速くて短い音楽で生き残っている男 ケンジ・レイザー(RAZORS EDGE)

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速くて短い音楽で生き残っている男 ケンジ・レイザー(RAZORS EDGE)

日本が誇るスラッシュハードコアバンドRAZORS EDGEが結成から20年を迎えた。それを記念してベストアルバム『RAZOR MANIA』をリリース。更に『RAZORS EDGE 20th Anniversary “THRASH‘EM ALL!! Tour 2016”』も開催されている。永遠に飛び跳ね続けるKENJI RAZORSへのロングインタビュー。

日本が誇るスラッシュハードコアバンドRAZORS EDGEが結成から20年を迎えた。20年っていうと、アレですよ。江角マキコが29歳から49歳になり、木村太郎が58歳から78歳になり、チビノリダーに至っては24歳になっちゃう年月。江角がミニスカートで脚立をブイブイいわせていたときも、木村が安藤優子とブイブイいわせていたときも、チビノリダーが電車で男っていたときも、RAZORS EDGEはスラッシュで疾走し続けていた。それも1度も立ち止まることなく。フォレスト・ガンプより走っているのだ。

20周年を記念して、ベストアルバム『RAZOR MANIA』がリリースされた。CDの収録可能時間ギリギリまで詰め込んだ見事な40曲超え。iTunesにブチ込んだときの眺めは爽快である。

また、おめでとうツアーである『RAZORS EDGE 20th Anniversary “THRASH‘EM ALL!! Tour 2016”』も開催。あとはファイナルとなる地元大阪のファンダンゴ公演を残すのみとなったが、この公演を最後に、11年間ギターを務めてきたTAKAがRAZORS EDGEを離れることになった。しかしRAZORS EDGEは、これからも走りまくり、ジャンプしまくるのは確実。なぜなら彼らにはビックドリームがあるから。大きな目標が残っているのだ。そう、男子走り幅跳びの記録は、まだまだ更新されるのである。

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過去の栄光にすがる元バンドマンのVICE JAPAN編集長、川口賢太郎も同席し、フロントマンであるケンジ・レイザーズにインタビュー。

「川口さ、打ち上げ中に抜け出して、僕の自転車、電柱のてっぺんに引っ掛けたよな?」
「新品だったから悔しくて。でも面白かったろ?」

オッサンふたりは、久しぶりの再会を楽しんでいた。

§

RAZORS EDGE結成20周年おめでとうございます。

ありがとうございます。

早速ですけど、まずは、「速くて短い音楽をやって、生き残る方法」をお伺いしたいと考えております。

はい(笑)。速い音楽で生き残っていくのは、永遠のテーマですよね。ほとんどのバンドが段々遅くなって、そのまま終わってしまう。特にハードコアのバンドはねえ。ボストンのバンドなんて、ほとんどAC/DCみたいになって、お客さんが減って、悲しい解散を迎えるっていう歴史がありますし(笑)。でもスラッシュメタルとか、NAPALM DEATHを始めとするグラインドコア系バンドもそうなんですけど、彼らはテンポチェンジを取り入れて生き残っていますね。しかし、「俺たちは初心を忘れていない!」って、「ババババ!」って、一瞬でも入れる律儀なところがあるんですね。あそこにいろんな秘密が隠されていると思います。やっぱりグラインドコアでいうと、NAPALM DEATHが最前線で生き残っているというのはデカイですね。曲は一緒に聞こえちゃうんですけど、リスペクトしています。

ケンジさんはテンポチェンジを取り入れようと考えなかったのですか?

そうですね。でも初期に比べたら、僕らの中での遅いテンポとかは入れています。でも、やっぱり速い部分にも拘っているのは確かでして。最新作である『RAW CARD』も割とゴリゴリに速いですけど、そういうところで、これまで得た知識を出していくっていう。

知識というのは?

自分が今まで聴いてきた先代たちの速いバンド。それも速いけど何故か飽きない、格好良いバンドですね。いろんなバンドが変化しながら活動していますけど、カッコ良く変わったバンドは勉強になりますので、自分たちも試しながら、ちゃんと見習っていくっていう作業をしていますね(笑)。

具体的に見習っているバンドを教えていただけますか?

