レコード屋の言葉:第5回 〈音のヨーロー堂〉

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レコード屋の言葉:第5回 〈音のヨーロー堂〉

「ご高齢になって、あまり外出することがなくなっていた方々が、演歌男子によって、みんな乙女に戻ったんです。“ 私も化粧して、着飾って、アイドルを応援していいんだ。もう1回、青春しよう!”って」

「ダウンロードじゃわからない」「ストリーミングじゃわからない」はてさて、なにがわからないのだろうか? それは人からの言葉。RCサクセションもBLACK FLAGもジョン・コルトレーンもBUTTHOLE SURFERSもツェッペリンもMAYHEMもN.W.Aも、みんな誰かの口から聞いた。音楽が好みだったのか、そうじゃなかったのかは置いといて、先輩だったり、クラスのヤツ、好きな異性、おしゃれな友達の言葉があったからこそ、その音楽に出会えた。辿り着けた。周りの大好きなみんなからの言葉だ。

そしてレコード屋も。カウンター越に矢の如く放たれる聞きなれないアーティト名、バンド名、ジャンル名。矢が心のど真ん中に刺さるたび、音楽がどんどん好きになった。ずっとカウンター前を陣取っていた。今考えれば、大迷惑だったろうに。本当にすいません。そう、ダウンロードでもストリーミングでも、レコ屋さんの言葉は聞けやしない。そんなプレイリスト見たことない。だからもう1回、言葉を聞きにいこう。今度は大人の話も。

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第5回は、大正元年創業、浅草にある〈音のヨーロー堂〉。雷門から歩いてスグ。タクシーよりも多い客待ちの人力車に乗る必要もなく、亀十のどら焼きも、花月堂の元祖ジャンボめろんぱんも食べ切らないうちに到着する演歌、歌謡曲の専門店だ。

レコード屋とはいっても、レコードは少々。店内には新品のCDとカセットテープが溢れている。CD不況やら、レコード&カセットテープ・ブームやらはまったく関係なく、最新作から、スタンダードまで、ぎっちりと陳列されたMany Many ジャパニーズ・ソウル。そんな魂の歌を求めて、お客さまもひっきりなしに来店する。更に2階には、インストア・ライブ専門スペースの〈浅草演歌定席〉がドドーンと。週3〜4回は、ここで憧れのスターたちが、魅惑のこぶしを披露している。その歌声は、五重塔、アサヒビール金のうんこ、そしてスカイツリーの遥か上まで響いているのだ。

4代目店主の松永好司氏に話を伺った。

お2階のショーを拝見させていただきました。すごい熱気でした。

ありがとうございます。

お客さんもたくさんいらっしゃって、本当にビックリしたんですけど、いつもあんなに満員なのですか?

そうですね。それに今日は、岩出和也さんの誕生日キャンペーンでしたから、みなさん、プレゼントを持参されて来られていましたよ。お祝いです(笑)。

〈浅草演歌定席〉のステージを観覧するには、どうしたらいいのですか?

いわゆるショッピングセンターとか、モールなどのフリーライブと違いまして、出演する歌手のCDをウチでご購入されたお客さまに観覧券を配っております。

2日に1回くらいのペースで、イベントをやられています。本当にすごいペースですが、ブッキングはどのようにされているんですか? 誰でもイベントを開催できるのですか?

いえ、基本的にはできません。ご依頼もありますが、ほとんどお断りしております。おこがましい言い方になりますが、歌手のかたがたは、この〈浅草演歌定席〉を満員にすることによって、ステータスを高めていくんです。おかげさまで、そういう場になっております。

演歌歌手なら誰でも〈浅草演歌定席〉のステージに立てるわけじゃない、ロックでいうなら、「新宿ロフトのステージに立てた!」みたいな感じなのですね。

いろんなイベントをやっていた時期もあるのですが、やはりお客さんを集めるというクオリティーにまで届いていないかたが多かったんです。

それは、歌手としてのクオリティーですか?

はい。歌手としての力量ですね。目の肥えたお客さまが多いですから、それがないと、いつまで経っても動員は増えません。ですから現在は、私どもからの提案か、レコードメーカーさんからのオファーでブッキングをしています。

でもクオリティーの低い歌手のオファーもあるのではありませんか?

