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イラクをめぐる闘い(9)難航する第二都市モスルの奪還

ISに衰えの兆し、ピークは過ぎた、等々、楽観的な報道が散見されるものの、アメリカ率いる有志連合ですら過激武装集団を壊滅させるに至っていない。戦地を知らぬ自称専門家たちは何をもって、衰退、ピーク、云々を語るのか。断片的な情報を繋ぎ合わせただけの解説は果たして的を射ているのか。真実を探るべく、ISと対峙する人々の事情と心情を追う、シリア、イラクからのレポート。

2014年6月29日、国家樹立を宣言した武装勢力ダウラ・アルイスラミーヤ(通称イスラム国、以下IS)は、2016年4月現在、未だ、シリア、イラクにまたがる広範囲を占拠し続けている。ISに衰えの兆し、ピークは過ぎた、等々、楽観的な報道が散見されるものの、アメリカ率いる有志連合ですら過激武装集団を壊滅させるに至っていない。戦地を知らぬ自称専門家たちは何をもって、衰退、ピーク、云々を語るのか。断片的な情報を繋ぎ合わせただけの解説は果たして的を射ているのか。真実を探るべく、ISと対峙する人々の事情と心情を追う、シリア、イラクからのレポート・シリーズ。

モスルは、バクダットからおよそ400キロ北西に位置するイラク第二の都市。古代ニネヴェの遺跡と世界有数の石油生産で知られ、住民のほとんどはアラブ人であるが、周囲の地域はクルド人地域になる。2014年6月9日、ISは、政府施設や警察署などを攻撃し、モスルを掌握。「ニナワ州」と名付け、新たな行政を開始した。

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キルクーク同様、モスルは石油埋蔵量が多く、その利権を狙うISと、イラク中央政府及びクルド自治政府は、武力抗争を続けてきたが、2014年末からアメリカ、イギリス、そしてフランスなどが、ISへの空爆、そしてイラクとクルドに武器援助を始めことで、ISの弱体化が伝えられてきた。

しかし、それから1年半経った現在も、未だモスルはISに支配されている。2016年4月8日、アメリカのケリー国務長官は、有志連合による空爆作戦で「ISは弱体化している」と強調した上で、「有志連合は今後、イラク軍と協力してISへの軍事的圧力を強化していく。特にモスルの奪還は、最も重要な優先事項だ」と述べている。

モスル奪還の前線であり、ISの拠点に最も近いケスケを訪れ、兵士たちに話を訊いた。

原題:THE BATTLE FOR IRAQ – DISPATCH NINE (2015)

2014年よりスタートした当シリーズ。最新情報ではありませんが、日本ではあまり知られていない、最前線の日常を捉えた貴重なレポートです。中東の今をより深く理解したい皆様、是非、ご覧ください。