NAPALM DEATHはやっぱりすごいですよね。今でも15歳くらいの子が「やべえ!」っていって聴いちゃうんですもん。速いバンドの入り口になってるというか。そういう意味ではグラインドコア界のBEATLESみたいなもんだよなあ。

川口:SLAYERはどうなの?

SLAYERもアリだね。『SEASON IN THE ABYSS』で遅くなっても格好良かったもんね。珍しいバンドだよ。

川口:遅いっていっても、モッシュパート的な遅さと、曲の遅さがあるでしょ? その違いってなんなの?

モッシュパートは、暴れるためにわざとテンポをごっそり落とすやり方やんか。あれはダンスミュージックとしてアリになるんだよね。テンポが遅いから格好悪いんじゃなくて、そこで暴れろみたいな、ヒートアップするポイントになるというか。ニューヨーク系のバンドとかは、ダウンビートで暴れるじゃない。あれは、すごい発明だと思う。普通にテンポが落ちちゃうとMETALLICAの『ロード(LOAD)』みたいに、つまんない感じになっちゃう。物足りないんだよね。

それにしても20年って本当に長いですよね。

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結構、長かったですね。やっぱり。

21年前も速いのがお好きだったんですか?

はい(笑)。ライブもそういうのばかり行ってましたし、子供の頃からなぜか速い音楽が好きだったんですよね。

子供の頃の速い音楽ってなんですか?(笑)

小学校の演奏会とかに、合奏団さんとか来るじゃないですか。そこにめっちゃ速い木琴の人とかいるでしょ? 「トゥッツツツ、トゥッツツツ、トゥッツツツ、トゥルルルル」とか。ああいうイングヴェイ(・マルムスティーン:Yngwie Malmsteen)みたいなものなんですけど、あれに興奮してましたね。「なぜ、こんなに速いのが叩けるんだ?」って。その格好良さを小学生のときに見出してしまったから、こうなっちゃったと思ってます。普通の子は、笑っていただけでしたから。

初めてバンドを組んだときも速かったのですか?

友達のバンドにベースでちょっと入ったのが最初で、その頃はジャンクバンドみたいなのをやってました。COWSとかAMPHETAMINE REPTILE RECORDS周りの。

良いご趣味ですね!

当時1995、6年だったので、直撃でしたね。もちろんハードコアも好きでしたし、NIRVANAとかのグランジものも。でもやっぱりすぐにハードコアをやりたくなって、1年後にはRAZORS EDGEを始めました。まぁ、速い音楽の原点には、中学の時にお兄ちゃんがX好きって言う友達がいて、「これ速いだろ?」っていわれて。「うわ、やべえ!BON JOVIより速え!」みたいな。中学2、3年だったかな。ビックリしなかった? あの速さ。

川口:仙台のライブがYouTubeに上がってて、これがめちゃくちゃ格好いいんだよね。

最近ちょこちょこ昔のヤツが上がってるよね。文化祭なのかな? 体育館で演奏してるやつとかもテープだけ上がってる。音楽的にもハマったし、格好も。hideが好きだったんだけど、でも全くヴィジュアルには行かへんかったなあ。なんでだろ? GASTUNKは好きだったんだけど、その他ヴィジュアル系とかはあんまりだったなあ。

ハードコアはどこら辺のバンドを聴いていたんですか?

GASTUNKの前身バンドEXCUTEに興味を持ってその流れで原爆ドームがジャケのオムニバス『A FAREFUL TO ARMS』を買って聴いたらそっちの方が格好良かった。LIP CREAM、GAUZE…って一気に突き進みましたね。で、ちょっと後になって、BLACK FLAG、MINOR THREAT、BAD BRAINSとか。でもイギリスのハードコアは同時期に聴けていたんですよね。DISCHARGEとかGBHとか。タワーレコードとかにもあったので。

そうですよね。当時アメリカものは、ほとんどありませんでしたものね。あってもR.E.M.とか。「アメリカ、だせー!」って思ってましたもの。

だから、アメリカのハードコアに出会ったときは、本当に衝撃的でした。「こりゃイギリスよりもアメリカだな」と。そこに日本の好きなハードコアをミックスしたバンドをやりたいって思うようになりました。それがRAZORSなんです。

