15_a-german-city-is-paying-its-alcoholics-in-beer-to-clean-the-streets00

新しいアプローチのホームレス・中毒患者支援プログラム

あらゆる都市は、ホームレス、アルコールやドラッグ中毒者に対する政策に頭を悩ませている。今回VICEでは、こうした問題に対するドイツ西部の都市エッセンの画期的な取り組みを紹介したい。

今年10月1日、エッセン市の中毒者支援団体は、ホームレス、ドラッグおよびアルコール中毒患者に対し、市内でも有数の不潔な広場ウィリー・ブランド・プラッツ(Willy-Brandt-Platz)を清掃する代わりに、ビールとタバコを支給するというプログラム「Pick Up」を発表した。プログラムの目的は、ソーシャルワーカーの監視の下でスケジュール通り働くことに慣れさせ、社会復帰を促すことだ。

「Pick Up」プログラムでは、参加者に1時間当たり1.25ユーロの賃金に加え、1回につきビール3本と温かい食事、喫煙者にはタバコが支給される。現在6人が参加し、それぞれ一日4~6時間、50万人超の市民が暮らすエッセンの歩道を掃き清め、ゴミ拾いをしているという。実は、このプログラムには前例がある。アムステルダムで行われている「Veegproject」だ。参加者は午前9時の始業前に2本、一日計7本までビールの飲酒を許可される。企画者によれば、これまで多くの参加者が症状を克服して職場に復帰し、十分な賃金を得てビールとスープ以外のものを食べられるようになったという。現在も30人が参加している。

「Pick Up」への賛否

しかしながら「Pick Up」に対する批判的な意見もある。「参加者たちにとって現金よりも消耗しやすいものを労働の対価にするのは危険」との懸念や、「社会的にも物理的にも破産している市民に、単純作業を強いて搾取する無意味な計画だ」という主張、労働の対価としてのビールに税金を費やすことへの反対意見が聞かれている。これに対し、エッセン市議員で社会サービス部門担当のピーター・レンツェル(Peter Renzel)氏は、「ネズミはおいしい餌に飛びつくものだ」と述べ反論している。ただ、大量のアルコールやドラッグ漬けの生活から参加者たちを遠ざけるだけでも、このプログラムには意義があると言えるだろう。

「Pick Up」は薬物治療や就職斡旋プログラムといった他のソーシャルワーカーと協業しながら、中毒者たちの支援を目指している。リハビリ期間を経た上でもなお重度の中毒症に苦しみ、肉体・身体的衰弱により就労が困難な状況にある人々にとって「Pick Up」が提供するプログラムは、希有なチャンスなのではないだろうか。

日本でもホームレスやアルコール・麻薬中毒者に対して行政・民間の団体による支援活動は行われているが、「Pick Up」のような彼らの弱みを活かすプログラムは聞いた事がない。「ホームレスが無くならないのは、本人たちに自立の意思が無いからだ」とする社会の見方もあるが、ホームレスや中毒患者も心の底では、ビール3本と熱いシャワー、温かい朝食で満足できるようになりたいと望んでいるのかも知れない。アムステルダムに続き、ドイツ・エッセンでも成功を収めるのか、今後の展開に注目したいところだ。

Translated & Edited by Rieko Matsui