9月28日、セルビアの首都ベオグラードでLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)のプライド・パレード(※1)が開催された。強硬派の国粋主義者らが参加者を襲い150人の負傷者を出した2010年以降開催が禁止されていたが、4年ぶりの開催となった今回、数千人の警察が配備され、監視カメラを装備したヘリコプターが上空を見守るなど厳重な警戒態勢が敷かれていた。

1 波乱を呼ぶセルビアのゲイパレード、初めて平和的に終幕

Photo by Daniel Bukumirovic

機動隊が立ち並ぶ、街の異様な緊張感

今回のパレード開催前から、街の緊張感は高まっていた。前日には、セルビアの国粋主義極右団体Dveriが数時間にわたる反同性愛デモが繰り広げられた。当日も、2010年に被害を被った店舗では営業を停止。そんな中、パレードには約1000人のゲイ・アクティビストと支持者らが参加し、虹色の旗と「プライド」「愛」などのメッセージが書かれたプラカードを掲げ、交通が遮断されたベオグラードの中心部を練り歩いた。参加者の周囲を機動隊が立ち囲み、異様な緊張感を放っていたパレード中、50人から成る暴動集団が警戒線に向かって石を投げつけ地元フォトグラファー1人が軽症、また他の集団が地元テレビ局アナウンサーに向け火炎ビンを投げつけた事件で警察官2人が軽症を負ったものの、目立った事故は起こらなかった。結果的に、10年間の歴史を持つセルビアのプライド・パレード史上初めて、大きな事件もなく平和のうちに幕を下ろした。

2 波乱を呼ぶセルビアのゲイパレード、初めて平和的に終幕

Photo by Gordan Paunovic

セルビアにおける、ゲイに対する根強い反感

そんな中、「セルビアは法と憲法を尊重します。パレード中、何人たりとも暴力行為は許されるものではありません。また、それを防ぐのが当局の務めです」と語っていたセルビア首相アレクサンダル・ヴチッチ(Aleksandar Vucic)の弟と警護に当たっていた2人のボディーガードに対し、特別機動隊が暴力をふるったという事件が伝えられた。パレード中、3人が警告を無視して警戒線を越えたことが原因だとされているが、ヴチッチ首相はこの件について「個人的に遺憾に思う」と述べている。

セルビアの市民は、ゲイに対して必ずしも寛容ではない。国内で強い影響力を持つセルビア正教会のイリネイ総主教は、プライド・パレードは「不道徳」であり、「ゲイのロビー団体と、それを指導する西ヨーロッパ諸国からの人々によって強いられた行為だ」との見解を明らかにしている。

その一方、主催者の一人であるボバン・ストヤノヴィク(Boban Stojanovic)氏は、「今回はじめて政府機関がプライド・パレードを公式にサポートしてくれた上、メディアの報道はLGBTコミュニティに対して好意的だった」と語っている。実際パレードには、駐セルビア欧州連合派代表団チーフであるマイケル・ダヴェンポート(Michael Davenport)氏に加え、海外諸国の大使陣、そしてこれまでで初めて、セルビアの大臣ら数人とベオグラード市長が参加した。

3 波乱を呼ぶセルビアのゲイパレード、初めて平和的に終幕

Photo by Gordan Paunovic

来年以降の展望

パレード主催者の一人であるゴラン・ミレティク(Golan Miletic)氏は、「今回の結果はほんの始まりに過ぎず、来年はもっと警官の数が減るはず。年々減り続けて、最終的には警戒態勢なしで、我々みんなが自由にパレード出来るようになるだろう」と語っている。また、パレードに参加した25歳の学生マリヤは、「プライド・パレードの支持者はゲイだけではないことを伝えたかった。来年は、ゲイもストレートも含めてもっとたくさんの人が参加して、人間はみんな平等だということを一緒に訴えたい」という。

4 波乱を呼ぶセルビアのゲイパレード、初めて平和的に終幕

Photo by Gordan Paunovic

日本でも、<東京レインボープライド(※2)>という名のプライド・パレードが開催されているが、同性婚が法的に認められているオランダやフランスをはじめとする西欧諸国と比較して、セクシュアル・マイノリティに対する社会の関心もまだまだ薄く、制度も保守的なのが現状だ。世界には、ナイジェリアやウガンダなど、同性愛を禁止する国も未だに多数存在している。また同性愛に対してオープンな国々でも、トランスジェンダーに対しての偏見・差別は根深いという。セクシュアリティやジェンダーについての問題は、宗教とも絡んでくるから複雑だ。しかし、性別を完全に捨てて生きることが出来ない社会において、無関心でい続けられる問題ではないことは確かだろう。

ゲイプライド・パレードを開催したセルビアの首都ベオグラード

Translated & Edited by Rieko Matsui