NYヒップホップのニュースター RATKINGが完全フリーで新作を発表 (1)

ニューヨーク・ハーレム出身のMC Wiki、MC Hak、Sporting Lifeから成るヒップホップ・クルー、それがRATKING。2011年に結成し、「WU-TANG CLAN meets SUICIDE meets ANIMAL COLLECTIVE×パンク」なんて話題が話題を呼び、レーベル争奪戦の末にXL Recordingsが彼らをゲット。ADELE、VAMPIRE WEEKENDが所属するXL傘下のHot Charitymからリリースされたファースト・アルバム『SO IT GOES』は、各チャートを賑わしメディアも絶賛。更に今アルバム収録の「Canal」をBEASTIE BOYSのAD Rockがリミックスするなど、ニューヨーク・ヒップホップの伝統も継承。「新しいニューヨーク・ヒップホップのクラシックだ」なんて騒がれたりもしました。

そんな彼らがセカンド・アルバム『700 FILL』をいきなりドロップ。それもビットトレント経由、完全無料で発表されたのだからシーンは驚愕。「よくXLも了承したなぁ~」と思うくらい「今一番イケてる」クルーなわけですから、早速そこに何があったのかをインタビューです。音は違うけど、この軽いフットワーク、アーティスティックな雰囲気、更にカジュアルな佇まい…は、やはりBEASTIE BOYSを連想させます。(こちらの方がかなりマジメそうですが!)ニューヨークのストリートから生まれた新しいアイコンとなるか?注目です。

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 RATKINGの前作『SO IT GOES』は、昨年復活したDIPSETとG-UNITが持ち込んだニューヨーク・ヒップホップの決まり切った視点への挑戦だった。更に20代の若者らしい厚かましさも満ち溢れていた。HakとWiki、プロデューサーのSporting Lifeはニューヨーク育ち。都会に住む人々が、いつも多くの新しい何かを探していることを十分知っている。そして彼らは、新作『700 FILL』を通してそれを届けようとしている。このアルバムは本物のダウンジャケット(『700 FILL(POWER)』)よりかなり安く手に入る。(ノースフェイスを万引きしない限りは)なぜならこのアルバムは無料だ。ビットトレントからショート・フィルムとすべての曲が手に入るのだ。『SO IT GOES』ではKing Kruleをゲストに迎えていたが、『700 FILL』は更に豪華で、ニューヨークに結びついたアーティストが多数参加している。Remy Bank(WORLD’S FAIR)、Despot、Princess Nokia、Alex“Littlest Hustler” Goldberg、Slickyboy、そしてSporting Lifeの兄弟Teddy。間違いなくニューヨークはこの作品の中にある。

『700 FILL』は『SO IT GOES』の反響を越えられるだろうか?今作は明らかにストリートから生まれた作品だ。例えば脅迫とウィンターウェアをテーマにしたポッセ・カット「Steep Tech」や、喜びに満ちたサウンドをいじりまくった「Makeitwork」などがそうだ。WikiとHakのラップはこれまで以上にシャープで、前ほどワイルドさはない。またANIMAL COLLECTIVEミーツ・チップマンク・ソウルなインスト「Bethel」は音の中心が常にバーストしている。全体を通して『700 FILL』はよりタフで、コンクリート・ジャングルの残忍な冬向けにセットされているのだ。まもなく春だが、コレを聞くときはマーモットのダウンを用意するべき。

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 なぜアルバムをフリーにしたのですか?

 Wikiこのアルバムは12月に作ったんだ。6日で完成した。出来る限りたくさんの人に聴いてもらいたいと思っていたからね。ビットトレントは既ににあったし、XLにも話をしていた。彼らもクールだって言ってくれたよ。レーベルを通すとたくさんやらなくてはならないことがある。メディア向けに大きなアナウンスをするとかね。それに対してアルバムを出すだけならもっと簡単だと分かっていた。

6日間のレコーディングはどんな感じでしたか?

 Sporting Life『SO IT GOES』に比べてそんなに張りつめたものじゃなかった。既にたくさんのサンプルがあったからね。イメージもしっかりあった。やらなくてはならなかったことは、歌詞をきちんとあげて、アルバムというレベルに達する作品に仕上げることだけ。

Wiki前作は僕たちにとって最初のアルバムだったから張りつめていたんだと思う。でも今回の制作は楽しかった。あらゆるビートがそこにあって、構成し直して、友達もたくさんフィーチャーしてね。すべて良かった。たくさんのドープも、ニューヨークっぽさも入れて。まるでファミリー・イベントだったね。

このプロジェクトで実現出来なかったものはあります?

 Wikiううん。本当に思った以上のものが出来たからね。最初は7トラックでやってみるつもりだった。ところがレコーディングの最中に「これはもっと凄いのが出来るぞ。ヤバいって分かった」

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このアルバムは『SO IT GOES』よりニューヨークっぽくなっていると思いますか?

