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スパイク・ジョーンズが4年半ぶりに来日。ジブリ鈴木敏夫との初顔合わせが実現!

スパイク・ジョーンズ監督の最新映画『her/世界でひとつの彼女』が6月28日より全国公開。4年半ぶりの来日を果たしたジョーンズ監督と、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーを迎えたトーク・イベントの模様をレポート。スパイク作品とジブリ映画の共通点とは?

日米のトップ・フィルムメーカーが初顔合わせ

スパイク・ジョーンズ(以下、スパイク)監督の最新作『her/世界でひとつの彼女』(6月28日公開)は、コンピュータの人工知能OSに恋してしまう男・セオドア(ホアキン・フェニックス)を描いた風変わりなラヴストーリーだ。長編作品としては初めて単独で手がけた脚本となり、<第86回アカデミー賞>にて脚本賞を受賞するなど、キャリア最大の評価をモノにしている。

そんなスパイクが、本作のプロモーションのため約4年半ぶりに来日。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーを迎えたトーク・イベントに登場し、フィルムメーカーとしての熱い持論を展開した。なお、監督と親交の深い映像作家=ランス・バングス氏による出演者/著名人へのインタビュー動画も紹介しているので、あわせてチェックしてほしい。

スパイク・ジョーンズ作品とジブリ映画の共通点とは?

先行上映会の後に行われたイベントは満員御礼。スパイクと、本作の衣装デザインを手がけたケイシー・ストームに続き、サプライズ・ゲストとして作務衣姿の鈴木敏夫プロデューサーが登壇すると会場は大きな歓声に包まれた。スタジオジブリは新作『思い出のマーニー』(7月19日公開)を制作中とのことで、鈴木は「本当はこんなところに来てる場合じゃないんだけど…」と苦笑いしながらも、いちファンとしてジョーンズとの対面を喜んだ。

相思相愛な2人の会話はすぐさまヒートアップし、「スパイク作品はいつもヒーローではなく、うだつの上がらない男が主人公だよね?」と鈴木が問うと、スパイクは「まず、作り手である我々にとってリアルでないと、人々は共感できないと思うんです。人間は模索し、悩み、チャレンジを繰り返しながら生きてゆくし、それはジブリ作品とも似ている部分かもしれませんね」と、意外な共通点を指摘する。

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さらに「ちょっとやり過ぎかな? と思うことでも、キャラクターにとってリアルであれば心に響くんです」と熱弁を振るい、“声”だけの出演を果たした女優スカーレット・ヨハンソンに関しては両者共に絶賛。「あの役に命を吹き込んでくれたのは彼女だけだった。4~5か月にも及ぶレコーディングで、その声を掘り下げていきました」と語り、フィルムメーカーとしての異常なまでのこだわりも垣間見せた。

ファンからの質問にも応じつつ、突然セーターを脱ぎ捨てたり、iPhoneで周囲をムービー撮影してみたり、無邪気な笑顔が何よりも印象的だったスパイク・ジョーンズ監督。オスカーを獲得しても偉ぶることなく、少年のようなスタンスを貫く彼の今後がますます楽しみになる一夜だった。

INTERVIEW:ケイシー・ストーム (衣装デザイン『her/世界でひとつの彼女』)

映画の公開に合わせ、スパイクと共にプロモーション来日していた衣装デザインのケイシー・ストームに話を聞くことができた。ケイシーはこれまでにも、ビースティー・ボーイズ“Sabotage”のミュージック・ビデオにはじまり、数々のスパイク・ジョーンズ作品の衣装を手掛けてきている。今作の劇中衣装はもちろん、彼が感じる日本のファッション・カルチャーについても聞いてみた。

本作『her/世界でひとつの彼女』のストーリーは、人間が人工知能に恋心を抱くことが大きなテーマになっていますよね。あなたはそれが可能だと思いますか?また、あなたが考える「現代(ハイテク)社会における愛や恋」についてと、映画の見所も聞かせてください。