いえ、それはまったくありません。メーカーさんが責任を持ってリリースしている楽曲ですからね。それにウチでCDを販売していない歌手は出演されませんし。

ああ、なるほど。ヨーロー堂さんも自信を持ってオススメしている歌手なんですね。

ただ、動員が少ないからダメってわけでもありません。例外もありまして、最初は動員力がなかったとしても、クオリティーの高い歌手だったら、何度もステージに立っていただきます。すると、必ずお客さんは増えていきますし、最終的には超満員になる。そのお手本が、山内惠介君ですね。

ああ、紅白にも出てらっしゃる。

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はい。当初は本当にお客さんが集まりませんでした。

何年くらい前の話ですか?

15年くらい前でしょうか。山内君がデビューして2~3年位経った頃ですね。もちろんデビューしたての歌手は、みんな人気がありません。最初から人気があったのは、氷川きよし君ぐらいですね。

ビートたけしが名付け親なんて、騒がれていましたものね。

彼も何回かウチのステージに立ってくれたんですが、本当にすごかったですよ。握手会もやったんですが、200メートルくらい行列ができていましたからね。歌わずに握手会のみですから、とんでもなかったです(笑)。それに比べて、山内君は1歩1歩積み重ねて現在に至っているんです。3年前に紅白歌合戦の出場が決まったときは、私も本当に嬉しかったですし、号泣もしました。ただのレコード屋と歌手という関係ですが、一緒に演歌道を歩んで来たという事実は誇りに思っていますし、こういったとき瞬間こそが、レコード屋の醍醐味だと感じています。

醍醐味ですか?

はい。応援してきた歌手が晴れの舞台に立つ。成功する。スターになる。それに、うちの店の活動で、こんなにスゴイことが可能になるという事実も確認できましたから。こんなに嬉しいことはありません。

ちょっといやらしいお金の話も訊きたいのですが、イベントではグッズなどの物販もやられていますよね?

はい。

その商品は、1階の店舗にあるヨーロー堂さんの在庫なのですか?

いえ、あれは歌手の事務所が直接持ってきている商品です。

では、その売上の何パーセントかをいただくと?

いえいえ、いただいておりません。

え? そうなんですか? だいたいは、物販の場所代みたいなものが発生しますよね。

ウチは、店舗でイベントに参加できるCDを売っていますから、そこはいただいておりません。

では、イベントの会場使用料は?

そこもいただいておりません。

ええっ!

私は四代目になるのですが、これはずっと受け継がれている信念みたいなものでして、「ウチはレコード屋。CD屋。それ以外では儲けるな」といわれ続けてきたんです。

めちゃくちゃ、かっこいい!

それにイベントはキャンペーンなんです。ですから、歌手のかたがたにも出演料は発生しません。販売促進のために、本人が来ちゃうようなものなんです。紅白にも出るような天童よしみさん、水森かおりさん、そして山内君であっても、それは同じなんですね。メーカーがCDを卸す。ヨーロー堂はCDを売る。歌手はそこで歌ってくれる。それがキャンペーンというものなんです。

ちなみに、店内にはたくさんの販促用パネルや、店頭ディスプレイもありますが、ここにもお金は発生していないのですか?

え? これって発生するものなのですか?

大型店だと、看板の設置やディスプレイの場所代として、お金が請求される場合があります。

本当ですか! そのからくりはまったく知りませんでした! どうりでウチは儲からないハズだ(笑)。自分でいうのもなんですけど、日本でも5本の指に入るくらい、CDが売れている店だと自負しているんです。それなのにまったく蔵が建たない。おかしいなぁと考えていたんですよ(笑)。

「日本でも5本の指」と、おっしゃいましたが、どれくらい売れているんですか?

そうですね、多い歌手ですと1アーティストさんで3000枚くらいでしょうか。

ええ! ヨーロー堂さんだけで?

はい。コンスタントにそれくらい売るかたは、いらっしゃいますよ。

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CDを3000枚プレスするだけでも大変なご時世なのに!

でもそれだけ売れても儲からない理由が、今日わかりました。ショックだなぁ(笑)。

お店の歴史について伺いたいのですが、創業が大正元年。ですから、今年で106年目ですか?

そうなりますね。でも初めは、錦糸町の近くにある江東橋でスタートしたんです。戦後になってから、こちらに移りました。そもそもは時計屋で、ゼンマイの知識があったので、蓄音機も取り扱っていたんです。その流れでレコードも始めたようです

最初から、現在のような演歌を中心とした商品構成だったのですか?

いえいえ、まったく違いました。私が店に入ったのは30年くらい前なんですけど、その頃は、どこにでもあるオールジャンルの街の新品レコード屋だったんです。

演歌も洋楽も歌謡曲もジャズもあるような?