RAZORS EDGE結成当時の90年代中盤には、海外にも速いバンド多かったですよね。

いっぱいいましたね。当時は、ファストコア専門のSLAP A HAMっていうすごいレーベルもあったし、パワーバイオレンスっていわれたCAPITALIST CASUALTIESとかSPAZZとか、「ズカズカズカッ」って、グラインドとハードコアの間みたいなサウンドですね。でも僕的には、ビートは速いんですけど、疾走感っていうものはあんまり感じなかったので、そこはRAZORSとリンクはしなかったですね。日本のバンドの方が疾走感があるし、それに、ちょっと乗れないでしょ? 「ジャジャンジャ、ジャジャンジャ」ってアタマで乗るのが疾走感だと思うんですけど、「ダダダダダダダ」っていうのは点が多過ぎで、線になるみたいな感じですから。

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川口:疾走感の限界ってどこにあんの?

それは結構目指したよ(笑)。

川口:で、どこだったの?

わかんねえ、やっぱり(笑)。「ドッタン、ドコタン、ドッタン、ドコタン」をめちゃくちゃ速くするのも疾走感のマックスだと思うんだけど。でも、それってNOFXとかになるんだよね。

川口:ゴアグラインドとかあったのに、なんでそっちに行かなかったの?

行かない、行かない。あんな声出ないもん(笑)。それにゴポゴポいって、全曲一緒になるのがイヤだったからねえ。せっかくバックで幅広い音楽性を見せられるのに、ボーカルで全部一緒になるっていうのは、もったいないと思ってた。まぁ、むちゃくちゃ格好は良いけどね。1曲だけ聴くのが好き(笑)。

曲をつくる上で、大切にしているイメージとかはあるんですか?

なんですかねえ…遅くても格好良いリフで作られた曲が格好良いと思っているので。だからAC/DCとかも本当に好きなんですよ。あれをスラッシュハードコアにしたらRAZORSになる。RAZORSを遅くしたらAC/DCみたいな格好良さもあると思っています。ハードコアバンドが勿体無いのは、ビートとボーカルのシャウトに任せ過ぎているところ。もっとリフとかを大事にして欲しいんです。本当に格好良いハードコアバンドは、リフも格好良いし、その格好良いものが全て合わさったときに、オリジナリティのあるものが出来ると思っています。それをやっていたのがGAUZEとかLIP CREAMとかOUTOとか。やっぱりリフが良いんですよね。ちゃんと昔のロックを聴いてきたんだろうなっていうのが分かるからスゴイですね。速い音楽だけ聴いて、速い音楽を始めたら、絶対に良くならないですから。

「もうこのスタイル無理かも…」なんて考えたことは、ありませんでしたか?

ファーストアルバムを出したときに「もう書かれへんな」と思いましたよ。どのリフをつくっても1回出てきているリフになっちゃうので、「やばい、これは無理」って。でもRAMONESとかAC/DCって、自分たちで使ったリフをもう1回使っちゃうようなバンドだけど、結局格好良くなってるじゃないですか? そうなればいいんだと割り切ってからは、書けるようになりました。だから今はメンバーが大変ですよね。同じようなリフがあって、それも何曲かに使われてたりするので。よくわからなくなるっていわれています(笑)。

シーンの流れもありますよね。いろんなムーヴメントが現れては消えていく中で、RAZORS EDGEは、何をモチベーションに活動していたのですか?

自分の本当に納得する曲が書けてないから、また書いちゃうだけなんです。「こんなすごい曲を書けたからもういいや」ってなったら、落ち着いちゃうと思うんですけど…川口は、そういうのなかった?

川口:俺は死ぬまで無理だと思ってやってたから。

アハハハ!そっか(笑)。

川口:だから今は別にやらなくてもいい。死ぬまでに1曲書いたらいいんだもん。

俺もそれはあるな。本当はあと1曲でいいんだもんな(笑)。

じゃあ、完璧な曲ができたら…

いや、そのおかげで楽しくなっちゃう可能性もあるので、わからないですね(笑)。

さっきもちょっと話しましたけど、20年の間にいろんな流れがありました。例えば90年代中盤以降には、ミクスチャー〜ラップメタル系が流行って、ハードコアバンドも少なくなっていましたよね?

そうですね。

活動自体、やり難くはありませんでしたか?

