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ジョーカーマスクの脅迫から見る カナダのイスラムフォビア そして難民問題

ジョーカーマスク男の脅迫映像が公開されたカナダでは、イスラム教に対する嫌悪感が高まっている。ピーターボロ・モスクで放火事件があり、トロントでは女性が殺害されたほか、脅迫事件や嫌がらせが数件報告されている。

モントリオール警察は、ジョーカー・マスクを被った男が「アラブ人を1週間にひとりずつ殺害する」と宣言した映像について捜査を進めた。モントリオール市警察のスポークスパーソン、アンドレ・ルクレールによると、ジョーカー・マスクは、モンソレト通りに住む、ジェシー・ペルティエという24歳の男性であった。

ジェシー・ペルティエは、動画のなかで「これからケベック中で殺人事件が起こる」とケベック訛りのフランス語で予告していた。「ひとり残さず排除する。ひとりずつ。イスラムは、われわれを十分苦しめた」。

その後、映像は削除された。

彼は、パリ同時多発テロに言及しながら、この犯行計画に参加するよう、既に10人以上を勧誘していた。「来週からアラブ人の頭に銃口を突き付ける」。真贋の定かでないピストルをちらつかせながら語っていたが、逮捕後、そのピストルは、オモチャのエアガンであったことが判明。また、身体的な障害もあるという。

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イスラモフォビアに抵抗するケベックの活動団体「LE COLLECTIF QUÉBÉCOIS CONTRE L’ISLAMOPHOBIE(CQCI)」の代表で、イマームのアディル・シェルカウィによると、パリ同時多発テロ事件以降、カナダ中のムスリム・コミュニティは、このようなイスラムを嫌悪するような攻撃にさらされているという。「脅迫が、単なるジョークかどうかはわからない。もしジョークであれば、軽く受け流すこともできる」と冷静だが、「現在の状況を考えれば、当局に協力を仰ぐのが妥当だろう」と付け加えた。

脅迫映像が公開されたカナダでは、イスラム教に対する嫌悪感が高まっている。ピーターボロ・モスクで放火事件があり、トロントで女性が殺害されたほか、脅迫事件や嫌がらせが数件報告されている。

ケベック州では、フランスとの繋がりが強いせいか、2013年に世俗主義を明示した州規約が提出されると、宗教的な緊張感が高まり、賛否両論が巻き起こった。

PEGIDA(Patriotische Europäer gegen die Islamisierung des Abendlandes、西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者)ケベック支部のFACEBOOKページには、嫌悪感を露わにしたコメントが寄せられ、ユーザーのひとりは、モントリオール地区にあるモスクのリストを掲載し、実力行使を訴えた。それに対して、PEGIDAはユーザーをFacebookのメンバーから外し、そのコメントを削除している。

カナダでは、反移民感情も高まっている。あるケベックの団体のひとつは、2万5千人のシリア難民を受け入れを発表したジャスティン・トルドー大統領に対し、反対のための嘆願書を送った。反対支持者が寄せたコメントには「彼らを受け入れるのは、短期的にも長期的にも無分別であり、危険である」「連中はこの国を侵略し、イスラム国家にするつもりなんだ」といった批難も含まれていた。実際7万もの署名が集まったという。

一方で、移民受け入れ賛成派も4万5千人の署名を集め、嘆願書を提出している。

女性サポート団体「Justice Femme」の設立者であるハナディ・サアドさんは、あらゆる問題が絡み合って、と現状に不安を感じている。「まるで戦争に突入したみたいに、関係ないことまで一緒くたになっています」パリ同時多発テロ以降、イスラム嫌悪から、彼女の団体に対する誹謗中傷が増加した。「皆がテロリストみたいです」

彼女に助けを求めてきた女性たちは、オンライン、日常生活を問わず嫌がらせに遭っている。「殺す」と脅された女性もいる。警察の消極的な対応に不安を覚え、彼女に苦情を寄せる人も多いようだ。「まるで消火活動をしているみたいです」「こうしたケースの扱いに戸惑う警察官もいるようですが、早急に対応してもらわなくてはなりません」とサアドさんは強調した。

トロントのモスクに通う女性は、息子を学校に送る途中、嫌がらせを受けた。このモスクでは、未成年の女子に対して、夜間1人でイスラム系学校に通うのを控えるよう忠告した。また、オンタリオにあるムスリム協会も、髭を蓄えた男性、ヒジャブを着用している女性に、集団で行動するように注意を促した。

シェルカウィ氏は、「警察は、ヘイトクライムの特徴を徹底的に把握し、この手の犯罪を専門に扱う部署を立ち上げるべきだ」と付け加えた。

警察は、市民の苦情全般に対応するものの、人種や宗教にまつわる差別への対応を後回しにしがちだ。「ヘイトクライムは複雑だ。他の犯罪同様、深刻なのだから、警官がさらなる訓練により、分別を深めなければならない」

一方、カルガリーのムスリム団体は「近所のムスリム(Your Muslim Neighbor)」というボランティア活動を開始した。「歩道の脇を耕すだけでもいい。一般のメディアで広がっているネガティブなステレオタイプを中和できれば」とFacebookページで語っている。