はい。アニメもクラシックもレーザーディスクも扱っていました。でも、ちょうどバブルの時期だったんですけど、そのときが1番ヤバかったですね。潰れる寸前、売上も今の半分くらい。

え? バブル崩壊前ですよね?

そうなんですけど、外資系ショップや大型チェーン店が出始めていたんです。向こうにはたくさんの商品がありましたから、ウチに来る理由がなくなってしまったんです。

街のレコード屋さんにとっては、厳しい時代だったと。

はい。売上はどんどん下がるし、在庫もどんどん増える。このままではマズイと思いまして、私が店長になった時点で、まずは日本の音楽だけを扱うようにしたんです。その後、いわゆるJ-POPなどのヒット物もやめまして、演歌中心の店にしました。

ということは、現在の商品構成は、四代目の松永さんがスタートさせたんですか?

はい、そうです。

すいません、先代さんが演歌好きだったから、そのまま継いだと勝手に考えていました。ちなみにヒット物を辞めた理由はなんだったのですか?

ヒット物が在庫として残ったときの負担ですね。正直、これが相当厳しくなっていたんです。例えばヒット物を10枚仕入れて7枚売れました。でも2、3枚残っていたら、それでは利益が出ません。この状況が10倍になったらどうなるのか? たくさん仕入れて、たくさん売るのか? でもそれができるのか? ではやめるか? と考えたときに、〈やめる〉を選びました。すごく大きな決断でしたし、不安もありましたけど、これが転機になりましたね。

そのような状況のなかで演歌を選んだのはなぜですか? 演歌に勝機を感じていたのですか?

それはありました。まず、浅草という土地柄を生かすべきだと考えたんです。歴史的にも演歌や日本の文化が根付いた街ですから、その部分を特化しようと。それが第1段階です。

おお、〈ヨーロー堂・改造計画〉ですね!

そして第2段階ですけど、CD自体はどこかで確実に売れている時代でしたから、それがウチで売れるようになればいいだけの話だと気付いたんですね。では、どうすれば、ウチでそのCDを買ってくれるのか? CDに付加価値をつければいいと思ったんです。CDに特典をつけるイメージですね。

ああ、現在のアイドルCDにも通じるような。

ただ、演歌の場合、キャンペーンがあったんです。店頭で歌手が歌っているらしいと。当時、上の階は倉庫だったんですが、だったら、そこで歌ってもらえばいいんじゃないかと。演歌ならではの特典ですよね。

ああ、そこからスタートしたんですね!

ただその後、同じような展開をするお店も増えてきたんです。そこで第3段階です。

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お願いします!

今度は、〈ヨーロー堂〉自体に付加価値が必要だと考えました。他でも買えるのに、他でもキャンペーンが観られるのに、ウチで買ってもらえるような付加価値…ブランド力が必要だと思ったんですね。

なるほど。では、どのようにブランディングしたのですか?

メディアを使いました。

おおー!

まず、演歌専門雑誌からなんですけど、「面白いことをやっているんで、遊びに来てください」と取材の依頼をしたんです。次に、それを見たレコードメーカーさんが、キャンペーンではなく、マスコミ用のイベントを上でやるようになります。

フムフム。

そこには雑誌、新聞なども入ります。そしてテレビも入ってくるようになります。特にテレビは、店主が対応をしなくてはなりませんから、私も喋る練習をしました。すごく真実味に欠けるとお思いでしょうが、本当は私、引っ込み思案なんですよ(笑)。

はい、真実味に欠けます(笑)。

ただ、ヨーロー堂の付加価値に〈名物店長〉とか〈名物店員〉というのも必要だったんです。ですから、私もどんどん前に出まして、テレビや雑誌の仕事もするようになったんですね。実は今、それが昂じてCMだけで3社に出ております(笑)。

すごい! 松永さんがスターになっちゃった!!

更に、店のCD袋とかグッズとか、人々の目につくようなものにもこだわりました。何種類もつくったり、デザインにもこだわったり。とにかくヨーロー堂という存在を広めたかったですし、それで来てくれて、「面白い」とか「なにかが起こっている」ということを知って欲しかったんですね。

その戦略が見事に成功したと!

いえ、まだまだです(笑)。常に進化していないと。新しい展開はいつも考えていますよ。

世の中は、CDがまったく売れなくなり、代わりにレコードブーム、カセットブームなんて状況にもなっていますが、ヨーロー堂さんはいかがですか? やっぱりCDはちょっと落ちてきていますか?