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最初の頃は、好きなものをピュアにやってたので、あんまり感じませんでした。あっちはあっち、みたいな(笑)。結局僕らは、2000年代になってからPIZZA OF DEATHに入って、今もずーっといるんですけど、それまでAIR JAMやハイスタ(Hi-STANDARD)周辺の盛り上がりに関わるようなバンドも回りにいなかったし、まったく別の話だと思ってました。「あそこに行きたい」って考えたこともなかったし(笑)。活動してたら誘われちゃっただけなんで、あんまりやり難いということはなかったですね。

川口:ファンダンゴ* にいたからじゃないの?

かなあ? あそこいただけで楽しかったからね(笑)。

川口:当時のファンダンゴなんてねえ。

おかしなヤツしかいなかったからねえ(笑)。

川口:それこそ速いのから遅いのまでねえ。

当時、大阪にはPIZZA OF DEATH所属のバンドっていましたっけ?

TOASTとMOGA THE ¥5ですね。TOASTは、俺らの2、3年前にSLAP A HAM界隈のバンドと交流があって一緒にレコードを出したり。当時みんなの憧れでしたね。

RAZORS EDGEもPIZZA OF DEATHに所属していますから、やっぱりハイスタとかAIR JAMの凄さは肌で感じていましたか?

そうですね。もうしょうがないですよね。あれは通らざるを得ないほどの影響力。俺らでいう「ひらけ!ポンキッキ」みたいなものですから。絶対、音楽の原点。ポンキッキでビートルズを知ったんですから。

確かにそうですよね(笑)。

今もハードコアバンドで10歳くらい下の若い子と対バンとかするんですけど、その根元にはハイスタがドーンといるんですよね。ハイスタを知らないハードコア好きなんて見ないくらい。ハードコア好きなヤツは、絶対にあそこを通ってます。だから若い子は頭が柔らかいですよね、メロコアもハードコアも、皆同じように聞ける人が多いっていうか。

川口:それってイヤにはならないの?

そういうもんでしょ。イヤとか好きとかの話じゃない。俺たちのときは、先輩たちが思ってたかもしれないし。「今の子はボアダムスとハードコアを一緒に聴くんだよ? おかしくない?」っていわれていたかもしれない。

若いバンドはどうですか?

もちろん、カッコ良いバンドもいますけど、自分のような音楽の聴き方はあんまりしてないような気がしています。滲み出るものの深さを知れたら、もっと好きになれるかな? っていうのはあるんですけど。

川口:若いスラッシュはいるの?

スラッシュはいないね。本当に。スラッシュハードコアも、メタルもいないでしょう? 今は。

川口:そもそも何で「スラッシュ」を謳ったの?

何でだろうねえ(笑)。多分自分たちがハードコアを始めたとき、グラインドとかファストコアのバンドが友達に結構いたのよ。その中で「ハードコアを始めました」ってなると、ジャパニーズハードコアっていうニュアンスに近くなるけど、そうじゃないし、そんなに厳つくもない。もっとアメリカンなサウンドだからって「アメハやってます」ともいえないし。そんなときに自分の好きな日本のコンピで、『THRASH TIL DEATH』* ってあったでしょ? あれの「スラッシュ」の意味をちゃんと調べたら、そんなに重くないっつーか、疾走感みたいな感じだったから、「これだな。スラッシュハードコア」みたいな感じでフィットした。自分達を形容するにはちょうどいい言葉だと思ったんだよね。

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川口:いないよね、日本には。

あんまりいないよね。

RAZORS EDGEは、どのように結成されたのですか?

最初に組んだときのギターは、僕と同じくらい、OUTOとかS.O.BとかLIP CREAMとかGAUZEとかが大好きで。同じようにギターポップとかオルタナとかも聴いてるヤツだったので気も合うし、ふたりで軸になって始めました。ドラムはヒップホップとかBEASTIE BOYSが大好きで、ベースはパンクに詳しくないヤツを(笑)。

その頃もスラッシュをやってるようなバンドはいないですよね?

そうですね。それこそミクスチャー志向の強いハードコアバンドとか、グラインドとかが多かったですね。

当時のお客さんの反応はいかがでしたか? 「何コレ?」みたいな感じだったのかしら?

