルバム『Sonic Youth』を1982年にリリース。また、〈ギター・オーケストラ〉を主宰し、アルバム『Symphony』シリーズを発表していく。その門下生には、SONIC YOUTHのサーストン・ムーア(Thurston Moore)、リー・ラナルド(Lee Ranaldo)、SWANSのマイケル・ギラ(Michael Gira)、HELMETのペイジ・ハミルトン(Page Hamilton)、そしてセイント・ヴィンセント(St. Vincent)ことアニー・エリン・クラーク(Annie Erin Clark)などがいる。

100本のギターによる『Symphony NO.13』

パンクを背景にしながら、不屈の実験的精神で〈最もラウドなミニマル・ミュージック〉を奏で続けたグレン・ブランカ。彼がいなかったら、その後のオルタネイティヴロック・シーンも存在しなかった、と断言できる。ご冥福を御祈り致します。