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宇宙人に埋め込まれたナノテクノロジー除去手術

2017年10月に公開されたジェレミー・ケニオン・ロックヤー・コーベル監督のドキュメンタリー作品『Patient Seventeen』が記録したのは、足病外科医であり、患者に埋め込まれていた地球外ナノテクノロジーを除去したと、主張する著名なUFO研究家、ロジャー・レアー博士による最後の外科手術だ。

1992年、370万人もの米国人が地球外からの訪問者と遭遇したことがあると信じている、つまり〈UFO誘拐症候群〉を患っている、とする研究結果が発表された。これは、方法論的にも論理的にも批判を浴びている。しかし、宇宙人に誘拐された、と主張する人びとが数多くいることは疑いようもない。

それ以来、20年にわたり、多くの研究者たちは、頻繁に起こるUFOとの遭遇を、宗教的衝動や精神病理学的兆候になぞらえて説明しようとしてきた。宇宙人と遭遇した確固たる証拠がないなか、地球外生命体による誘拐の証言に何らかの説明を求めるのは、理にかなっている。しかし、本当に宇宙人と遭遇した物的証拠があるとしたら?

これは、2017年10月に公開されたジェレミー・ケニオン・ロックヤー・コーベル(Jeremy Kenyon Lockyer Corbell)監督のドキュメンタリー作品『Patient Seventeen』が提示するテーマである。『Patient Seventeen』が記録したのは、足病外科医であり、患者に埋め込まれていた地球外ナノテクノロジーを除去したと、主張する著名なUFO研究家、ロジャー・レアー(Roger Leir)博士による最後の外科手術だ。

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このドキュメンタリーは、撮影中に逝去したレアー博士に捧げる感動的な追悼作品だ。博士は、UFOと宇宙人による誘拐事件に科学的に取り組むことにキャリアの大半を捧げた。

レアー博士と共同研究者たちが, 除去した物体を電子顕微鏡で分析した画像を確認している.

地球外生命体に誘拐された、と主張する人びとにとって、その信ぴょう性を証明するための確固たる証拠に繋がる架け橋となったのが、レアー博士による外科手術だった(架け橋にしては不安定だが)。しかし、科学者の大勢は、常にレアー博士の研究に懐疑的だった。レアー博士の研究で議論の的になるのは、博士が主張する〈地球外インプラント〉は本当に地球外物質なのか否かだが、他の科学者たちは、地球上の物質だ、と証言している。

コーベル監督が『Patient Seventeen』の制作に着手した頃、同監督は、宇宙人によるインプラント・テクノロジーには懐疑的だが、ただ、UFOの存在も、それが地球外知的生命体により操縦されることも「間違いない」と言明している。

「ナノテクノロジー、高度な推進力、そして、それぞれとUFO現象の関連性を探るドキュメンタリーをつくりたかったんです」とコーベル監督。「真偽不明の宇宙人によるインプラント・テクノロジーについての映画なんて撮りたくありませんでした。だけど、スタート時点では、どう撮っていくべきかわかっていませんでした。数週間すれば、きっと問題の本質に迫れるだろう、と予想していたのですが、残念ながら、そう上手くはいきませんでした」

コーベル監督は、〈地球外インプラント・テクノロジー〉の謎に光を当てるため、レアー博士と、監督がいうところの「ただの平均的男性」である匿名の患者17号に密着し、17号の脛に埋め込まれていた謎の金属小片の外科的除去と分析準備のいち部始終を目撃した。

監督によると、レアー博士は手術のさい、建物の壁裏にある柱の位置を探るための金属探知機を使って、患者の脚の金属片の位置を探し当てていたらしい。

「『手術を撮るので、もし、あなたが嘘をつき、真実を捻じ曲げる、もしくは、世間を欺くために結果を捏造するのであれば、それが明らかになってしまいますよ』とレアー博士に告げました」と監督。「本当に撮影していいのか、と念を押すと、博士は答えました。『もちろんだ、ジェレミー。20年以上も手術してきたんだ。大丈夫だよ』とね」

この作品は、患者17号の体内にある金属片が地球外由来である可能性には懐疑的だ。幼い頃、地球外生命体と何度も遭遇したと主張する患者17号は、地球外からの誘拐犯に対する敵意を認めている。彼らを「エイリアン・ギャング」と呼び、「ブチのめしたい」と願望を口にしていた。

少年時代の宇宙人との不愉快な遭遇体験が原因で、患者17号は、レアー博士を探し出し、宇宙人のテクノロジーにより埋め込まれた可能性のある物体を、手術して除去するに至ったのだ。レアー博士は、これまで17名の患者に、宇宙人に埋め込まれたナノテクノロジーの物体の除去手術を施した、と主張しているが、データや除去した物体を他の研究者と共有しようとはしなかった。

2014年初頭、レアー博士は、患者17号の脚から小金属片を取り除いたあと、時をおかずして他界した。博士は、最後の手術の結果を確認できなかったが、彼の死後、近しい共同研究者2名は、謎の物体の分析を続けた。そして『Patient Seventeen』の後半には、ふたりの奮闘が収められている。

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患者17号の脚の物体除去手術.