音楽的にめちゃくちゃ激しいものじゃないですし、皆がやり尽くしたところの隙間みたいな音楽ですし。軽くて速いハードコアみたいな。だからサウンド的には、そんなにドッキリはされませんでしたし、楽しんでくれている印象は結構ありましたね。周りのバンドでは、曲の同じところでジャンプをするとか、そういう演出があまりなかったので、その辺は最初から意識してやっていました。ライブの楽しさですね。それは今にも通じる部分なんですけど。なんていうか、僕の中ではちょっとスポーツ感覚というか、運動会感覚なんですよね。ライブで楽しんで暴れるための音楽でもあるし。自分たちがやるにしても、ただ演奏するだけではなく、ウワッ!て動いて転げ回ったりする楽しさですね。最初からエンジョイは大事にしてました。

90年代後半から00年代にかけては、アメリカでもムーブメントが細分化されていくじゃないですか? 例えばEMOとか。RAZORS EDGEの楽しさからいうと真逆ですよね? あのときは「クソEMO」とか思ってたんですか?

いや、それがすごくEMOにハマったんですよね(笑)。ENVYとかは真っ先にハマった。今回のベストアルバムにも入ってるんですけど、その辺のバンドに影響されて、めちゃくちゃエモい曲も取り入れちゃってましたね。でも、そういうので考えると、楽しくハッピーにやってたようで、ちょっとEMOっぽい時期もありました(笑)。

EMO期があったんですか!

ライブとかもシリアス風にして。っても、自分の心境なだけで、見てる人にはそんなに伝わってませんでしたが(笑)。

川口:EMOってるときのお客さんはどうだったの?

お客さんは普通に気にせず暴れてたね(笑)。客に背を向けてとか、そこまでのパフォーマンスはしてないから。

逆に、お客さんが暴れないライブとかもありますよね? 呼ばれたイベントとか。

そうですね。結成当時から、いろんなバンドに誘われて、色々なところで演奏してましたから。例えばメロディック系のバンドだったら、似たようなバンドが集まってシーンが出来るじゃないですか? うちはあんまりそういうのがなかったので、一匹狼的な感じでいろんなところでライブすることが多かったんです。ま、今も似たようなところはあるんですけど。だから昔から不思議な対バンがいっぱいありましたね。心斎橋のクアトロでバイトをしていたので、54-71と仲良くなったり、MO’SOME TONEBENDERと仲良くなったり。そういえばまだピザからアルバム出す前とかにMO’SOME TONEBENDERの企画で、Bloodthirsty Butchersと3マンを渋谷クアトロでやったんですよ。満員の中、お客は微動だにしなかった(笑)。

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(笑)。

何も求められていなかったと思いますよ。どんなにジャンプしたり、ウワー!ってやっても。

そういうときって、どんな気持ちでやってるんですか?「しめしめ」って感じなんですか?

まあ、それはそれで楽しむしかないっていう(笑)。そういうところは確実にあります。変態なところ。客がノッてなくても楽しめるっていう(笑)。

ちなみに54-71ではどうでしたか?

川口:僕は見てないから。お客さんを。

そうだよね、ずっと後ろ向いて弾いてたもんね(笑)。

結成当初は20年もやるとは…

もちろん思ってなかったですね。最初は「7インチとアルバム1枚出せたらいいね」ってギターのヤツと始めたので。そしたら6枚もアルバム出ました(笑)。

川口:え、まだ6枚しか出してないの(笑)。

いやいや、6枚もだよ(笑)。だいたい15〜20曲入ってるからね。ミニとかシングルとかも出してるから、多分120、130曲はつくってる。

曲は、全部頭の中に入ってるんですか?

2割、3割抜けてますけど。…曲自体思い出せへんやつもある(笑)。

ご自身のレーベルであるTHRASH ON LIFERECORDSも長いことやられていますよね。どのようにして始まったのですか?

もともと自分達の作品をリリースをするために始めました。友達のバンドも出しながらやってたら、レーベルになっちゃったっていう感じで。

THRASH ON LIFEという名前は?

それも適当です(笑)。今更ですが、ちょっとジャンルが限定されている感があるので、後悔してるんですけど。「スラッシュしか出されへんやんけ」って(笑)。

若いバンドとかをご覧になってスカウトするんですか?

そうですね。ライブを観て良かったらっていうのと、最初の勢いだけじゃないなっていうのがわかれば出したくなりますね。2作目、3作目もつくれちゃいそうなバンドっているんですよ。そういうバンドがいれば誘いますけど、今だけ!みたいなのは誘わないですね。

現在は何バンドくらい所属してるんですか?