 Sporting Life俺はそう思わない。もう一つ別のレベルのものだ。比べることに必然性はないよ。このアルバムはもっと生々しく敏感なものだ。『SO IT GOES』はアーティスティックで堅実な感じだからね。

Wiki僕はこのアルバムはよりリアルなものだと思う。

Sporting Life: そうだ。もっとストリート・レベルのニューヨークだ。

Wiki何がニューヨークかって定義は一つじゃない。様々な側面がたくさんある。だから、これはニューヨークの別の表情なんだ。

Sporting Lifeうん、ドアから出て歩いてすぐのニューヨークだ。

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それは音としてどう表現したのですか?

 Wiki『SO IT GOES』は数年間作業していたから、あるゆるビートと影響を受けたエッセンスが入っていた。でもこのアルバムは現在の僕たちさ。今、僕たちは何に興味があるのか?それを探求して今のRATKINGになっているんだよ。

Sporting Life人は何かを一度作ったら、そこに居続けるものだと思い込む。それでちょっと違う方向に進むと「変わったね」と言ってくる人が出てくるよね。だけど、俺たちが『SO IT GOES』でやった考え方や曲と同様に、遥かにたくさんのスタイルがあると思う。持続しながらも新しい突破口を開き、何を使うかに関わらず俺たち自身のものにしていくこと…それが挑戦でありゴールだ。

Despotと一緒にやってどうでしたか?

 Wikiめちゃくちゃクールだった。キッズだった頃、Despotのショーに行ったんだけど、僕も「ラップをやらせてくれ」って頼んだんだ。彼は僕をステージに上げてくれた。それ以来、彼を知っているんだ。僕たちはRUN THE JEWELSのツアーで一緒になって、更に彼を知るようになった。Despotは同郷の友だ。一緒に作業をしたかったし、それがうまくいって嬉しいよ。

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 ツアーの間、RUN THE JEWELSとは会話をしました?

 Sporting Lifeツアー・バスの中ですごくたくさん話したよ。時には冗談を言い合ったりね。ファーガソン事件の評決が下った時は、まるでセント・ルイスにいるかのように喋りまくった。あいつらは本当にかっこよくて面白かった。

Wiki二人ともかなり特別な男だ。自分自身を強く持っているね。

Sporting Life: それとライブは最高だ。彼らのアルバムはライブから生まれていると思う。毎日、彼らの前にパフォーマンスすることは、強く賢いラッパーになるためのプレッシャーになった。素晴らしい経験だった。

『SO IT GOES』は多くの称賛を受けましたよね。それにより今作へのプレッシャーはありましたか?

 Wikiそれについての考えはあるけれど、同時に僕たちがこのアルバムをどう作り上げたかについてはかなり違う。そのまま受け止めて欲しいんだ。取るにせよ、捨てるにせよ、このアルバムは最高だ。人の価値観によって、それはより良くもなり、より悪くもなる。だけど僕とってそれは麻薬と同じ。それを吐き出す用意が出来ているんだ。

Sporting Life一日の終わりには、既に俺たちは新しいスタイルの研究をしている。『700 FILL』は『SO IT GOES』ではないんだ。

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でも褒められるのは嬉しいですよね?

 Wikiもちろん。でも僕はそこに座って「イェイ、これがベスト・アルバムだ」みたいなのは嫌だ。

Sporting Lifeたくさんの人がこの作品を楽しんでくれると思う。このアルバムにはラップにはなかったタイプの歌もある。ハイブリッドのトラックと新しいコンビネーションが存在しているんだ。俺にとって最も面白いのは、そのアイデアを他の人物がどう受け止め、何を考え、または俺たちがそれをどこから吸収したのかを探ったりしたりするところだ。

将来は誰とコラボレーションしたいですか?

 Sporting LifeバージニアのプロデューサーでD.R.A.M。あとは俺たちがロサンゼルスにいた時、OFWGKTAのEarl Sweatshirtと仲良くなるチャンスがあって、少しだけど曲も作ってレコーディングしたんだ。

Wikiそれは本当に最高のミックスだったよ。最高のビートが入っているんだ。もうすぐEarlがそれを送ってくれるから聴けると思うよ。僕は自然にコラボレーターを選びたい。出会った中で最高の人間を見つけ出していきたいんだ。D.R.A.Mとは本当に一緒に仕事をしたいね。Earlとももっと仕事をしてみたい。

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そのミックスを早く聞きたいです。

 Wikiクールな連中が回りにいて、日付が変わるのを忘れるくらい最高のレコーディングだった。ちゃんと仕切ってビートを作った感じじゃなくてね、ある日、たまたまそれを聴いて「おお、これはすごい」という感じのものだね。ハッピーな事故だったよ。