今年2月~6月初旬に、ゴシップ好きの心をくすぐる写真展『Paparazzi Photographers : Stars and Artists』が開催された。パリのポンピドゥー・センターの分館、メッス(パリ4区)にあるポンピドゥー・センター・メッスにて行われた本展では、パパラッチ・フォトグラフィの歴史50年の中で初の回顧展として、600枚を越える写真を展示。これらはすべて、慎重かつ大胆な行動によって20世紀を代表する写真を撮ってきた写真家によるものだ。 彼らの写真から、一流のトップスターでさえも私たちと変わらない一人の人間である、ということを感じさせる。リチャード・アヴェドン(※1)、ロン・ギャレラ(※2)、アンディー・ウォーホル(※3)などによる写真はもちろん、スパイカメラや望遠レンズ、変装グッズなども展示された。

以下は、今回の写真展のプロジェクトマネージャー、キャサリーナ・ドーム(Katharina Dohm)へのインタビュー。 ぜひ下記、写真と共に彼らのコメントを読んでみて欲しい。

1 20世紀を代表するパパラッチ・フォトグラフィ、50年の歴史を振り返る

パパラッチ・フォトグラフィが明らかにするもの

今回の写真展はいわゆるセレブ崇拝について取り上げているのですか?

というよりは、パパラッチ・フォトグラフィにある美学や、被写体と写真家の関係性ですね。今回はパパラッチの視点、つまり物事に対する社会的・文化的な視点にフォーカスしたのです。パパラッチ・フォトグラフィの歴史が公になるのはこれが初めてのことで、言うなれば「敵意に満ちた関係」とも言えます。
それでは、パパラッチ・フォトグラフィの定義とはなんでしょうか? フラッシュが焚かれていて、ピンボケで…そう、横着な人にも可能性がある写真の分野ですよね。ですので展示をするにあたり、私達はまず、パパラッチ・フォトグラフィの定義から話し合いました。

2 20世紀を代表するパパラッチ・フォトグラフィ、50年の歴史を振り返る

どんなスターたちの写真が観れるのでしょうか?

セレブの多くは女ですし、パパラッチの多くは男なので、まるで男が女を追いかけているようです。先ほどの「敵意に満ちた関係」というのはそういう意味です。今回は6名の女性を選出しましたが、中でもパリス・ヒルトン、ブリジット・バルドー、ブリトニー・スピアーズには注目です。写真を観ると、彼女たちにはプライバシーと呼べるものなど無いということが分かります。
例えば、ジャッキー・ケネディ(※4)は家族を守るためにロン・ギャレラを何度も訴えましたよね。

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ブリトニー・スピアーズとパリス・ヒルトンの写真について教えてください。

彼女たちの写真が示唆しているのは「カメラに対する反応」です。パリス・ヒルトンは成功と名声を得るためパパラッチを利用した第一人者とも言えます。 実は彼女が裁判沙汰のあと、車で泣いているところを捉えた写真も本展で展示されています。これはニック・ウット(※5)によるものです。ブリトニー・スピアーズの写真だと、彼女は下着を付けずに車から出てきたところを捉えた悪趣味な写真があります。
戦争写真家は正義のヒーローですが、パパラッチたちは悪役。まるで小さな動物のようにコソコソ動きまわって写真を撮ります。2000年ごろ、写真家というのは儲かる職業だったのですが、今は昔ほど儲からないんです。

パパラッチとはアートでしょうか?それともただのモラルのない行為?

アートだとは思いませんが、私達のイメージの源になる写真も中にはあると思います。だからこそ大切なものですし、ゲルハルト・リヒター(※6)や、シンディー・シャーマン(※7)、アンディー・ウォーホルのようなアーティストに影響を与えてきたのです。パパラッチ・フォトグラフィは写実的なアーティストにとって新しい表現手段を与えてくれます。

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今回の展示で、お気に入りの写真はありますか?

ブリジット・バルドーの写真でとても好きな一枚があるのですが、今回の展示の宣伝用には使えませんでした。事務所と本人を通さないといけないので、パパラッチ写真の権利を取るのはかなり大変です。彼女には全ての写真使用に関してNGを出されました。その私が好きな一枚というのは、ビキニ姿の彼女が夫のガンター・サッチ(Gunter Sachs)を待っている写真。ガンターは川から上がったところで、タバコを吸っていて…。 とてもクールなんですが、今回は見せられません。

今回の展示のポイントはそういった(見せれないような)写真が見れるというところなので、とても残念です。宣伝用にすら使わせてくれないのもおかしな話です。

まったくもってその通りです。 ロン・ギャレラの写真の中に『Wind Brown Jackie』と呼ばれる一枚があります。あれこそ、ダ・ヴィンチで言うところの「モナリザ」ですよ。とても美しい。彼こそパパラッチ界のスターだと思います。

5 20世紀を代表するパパラッチ・フォトグラフィ、50年の歴史を振り返る

パスカル・ロステイン(※8)とブルーノ・モーロン(Bruno Mouron)がマドンナが捨てたゴミを隅々まで調べたこと、あれはやりすぎだと思いますか?

彼らはセレブのゴミを集めてきて、展示品のように綺麗にテーブルに並べて撮る写真家ですが、私はやりすぎだと思いますね。遺品みたいに見えるんです。あたかもその人の生きた歴史を表すかのような…。
彼らにとって「セレブ」だったのかわかりませんが、ジェフ・クーンズ(※9)のゴミですら漁っていましたね。そしてマドンナのゴミを漁ったときに、彼女がたくさんの水を飲むということがわかったのですが…それって、とっても「普通」なことですよね?それ以来、彼らは落ち着きを取り戻したというか、正気に戻りましたよ。

6 20世紀を代表するパパラッチ・フォトグラフィ、50年の歴史を振り返る

この50年で、パパラッチはどう変わってきたのでしょうか?

変わっていないと思います。パパラッチたちは口を揃えて「最も大事なことは待つこと。次に情報。最悪なのは間違った情報を集めてしまうこと」と言います。これは長きに渡り、そんなに変わっていないことです。

パパラッチ・フォトグラフィの象徴といえる写真はどのような写真ですか?

ひとつあげるとすれば、多くの写真で見られる被写体が顔を手で隠している構図。これは典型的なパパラッチ・フォトグラフィと言えます。レンズに手を向ける行為は撮られたくないという意志の表れです。
展示作品の中には「一人が被写体を驚かし、その瞬間にもう一人が写真を撮る」という作戦で撮ったことが分かる写真もあります。写真家も共同作業なんですね。

その人自身の魅力を武器にする人もいますよね?

もちろんです。写真家・ジーン・ピゴッツィ(Jean Pigozzi)の格言でこんな言葉があります。 「僕は彼ら(セレブたち)のただのお友達さ」

Translated & Edited by Kentaro Okumura