昔から入れると結構いるんですけど、今ちゃんと出してるバンドでいうとDEEPSLAUTERとFRIDAYZとmanchester school≡とSTEP LIGHTLYですね。

川口:金は回ってるの?

全然大丈夫。赤にならないようにしてるから。

川口:それも20年の秘訣ですよ。

ハハハ(笑)!

川口:マジで。赤で20年は続かないですよ。

まぁ、そうだね。Tシャツをつくるにしても、音源をつくるにしても、絶対に赤にならないようなやり方をしてるから。

でも、20年前と比べると、CDの売上は全体的に落ちてきていますよね。

そこはプレス業者を考えたり、枚数を抑えたり。色々出来ますよ。

川口:でも出るときは出るじゃん。

まあね。でも安くて良いところを探す作業からじゃない? 探すとあるんだよ、これが。

やっぱりRAZORS EDGEは、「大阪の大先輩」みたいな感じになっているのですか?

いやあ、上には上がいるので(笑)。

現在はどういった活動をしているんですか? やはりライブ三昧ですか?

「STORMY DUDES FESTA」っていうサーキットイベントを始めたんです。今年で4回目なんですけど、集客もどんどん上がって、ソールドアウトするようになりました。コンセプトは、「全国から僕達に近いフットワークのノリを持った結構うるさいバンドを集めてやる」ですね。

そういうセンスを持った若いバンドもいるんですか?

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いますね。東京だとTHRHとか…。中堅だと僕のレーベルから出てるDEEPSLAUTERは、すごく面白いことをやってますね。でも全体的に見ると、さらにパンクに目が向かない時代になってるかもしれません。

どういうことですか?

うるさいバンドっていってもマキシマム ザ ホルモンとかSiMとか、大きなフェスに出てるバンドがメインになってますよね。僕たちが主戦場とするライブハウスを目指しているバンドがすごく少ないのが実情だと思います。僕達みたいなバンドでもフェスには出るので、そういったところで少しは引き抜けているとは思うんですけど。フェスは大事だと思っています。やっぱり出て、皆に知ってもらわないと、ライブハウスに流れて来ないので。出るのはなかなか難しいですけど、ちゃんと攻めておきたいですね。

FUJI ROCKに出たんでしたっけ?

はい。僕たちの界隈でFUJI ROCKに出たのはRAZORS EDGEだけです(笑)。目指してましたから。

目指してたんですか?

はい。ちゃんと出てやろう!って。もっと演奏もうまくなろう!って。大きな会場だから、演奏がしっかりしていないと、曲自体がわからなくなってしまいますからね。でも「出よう!」って決めてから7年かかりました(笑)。RED MARQUEEの朝イチでした。

川口:でも出ようと思えば出られるだけのコネクションあったよね?

いやいや、そこからつくったんだよ(笑)。

個人的にアメリカのハードコアがなぜ好きかというと、勘違いとか、若気の至りからスタートしている、あの「なんでもやっちゃえ」感がたまらないんです。

わかります。あれは根強いですね。僕もいまだにあの感じは憧れますね。階段から転げ落ちてるような疾走感というか、上手くできないけど、やろうとしてるあの感じ。4人ともバラバラなんだけど、なぜかアタマだけ合ってるみたいな。

はい(笑)。でも自分なりの美学っていうか、プライドはきちんと固まってる。

あの我の強さの集まりでベクトルが違うという…あれはすごいですよね。あれこそが芸術だと思います。4人がそのときにしか出せなかったグルーヴとか、楽曲とか。

あの雰囲気をRAZORS EDGEにも強く感じます。

ありがとうございます(笑)。本当にそうですね。勘違いはいまだにしてますし。

川口:どんな勘違いしてるの?

自分で「これやろ!格好良いやろ!」って思うことがあっても、それが世の中とめちゃくちゃズレてるんだよね。使いたいビートだったり、メロディだったりとかさ。でも俺は格好良いと思ってるからやってる(笑)。

自分たちで追求していくと、どんどん新しい勘違いが生まれていく。そこが面白いし、聴いている方もたまらないんですよね。

ウケてようが、ウケてなかろうが、関係ないみたいな世界ですよね。

川口:何か別の部分があると思うんですよ。エンターテイメント、音楽を追求するっていうのは。必ずしも自分たちの中で勝手に追求している音楽が、エンターテイメント性の低さに繋がるわけではないと思う。だってRAZORS EDGEはとにかく楽しいし。あとさ、今ケンジみたいな子がいたら、絶対にヒップホップやってるんだろうね。

あー、そうかな?

