Ms. Lauryn Hill – Feeling Good

ローリン・ヒルが先週『Late Night with Jimmy Fallon』で魅せたNina Simone「Feeling Good」の熱唱は、ゴシップを振りまいただけの『Unplugged 2.0』以降のロクでもないキャリアとも言えないようなキャリアを帳消しにして余りあるパフォーマンスだった。当然ながら、The Fugees – 『Miseducation of Lauryn Hill』の時代に比べ、彼女の声から高音の張りは失われていたが、元来、高音がウリの彼女ではないので、それは大したマイナスではない。むしろ、若さ、勢い、賢さを押し売り、奇行に勤しみ、音楽を武器に大義名分を振りかざしてしていた一時期に比べ、彼女が音楽そのものになってしまったような印象さえ受ける。

ヘタなギターに気をとられ、持ち味が発揮されなかった迷盤『MTV Unplugged No. 2.0』以降、西太后と化したMs.Hill。The Fugeesが再結成したにも関わらず、彼女の奇行、遅刻癖が原因で、誰もが期待したThe Fugeesのニューアルバムはレコーディングすらされなかった。それでもファンは彼女を欲していたから、マネージメントはソロ・ツアー、イヴェントへブッキングするも、いざ蓋をあけてみれば、バカボンドばりの遅刻、キャンセルを連発。さすがにファンも怒りを露わにした。そして、トドメは脱税。言い訳は、アメリカの税制。悪いのは私じゃなくて社会、という、中途半端なインテリ社会不適応者の格言を、まんまと口にしてしまった。しかし、笑えるのが、シャバでは好き放題やりちらかしておいても、刑務所では模範囚。

刑務所内で何があったのかは定かではないが、出所以来、正気を取り戻したかのような彼女。今年の5月、イスラエルはテルアビブでのライブ・キャンセルで世間を騒がせた。またしてもご乱心かと思いきや、そこには、今までの彼女からは考えられないような全うな理由があった。テルアビブだけでなくウエスト・バンクのラマッラーでもライブを企画していたが、実現の目処がたたなかったため、テルアビブでのライブも致し方なくキャンセルしたらしい。彼女のブログによれば、テルアビブでライブをするならパレスチナでもライブをしないとフェアではない、とのこと。自らのスタンスへの誤解、パレスチナのファンに疎外感を与えてしまう懸念を踏まえ、彼女は決断したようだ。

服役前であれば、自らがアーティストであることを忘れて謎のロジックで社会に闘いを挑んでいた感のある彼女が、アーティストの立場から社会の宿痾に挑み始めたのであれば、ファンにとっては喜ばしい。

『Late Night with Jimmy Fallon』でのパフォーマンスは、Nina Simoneのカバーだけに、音楽に集中出来たのでは、と穿った見方を出来なくもないが、曲の後半に彼女が繰り広げたインプロビゼーションは、音楽を身に宿したイタコにしか見えない。元来、ズバ抜けた才能の持ち主であり、塀の中では模範囚になってしまうシャバくて小心者のローリン・ヒルが、本格的に音楽の世界に戻って来てくれたと信じ、今後の彼女の活動に期待したい。

まずは、今秋の来日、滞りなく実現させていただければ何よりだ。