いえ、これが本当に関係なくて、私が店長になってから、20年くらい経ちますが、売上が下がったことは、ほぼありません。おかげさまで、ずっと上がっております。

本当にすごい。そんな話、聞いたことがありません。

それにですね、今もCDは売れていますよ。売れていなかったら、レコードメーカーは潰れているハズです。確かにレコードブームとはいっても、1000枚、2000枚のプレスじゃないですか。それを全国のレコード屋さんで分け合ったら、いくらにもなりません。でもCDが売れなくなったとはいっても、そのなかでジャンルを絞り、日本一そのジャンルが売れる店づくりをすればいいわけです。アイドルのCDだったら、ウチなんかよりもたくさんの枚数を売っているお店もあるでしょうし。それがウチでは演歌、歌謡曲なんですね。

でも、それだけ実績があるのなら、各メーカーさんの営業プッシュもすごいんじゃないですか? 「これも置いてください、あれも置いてください」なんて。

そうですね。ありがたいことに。

でも、そのなかには、〈いいもの〉と〈悪いもの〉がありますよね? 「これは良くない。置けないなぁ」みたいな。

いや、ありませんよ。悪いCDなんて、まったくありません。

え、どういうことですか? 売れないCDはないってことですか?

その通りです。レコードメーカーさんは、悪いものを薦めてきません。売れるCDを持ってきてくれます。私に仕事を1から教えてくれたのは、以前に勤めていた番頭さんなのですが、その番頭さんからも「レコードメーカーのセールスマンを大事にしないとダメだよ」といわれていました。「レコードメーカーのセールスマンが店に利益を持ってきてくれるんだから」って。売れないCDっていうのは、その店で売れないだけであって、違う店だったら売れるんですよ。

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メーカーさんとの深い信頼関係も築いてらっしゃるんですね。

お客さんと同じように、メーカーのセールスマンを大切にしないと、絶対に店は成り立ちません。できる限りの協力をする。そして、どこにも負けない発注をする。そうすれば、その人の成績にもなりますしね。店とメーカーさん、歌手がいっしょになって築いていけるのが演歌なんです。

今日のイベントでは、大阪から来たというお客さまもいらっしゃいました。みなさん遠方からも来られるお客さまも多いんですか?

そうですね。ブラジルとか。

ブラジル!!

あとはアルゼンチンとか。

マジですか! 演歌界、なにが起こっているんですか!?

あっちのほうで、めちゃくちゃ演歌って流行っているんですよ。日系ブラジル人のみなさんが中心なんですけど、ブラジルにも〈日本アマチュア歌謡連盟〉というカラオケの支部があるんです。その人たちが日本でコンテストを受けて、デビューするパターンも珍しくありません。日本で活動するブラジルやアルゼンチン出身の演歌歌手も多いですよ。ただ、向こうでカラオケ文化は根付いていても、やはり現地ではCDが手に入らないので、ウチに来て購入してくれるんです。

やはり演歌って、カラオケとは切っても切れない関係なのですか?

そうですね。まず、演歌ファンはふた通りに分けられます。ひとつは、歌手のファンのパターンです。その演歌歌手が好きだから、そのCDを購入する。今日みたいなキャンペーンに来られるお客さんですよね。そして、もうひとつがカラオケを歌うファンです。そういったかたは、誰のファンでもないのですが、自分が歌うCDを買うんです。カラオケ大会に出て、良い成績を収めるためのCDですね。ですからCDには、必ずカラオケ・バージョンが収録されているんです。

そのカラオケ大会っていうのは、頻繁に開催されているんですか?

はい。町での予選大会から、県大会があって、全国大会があって、国際大会まであるんです。

スポーツみたいですね!

はい、仕組みはスポーツと変わりませんよ。そういった大会とレコードメーカーさんが提携して、演歌界、歌謡界を盛り上げているんです。〈日本アマチュア歌謡連盟〉は、カラオケ雑誌も出しているんですけど、そのなかには楽譜も載っていますし、キーも載っているんです。それを見れば「ああ、これだったら私も歌える。じゃあ、このCD買おう」となりますよね。カラオケ人口を考えれば、ものすごく大きな市場なんですよ。

あとはカセットテープの存在も気になります。ブーム云々関係なく、ずっと前から演歌にはカセットテープがありますよね?

ファンにはもう1本柱があったんです。歌手好きのファン、カラオケのファン、そしてもうひとつの柱が、〈踊り〉のファンだったんです。今はほとんど少なくなりましたが。

〈踊り〉ですか?