川口:同じような感性で、今の時代にケンジがRAZORS EDGEを始めたくらいの歳だったら。

そうだね。そうかもしれないね。もしくは俳優をやってたり。違うことやってるかもね。

川口:スケボーかもしれないし。

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僕は、OUTOとかLIP CREAMとかGAUZEとかを、多感な時期に聴いて、本当に格好良いと思ったからここにいる。それに音楽だけじゃなくて、部活の特訓みたいなものに近いのもあるよね。同じ練習をして、それが出来るようになったときに楽しいと思っちゃうような。

川口:ファンダンゴの店長はまだ加藤さんなの?

いるいる。あの人現役でバリバリ脱いでる(笑)。

あの人、脱ぐんですか? あんないい人なのに。

川口:別に脱ぐからって悪い人じゃない(笑)。

相変わらずの飲み方してるよ。昔よりは量が減ったみたいだけどね。まだまだスパークしてるよ。

川口:20周年記念ツアーやってるんでしょ。東京はどこでやったの?

シェルターだよ。

川口:もっと人来るでしょ?

いやいや、いち時期より減ったよ。なんだかんだELLEGARDENみたいな、皆の入り口になるような巨大バンドが止まると全体的に減ってくる。やっぱりそうなんですよ。ハイスタが出た時は、僕らのとこにもお客さんがわさわさ入ってきたんですよね。俺は、こっちよりこっちの方が好きとか、もっと好きなの見つけちゃったとか、バーッと広がるんですけど、そこが止まると結構入ってこない。僕たちもBEAT CRUSADERSと仲良かったら入ってきたりとか、(横山)健さんとやったら入ってきたりとかありましたから。ただ、(マキシマム ザ )ホルモンが不思議なバンドで、ホルモンからは広がらないんだよね。なかなか流れてこない。ホルモンじゃないとダメくらいのエンターテイメント性があって、楽曲も物凄い。メジャーであんなに厳つい音を出してお客さんを集めてるバンドもいないと思うんだけど。

川口:それこそXくらいだよね。

そうだね。でも本当にホルモンは日本史に残るバンドだと思うよ。やる気になれば世界中に行ける。あんまり興味ないみたいですけどね。

RAZORS EDGEは、海外でやったことはあるんですか?

いや、ないんです。でもマレーシアに来いって今いわれています。

川口:それ大丈夫? 昔、韓国にすごいフェスだからって行ったら、ソウルから2、3時間かけて山奥まで連れてかれて、お客さんひとりのことあったぞ。フェスだよ。

やべえ(笑)。マレーシアのそれはフェスじゃないんですけど、この間日本に来てたヤツが向こうでプロモーターみたいなことをやってて、RAZORS EDGEだったらお客来るからって。結構向こうからFacebookとかで来るのよ。東南アジアって、今音楽が熱いでしょ。日本でゴチャゴチャやるのはチョイチョイにして、自分のイベントとかをたまにやって、出来るだけ海外に行こうかな? って。

川口:格好良いねえ!!…ってか今更(笑)。

ハハハハ(笑)!本当に今更だよね。

川口:体力的にどうなのよ? 疲れるじゃん。

日本で車移動してる方が疲れるよ(笑)。

川口:しかし、ケンジは相変わらずだね。だせースラッシュなのかな? と思ってたけどイケてたし、チャリンコも誰よりも早く乗ってたし、実は敏感なんですよ。でもね、最近わかったんだけど、早過ぎるとやっぱズレなんだよ(笑)。

1周回るタイミングの早さとかもね。リバイバルに早い人とかいるじゃん。俺もそういうところあるけどね(笑)。

川口:そこですよ。だから20年続いてるんですよ。

コツは皆とタイミングを全部ズラしていくっていう。

ケンジさんは、計算してるんですよね?

川口:絶対計算してない(笑)。ズラしていくんじゃなくて、ズレてるだけ(笑)。

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これが不思議だけど、ことごとくズレていくっていう(笑)。本当に早い人はいますからね。付いてけない人、いっぱい。羨ましい人、いっぱいいるもんね。人が付いていける早さっていうのが大事なんだよね。

川口:絶妙なところなんだよな。

理想のバンドっています?