レアー博士は、患者に埋め込まれていた物体は、宇宙人による高度なナノテクノロジー装置だ、と仮説を立てていた。博士によると、その〈装置〉は、無線信号ではなく、人類の無線装置からは検出され得ない、存在が証明されていない電磁気放射線、いわゆる、〈スカラー波〉を発していたという。ちなみに、スカラー波が存在する可能性を真剣に検証した最後の科学者は、奇妙で科学的に胡散臭い発明に事欠かない、ニコラ・テスラ(Nikola Tesla)だった。

ともかく、患者17号の脚から摘出した物体の構造は、ちょっと変わってる、というレベルではなかった。コーベル監督、レアー博士の共同研究者である物質科学者、スティーヴ・コルバーン(Steve Colbern)、そして、軍属を主張するナノ科学者、通称〈ナノ・マン〉(彼自身、コーベル監督の短編ドキュメンタリーの主人公にもなっている)の3人が、レナー博士の研究を引き継ぎ、走査電子顕微鏡による分析と、広範囲スペクトルを測定できる元素分析のために、物体のサンプルを2つの研究所に送った。それぞれの分析で、分子レベルの構造および、サンプルの完全な元素組成を明らかにできる。

UFO研究は、著名な天文学者で軍属の物理学者でもあり、政府諜報機関のUFOに関する数々の資料の著者、ジョセフ・アレン・ハイネック博士(Josef Allen Hynek)の研究に端を発する。これまで、UFO研究に関心を抱いてきた科学者は、ハーバード大学の精神医学教授、ジョン・マック(John Mack)を始め、数多いるが、1950年代以降、UFO研究は正統な科学として認められずにいる。宇宙人との遭遇の証拠が、目撃証言や、目撃者から提供された写真、映像しかないからだ。UFO研究には、例えば、実験や仮説の反証可能性など、物理学、生物学を始めとする正統な科学が有する、数々の証明手段が欠けている。

患者17号の脚から摘出した物体を調べている様子.

その意味で、少なくとも科学の厳密性さをUFO研究に持ち込もうとしたレアー博士は、真のパイオニアだった。彼は〈地球外インプラント〉と呼ばれる何かを物的証拠として、宇宙人の地球訪問の有無が証明できると考えていた。しかしながら、ジョー・ニッケル(Joe Nickell)ら、懐疑派が指摘するように、レアー博士が自身の研究結果や、彼が除去した埋め込み物を、他の研究者とのさらなる分析のために共有するのをためらったため、彼の主張はなおいっそう疑わしくなった。

しかしコーベル監督によると、レアーは自身の研究結果を隠蔽しようとしたわけではないという。

「レアー博士は、決して、研究結果を共有することをためらっていた訳ではありません」とコーベル監督はメールで明らかにした。「誰も聞こうとしなかっただけです。私を含めて」

ネタバレしない範囲であえていうなら、劇中に映しだされるレアー博士の科学的実験結果は、とても不可解だった。患者17号の脚に埋め込まれていた物体は、元素組成を見る限り、地球外物質の特徴をいくつも備えていた。しかし決定的な証拠には程遠い。

レアー博士の死後、事態はさらに混迷する。結局、コーベル監督の手元には、制作開始時よりもずっと多い、未解決の謎だけが残った。

死の直前, ロジャー・レアー博士がオルガンを弾いている姿.

患者17号の脚から摘出した物体の分析結果を理解するため、コーベル監督は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の隕石専門家、アラン・ルービン(Alan Rubin)を含む、ふたりの外部専門家にコンタクトした。コーベル監督によると、ルービン博士は、エイリアン・テクノロジーについて、カメラの前で語るのに気乗りしていない様子だったそうだ。監督が、研究所からの分析結果をふたりに提示したとき、彼らは当惑しており、最終的に、物体が地球外由来だと証明するためにはさらなる検査が必要だ、という結論に至った。

コーベル監督によると、レアー博士の死後、患者17号から摘出した物体を譲り受けたコルバーン博士が撮影終了直後から、監督や患者17号からの電話やメールに応答しなくなったという。コルバーン博士は、謎を解くための唯一の手がかりを持ったまま、忽然と姿を消したのだ。

コーベル監督によると、結局、コルバーン博士からは2年間音沙汰がなかったが、『Patient Seventeen』の公開直前、博士と連絡がついたらしい。その結果、監督自身が患者17号から摘出された物体を所有しているそうだ。監督は当初行なった分析を再度行い、その結果が偽陽性でないことを確認してから、金属片が地球由来か否かを結論づけるべく、さらなる分析を試みる予定だ。

それまでは、金属片が本当に宇宙人のナノテクノロジーによるのか否か、いかなる判断も控える、とコーベル監督。

「ここでは、いかなる信条も挟むべきではありません」とコーベル監督。「私は今、高度な地球外知的生命体によるナノテクノロジー装置を証明する、驚くべき物的証拠を握っているのかもしれないし、そうでないのかもしれない。いずれにせよ、今後明らかにしなるでしょう。それが、患者17号とレアー博士のために、私ができることですから」