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EU残留を望むスコットランドと北アイルランドのUK離脱願望

EU残留を望むスコットランドと北アイルランドのUK離脱願望 賛成52%反対48%。「ブリグジット」により、EU離脱が濃厚な英国だが、スコットランドと北アイルランドの投票結果は正反対だった。EUとの繋がりを重視する両地域では、英国離脱の気運が高まっている。

2014年9月、スコットランド独立の是非を問う住民投票で、英国残留に票を投じた住民たちは、残留、と開票結果が発表されると、アル・グリーン(Al Green)の名曲「Let’s Stay Together」に合わせて歓喜を全身で表現した。

しかし、英国の欧州連合(European Union、以下EU)離脱が決定し、先行きが不透明になった連合王国の北部、スコットランドは、英国から離脱する意志を表明するなど、EU残留の途を模索している。

6月25日、 ニコラ・スタージョン(Nicola Sturgeon)スコットランド行政府首相は、国民投票で英国のEU残留を圧倒的に支持したスコットランド住民の62%に対し、EU市民として住民が有する権利の保護、英国からの独立を問う住民投票を再度実施する可能性を約束した。

スタージョン首相は、スコットランド住民は「力強く、明確に」「断固として」EU残留に票を投じた、とブレグジット(Brexit: EU離脱の是非を問う住民投票)の結果を受けて言明した。同首相は、スコットランドが「意に反して」EU離脱を強いられるのは「民主主義にそぐわない」とも語っている。

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「EUにおけるスコットランドの地位を守るべく、われわれは、あらゆる措置の検討を目的とした議論を、EU機構やEU加盟国とともに早急に開始しするつもりです」とスタージョン首相は表明した。「英国からの独立を問う住民投票の実施は、明らかに議題にすべき選択肢であり、われわれは可能性を真摯に検討しています」

2014年、スコットランド独立の是非を問う住民投票で、同地域住民は、55%の反対票で英国残留を決定した。スタージョン首相が党首を務める、スコットランド国民党(Scottish National Party、以下、SNP)は、英連合王国に所属するがゆえに享受できるEUメンバーシップこそ、スコットランド住民の大勢が、英国からの独立に反対した決定的な要因だ、と断言していた。

また欧州委員会(European Commission)がスコットランドのEUに受け入れるか否かも問題だ。「スコットランドは英国の一部です」と欧州委員会の女性広報担当官はロイター通信に話した。「欧州憲法に基づく取り決めが適用されるでしょうが、われわれにその先はわかりません」

スコットランド行政府に近い情報筋の発言を引用したロイター通信によると、スタージョン首相とEU残留派の議員たちは、欧州委員会の反応に別段落胆した様子もなく、委員会メンバーは「事実をそのまま口にした」までだ、と捉えているようだ。

さらにスタージョン首相は、EUメンバーシップにまつわる法的、財政的、外交的な問題について、スコットランド行政府に助言するための専門家委員会を立ち上げる、と表明した。

一方、6月24日、マーティン・マクギネス(Martin McGuinness)北アイルランド自治政府副首相は、アイルランド統一の是非を問う世論調査の実施を提案した。北アイルランドでもスコットランド同様、同地域住民の56%がEU残留を支持した。

ブレグジットの結果を受け、チャールズ・フラナガン(Charles Flanagan)アイルランド外務大臣は、極言をためらわなければ、将来的なアイルランド統一はアイルランド国民最大の関心事であるが、英国がEU離脱交渉を進める最中にアイルランド統一をめぐる住民投票を実施しても、さらなる混沌と亀裂を生むだけだ、と分析した。

英国とアイルランドの間で繰り広げられた30年にも及ぶ紛争終結の象徴である、1998年の「ベルファスト合意」附属書には、北アイルランドで有権者の大勢がアイルランド統一を求めるならば、自治政府は、その是非を問う住民投票の実施を要求できる、と記されている。