人口知能に恋心を描くことは可能だと思うよ。人口知能だということは関係なく、その心に恋をするわけだから。例えば本を読んで、作家に恋をすることもできると思うし、絵画を見て、その画家に恋をすることもできる。要は、感情の問題だよね。その関係性を描いているのがまさに、この映画だと思うんだ。あと、映画のみどころに関しては、何よりも正直さだよね。作品の中には様々な要素があって、観る人はどこかで必ず共感できることが出来る。とても力強い魅力を持った映画だし、見終わった後も様々なテーマを何度も何度も、話し合えるような作品だよ。

劇中に出てくるキャラクターを見ていると、それぞれ着ているシャツの「襟」に特徴がありすごく印象的でした。キャラクターそれぞれの想いを襟で表現するなど、何か意図的なものはありますか?

とにかく襟で映画としての個性を出したかったんだ。例えば、1970年代の襟は今と比べて大きかったけど60年代は小さかった。さらに遡って1910~30年代の鉄道員が当時着ていたシャツはとても襟が小さかったり。現代と差別化したかったから襟は「小さめ」「ほとんどない」「ダブル」にするっていうルールを決めていたんだ。とはいえ、それぞれのキャラクターに関しては、あまり細かいルールを決めすぎないようには心がけたよ。例えば、今日はボタンダウンのシャツを着ていても、明日もそのシャツを着ているわけではないと思う。だからキャラクター毎に「この襟」という風には決めてなかったね。CMとかだと1つのスタイルで良いけれど、映画は長くて色々な設定があるから、その設定にあわせていろんな襟を着せてみたよ。

日本のファッション・カルチャーをどのような印象で受け取っていますか?期待すること、または指摘することなど何か特別思うことがあれば聞かせてください。(例えば、きゃりーぱみゅぱみゅは、日本を代表するファッション・アイコンとして世界進出もしていますが)

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今回の来日で改めて見た日本のファッション・カルチャーは、とても大人しい印象だね。過去に来日したときは、もっとサブカルチャーが根付いていたし、カウンターカルチャーもあった。『FRUITS』という雑誌に代表するように、原宿カルチャーにももっと力強いファッション性があったような気がするんだ。世界が日本に追いついてしまったのかどうなのか…。それになんだか、全体的に落ち込んでいるような印象をうけたね。それがスタイルにも表れているというか、とにかく元気がないように思える。自分が発信したいメッセージを力強く出そうとしている人がいなくて、みんな周りの様子を伺うような感じだね。あまり詳しくはないけど、政治の影響もあるのかな……。とにかく色々な人と話をしてみて、一種の悲しみのような印象、そしてアイデンティティを感じられない雰囲気があった。あと、きゃりーぱみゅぱみゅのことは知らなかったんだけどビデオで見たよ。僕の好みではないけどね(笑)。ケイティー・ペリーのような感じなのかな?

あなたが個人的に現在気になっているファッション・スタイルやブランドなどあればお聞かせ下さい。加えて、日本の特に10代の若者たちにファッションにおけるアドバイスをお聞かせ下さい。

いま、特に好きなブランドやファッションはないな。気になっているのは男性が着るオーバーオールかな。最近で一番好きな服はコムデ・ギャルソンのオーバーオールなんだけど、この映画の撮影で上海にいるときはずっとそのオーバーオールを着ていたんだ。今回、日本ではこのスーツを着ているけど、こういう風に旅行中とかは同じ服をずっと着る、というのが結構面白いんだよね。

日本の若者たちよ、とにかく好きなものを着なさい。他の人間がどう思おうが関係ない。自分にとって気分が良いと思えるものを着なさい。例えば、暑いからズボンをロールアップして、そのスタイルが気に入ったとかもアリだし、とにかく自分の気持ちに忠実に好きなものを着れば良いと思うよ。

Text by Kohei UENO
Interview by Taisuke Yamada

関連記事:スパイク・ジョーンズ最新作『HER/世界でひとつの彼女』に対する著名人の反応

『her/世界でひとつの彼女』

6月28日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督&脚本:スパイク・ジョーンズ
出演:ホアキン・フェニックス エイミー・アダムス ルーニー・マーラ オリヴィア・ワイルド スカーレット・ヨハンソン
公式サイト http://her.asmik-ace.co.jp/