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ロシア海軍による地中海実弾演習のインパクト

地中海東部での演習は、ロシアーNATO間で高まる緊張の顕れでもある。

2016年8月15日月曜日、地中海東部のシリア沖でロシア海軍は、「テロリストの脅威に起因する危機的状況」に対処する能力をテストするべく軍事演習を開始、とロシア国防省は発表した。

実弾演習は、ロシア軍のシリア内乱への積極的介入とも関連している。アサド政権を支援するためのロシアによるシリアへの軍事介入は、ロシアの重要な海外拠点、タルトゥース海軍基地が反政府勢力に掌握されるのを阻止するための戦略、と評する専門家もいる。同海軍基地は、暖水域に位置するロシア海軍唯一の海外拠点だ。

演習では、実戦を想定した状況での迫撃砲、ミサイル発射を予定している、ともロシア国防省は報じている。

演習に参加した艦隊の中には、最新小型ミサイル艦「セルプホフ」「ゼリョヌイ・ドル」の2艦が参加した。遠距離標的への高い命中精度を誇る海洋配置有翼ミサイル「カリブル」と垂直発射装置を装備した両艦の参加は、軍備の面で米英の後塵を拝していたロシアにとっては、非常に意義深い。2015年、ISに向けて初めて発射されたカリブルは、軍事能力においてアメリカとその同盟諸国にロシアが引けを取らない証左だ。

地中海東部での演習は、ロシアーNATO間で高まる緊張の顕れでもある。

米海軍大学(US Naval War College)のレポートは、クリミア半島のセヴァストポリを拠点にする黒海艦隊を保有するロシア海軍の戦力は地域でもトップクラス、と分析している。ロシア艦隊は、クリミアを出港し、黒海と地中海をつなぐダーダネルス海峡を通過すれば、2~3日でタルトゥース基地に到着する。艦隊は同基地に、要衝アレッポを巡って反政府勢力と激戦を続けるアサド政権を支援するための戦車、ヘリコプター、その他の軍事装備を陸揚げする。

ロシアの黒海艦隊は戦艦42隻、潜水艦6隻を保有しているのに対して、地中海に駐留するアメリカ第6艦隊は指揮艦1隻と駆逐艦4隻しか保有していない、と米海軍大学のレポートは記す。とはいえ、ロシア海軍が対峙するのは、アメリカ率いるNATO加盟国の海軍だ。ロシアの同盟国シリアの海軍は小規模なため、沿岸警備以上の役割は期待できない。