やっぱりAC/DCですかね。あとはRAMONES、MOTÖRHEAD。

川口:レミーも死んじゃったね。

本当だよね。あと意外とROLLING STONESも好きなんですよね。無節操な音楽の手の伸ばし方するでしょ? あれは普通やっちゃダメなんですけど、それなりにどれも聴けちゃうっていう。不思議なバンドですよね。黒いことをやってても、全然黒くない(笑)。『ブラック&ブルー(BLACK & BLUE)』とかね。めちゃ格好良いじゃないですか。

では、RAZORS EDGEの目標みたいなものってあります?

目標はやっぱり海外ですかね(笑)。

川口:やっぱり格好良い(笑)。

僕はJELLYROLL ROCKHEADSっていう、RAZORSよりもファストで短いバンドを、今のベースとやってたんですけど、そのときにアメリカツアーしてるんです。でもRAZORSでアメリカに行ってみたい。でもコネクションがない。VICEでなんとかしてよ。

川口:すごいね。40歳過ぎて、20歳のバンドマンが話すようなことを話せるって。どうやったら海外行けるんだろう? って(笑)。

夢ですから(笑)。あとさ、この前TRASH TALK来日したでしょ? MEANINGの隼人が直接やり取りして呼んでるのよ。別にエージェンシーみたいのをつけないでね。だから、そういうのも出来るなあと思って。でもさ、隼人は英語が喋れるからスムーズにできたと思うんだけど。僕も直接話したりすることができてきたら…夢だね(笑)。

川口:40過ぎですよ。

昔に比べたら、やろうと思ってるの。

川口:40過ぎですよ、アナタ。でもさ、やっぱ本当に20年はすごいと思うよ。20年やってたわけだから。マラソン20年続けてるようなものじゃん。

そうだね。まだ監督になる気はせえへんね。俺がやってるスタンスとしては、ヤクルトの古田的な。選手兼監督で自分のレーベルから出すバンドのプロデュースしたりとかね。

川口:でもさ、20年続けたというより、20年変われなかっただけじゃないの(笑)?

まあ、そうなんだけどね! OFF!とかもそうじゃん。またやりだしたと思ったら、リフが渋すぎるハードコアパンクをやり出すとか。すごいでしょ。でもお客さんはキース・モリス(KIETH MORRIS)が今もシャウトしてるって喜ぶのよね。

川口:糖尿病が大変で注射打たなきゃいけないし。

ああいうのはすごいと思うよ。なりたかないけど。

川口:星ですよ。アナタ、中年の星ですよ。こんなヤツだと思わなかった。諦めて楽しく続けてるのかと思ったら、初期衝動のままやってたとは(笑)。

活動すること自体マンネリしてるじゃん。作品出してツアーして、どんだけお客さん集めてとか、こういうフェスに出るとか。皆が同じことしかしてなくて。最近、正直面白くなくなってきてさ。なんかなー? とか思ってるときに、マレーシアの話を聞かされたでしょ。ワクワクしましたね!あと結構南米とかからもオファー来てるのよ(笑)。

川口:それだったら応援する。

マジで南米怖えじゃん。

川口:じゃあさ、ケンジ、レポーターになってくれよ。一緒に行ってドキュメント映像をつくる。南米のデスメタルとかブラックメタルとか取材しよう。

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怖いけど、楽しそうだな。

川口:協力するよ。マメに連絡する。

電話番号変わってないの?

川口:変わってる。

ほら。連絡したんだよ。繋がらなかった。でも、LINEやってるでしょ? LINEが一番良くない? LINEって革命的だよね。パソコンにも入るしね。会社のパソコンにライン入れといて、仕事のフリしてバンバン出来ますからね。革命的なツールやね。

川口:ポケモンはやってないの?

ポケモンやらない(笑)。

川口:なんで?

やらないよー。そんな時間あるか。

川口:電話置いといて、来たらピッて。

それが楽しいのか?

川口:LINEもそうだけど、iPhoneね。使いこなさないとダメだな。使いこなすと便利だよね。

便利やね、本当に。

本日はありがとうございました。

§

RAZORS EDGE 20th Anniversary “THRASH‘EM ALL!! Tour 2016”
ファイナル:12/17(土)大阪ファンダンゴ(ワンマン)
詳細はこちらまで http://razorsedgejapan.com/