〈新舞踊〉っていう、演歌で踊るものがあったんです。そこではカセットテープが必要だったんですね。テープだと「キュルキュルキュル〜」って、簡単に巻き戻せるじゃないですか。それが、踊りの稽古には便利だったんです。お師匠さんが「はーい、2番の最初からやりますよ…キュルキュルキュル〜」って。これはカラオケでも活用できますしね。ですから、ウチはテープのお客さんも多いですよ。

めちゃくちゃ奥深いですね。

でしょう(笑)。

ただ、やはり気になるのですが、お客さまはご高齢のかたが多いじゃないですか。若いお客さんもいらっしゃるのですか?

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なにをおっしゃいますか(笑)。たくさん、いらっしゃいますよ。例えば、〈はやぶさ〉というグループがいるんですが、子供さんから若い女性にも大人気ですよ。彼らは、カードゲームのアニメ〈デュエル・マスターズ〉の主題歌をずっと歌っているんです。

ああ、ウチの子も観ているヤツです!!

もちろんお婆ちゃんのファンもいますから、お孫さんといっしょにCDを買いに来たり。

お婆ちゃんといっしょに応援できる歌手なんて、そうそういませんよね!

あとは〈純烈〉というグループも大人気です。彼らは、ふれあいを大切にしていて、健康ランドとかスーパー銭湯などでキャンペーンを重ね、どんどん人気になっています。女子高生から70、80代のお婆ちゃんまで虜にしていますよ。

そんなに幅広い支持を集めるアイドルもいませんよね! 今日は驚きの連続です。演歌界、本当にすごい。

ひとつのムーヴメントがありまして、〈演歌男子〉というキーワードが重要になっています。いわゆるイケメンの演歌歌手のことを指すのですが、これ以前は、家に閉じこもっているご高齢のファンばかりだったんです。でもこのムーヴメントが生まれたことによって、お婆ちゃんたちを中心として、アイドルを追っかけるような感じで、演歌歌手を追っかけるような状況が生まれたんです。

先ほどのステージでも、スティックライトを持ってらっしゃるお婆ちゃんがたくさんいましたね。

目がキラキラしていたでしょ?

はい! とっても!!

ご高齢になって、あまり外出することがなくなっていたかたがたが、演歌男子によって、みんな乙女に戻ったんです。「もうお婆ちゃんだけど、私も化粧して、着飾って、アイドルを応援していいんだ。もう1回、青春しよう!」そんな風潮になったんですね。外に出るから、刺激もあるし、健康にもいい。ホルモンバランスもいい。私もずっとこのムーヴメントを見ていますが、みなさん、本当に元気になっているんですよ。人って、握手とか、ハグすると、寿命が伸びるんですよ。知ってました?

いやぁ、本当に素晴らしいことですね。

そのリアルな現場を上でやっていますから、もう、本当に大変ですよ。ギャルだらけです(笑)。更に子育てが終わったお母さんたちも続々と参戦しています。そのお母さまが、「一緒に山内惠介を観に行きましょうよ!」とか「あなたにも純烈を観て欲しい!」なんて、お友達を連れて来るんですよ。純烈なんて、温泉もついてきますからね(笑)。この流れはずっと続きますよ。

お爺ちゃんや、男性のファンがついている演歌歌手もいるんですか?

たくさんいますよ。杜このみさん、丘みどりさんとか。でも女性ファンのほうが、圧倒的にパワーはありますね(笑)。

「常に進化していないと」と先ほどおっしゃっていましたが、今後の〈ヨーロー堂〉さんは、どのようになっていくのでしょうか?

ウチは、どこにも負けない最新の演歌、歌謡曲を置いていますし、次にスターになるであろう新人歌手のCDもあります。そこには絶対の自信があります。

はい。

でも、店のテーマとしては、〈より古く、より深く〉を考えています。実は、私が1番得意としているのは、〈過去の音楽〉なんです。新しいものは腐りますけど、古いものは腐りません。長いあいだ置いていてもいいんです。

ええ。

最先端の音楽を聴くのもいいんですけど、どこか無理をしている自分がいる。でも古い音楽、慣れ親しんだ音楽、懐かしい音楽を聴きたくなるときって、ちょっと自分の心が弱いときだと思うんです。それを聞いて癒される。そういう音楽って、本当に必要なんですね。音楽は人生の目次だから、「あのとき、あんなことしてたな」「こんなことしてたな」って、曲が思い出させてくれるんです。そういう音楽に出会いたいときこそ、ヨーロー堂に来て欲しい。そんな音楽がたくさんある店にしていきたいですね。

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