牛丼を食べていましたら、お持ち帰りで〈特盛〉6人前の注文が入っていました。更にその直後、10人前の〈特盛〉オーダーが。「すいません、少々お時間いただきます」。そして店内には続々とお客様が来店。「うまい、やすい、はやい」の1点が欠けてしまったことにより、あんなに殺伐とした吉○家は初めてでした。「鶏すき丼は関係ねえだろ!!」の人、怖かったなぁ。先に入っていて良かった。

日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。

浅野ゆうか(あさの ゆうか)さん -仮名- 26歳:会社員 

浅野さん、わざわざ仕事を抜けてきてくださったんですよね?

はい(笑)。

本当にありがとうございます。でも、大丈夫なんですか?

はい。大丈夫ですよ。

どんなお仕事をされているんですか?

広告代理店で、デザインの仕事をしています。昼も夜も、それなりに遅かったり早かったりするので、わりと時間は使えます。

でも、もう19時ですよ。会社に戻られて、何時までお仕事をするんですか? 

そうですね。22時とか終電とか。

そんなに! では朝は何時から?

9時半です。

めちゃくちゃ働いてらっしゃるじゃないですか!!

でもブラックではありませんよ。バッチリ残業代も出ますからホワイトです(笑)。

お忙しそうですが、私生活は満喫されていますか? 趣味とか。恋とか。

現在、彼氏はおりません。でも忙しいからという理由ではなくて、そのー、私ー、すごいヲタクなんですよ(笑)。

なるほど(笑)。それも〈すごい〉がついちゃうくらいのヲタクさん?

はい(笑)。ですから、彼氏とかは別にいらなくなっちゃって。いや、彼氏は欲しいんですけど、それほど出会いもありませんし、ひとりでいるほうがラクですし。億劫になっちゃって、3年くらい彼氏はおりません。

浅野さんは、どんなヲタクさんなのですか?

えっと、腐女子です(笑)。

〈腐女子=BL〉と考えていいですか?

はい。男同士を嗜んでおります。ウハウハしています(笑)。

ウハウハかぁ(笑)! 具体的に、どういったものがお好みなのですか?

私は二次創作が好きです。ご存知ですか?

すいません。疎いので教えてください。

簡単にいいますと、パロディみたいなものです。

ああ、同人誌とかに載っているヤツですか?

はい、そうです! ジャンプとかで連載している漫画のパロディとかですね。私は、小学校の頃から同人を買っていたんです。中学時代はそこに登場する男の子と男の子の関係を、ずっと年表にしていました。

んん? どういうことですか?

どこで付き合って、どこでキスをして…みたいな(笑)。

それが同人誌に載っているんですか?

いや、私の心のなかで。

整理します。ジャンプの連載されている漫画の同人誌を買いながら、更に浅野さんは、その同人誌のストーリーとは関係なく、勝手にストーリーを妄想して年表をつくっていた。あっていますか?

はい。

例えば、こち亀の両津勘吉と中川だった場合、浅野さんの頭のなかでは、両さんと中川が何年目にキスをして、そのあと…。あっていますか?

はい。新卒入社した中川が…みたいな(笑)。

亀有公園前派出所に配属した中川は…

右も左も分からない(笑)。

そこを両津が…

手取り足取り(笑)…というのを別の漫画で描きながら、同時に年表もつくっていました。ええ、それについてしか考えたことがなかった。

楽しそうですね!

楽しいですよ!

ちなみに、どの漫画で年表をつくっていたんですか?

『○ニスの王子様』です。

わざわざ『○ニス』とおっしゃるなんて! いやらしいですね!!

いえ、そういうつもりではなく(笑)。

有名ですよね? 舞台とかにもなっていますよね?

はい。人生を狂わされました(笑)。

スポーツ漫画なんですよね?

はい。ちょっと最近は、バトル漫画みたいになっていますけど、最初は普通の○ニス漫画でした。

普通の○ニス漫画って、やっぱいやらしいですね! では、具体的に浅野さんの『○ニスの王子様』年表を教えていただけますか?

はい。作中では、接点がほとんどないふたりをくっつけました。

作中では、親しくないふたりってことですか?

はい。そんな男の子同士の年表です。同時に私は、その片方の子に恋をしてしまいました。

それは浅野さんの年表のなかの話ですか? それとも、本当に恋しちゃったんですか?

本当に恋をしてしまいました。私がH吉くんと出会ったのは小学5年生のとき。

すいません、エッチくんって誰ですか?

H吉くんです。私が恋した子です。彼は中学2年生でした。初戦で負けて泣き崩れるH吉くんを見て、恋に落ちたんです。

すいません、こんがらがっています。その泣き崩れるシーンは、浅野さんの頭のなかですか? それともちゃんとジャンプに載っているヤツ?

ジャンプに載っているヤツです。

はい、わかりました!

それでネットで様々なH吉くん情報をゲットしているうちに、〈ドリーム小説〉に辿り着いたんです。

えっと、それはなんですか?

〈名前変換小説〉というものです。まずファンが小説を書きます。それはある女の子とH吉くんのラブストーリー。しかし、そのサイトには、訪れた人が名前を入力するフォームがありまして、そこに自分の名前を入力すると、なんとびっくり! 

なにがびっくり(笑)?

その女の子が私の名前になるんです。その小説を読むことによって、各々が自分とキャラクターのラブストーリーを読めるっていう画期的なシステムなんです。

ほほう! 

ですから、ドリーム小説のなかで、私とH吉くんは完全に恋人同士だったんですよ。でも読んでいくうちに「私じゃ幸せにしてあげられないな」って思いました。「私は男の子じゃないし、○ニスもできないし…

「○ニスもできない」って(笑)。

…○ニスプレイヤーとして高みを目指すH吉くんには、もっとふさわしい相手がおるやないか」って(笑)。

すいません、○ニスが引っかかり過ぎますが、ツッコミ点もたくさんあります。まず、〈私は男の子じゃないし〉ですが、この時点で、H吉くんは男色家だったんですか?

はい。私のなかではそうです。

〈ふさわしい相手〉とは誰ですか?

K原くんです。先ほど申しました、作中で喋ったことのない男の子です。

K原くんとの関係は、浅野さんの年表の話でしょ。ドリーム小説のなかには、出てこないエピソードですよね。

いえ、年表のなかでは、私を乗り越えてK原くんと繋がっていますから。私は身を引いたんです。

うーん、難しい(笑)。

ちなみに私は、年表上では23歳でH吉くんと会うことになっていました。結局、会えなかったんですけど(笑)。

ごめんなさい、更にわからなくなるので、もう情報を入れないでください。

すいません(笑)。

結局、そのふたりはどうなったんですか? あ、浅野さんの年表の話ですよ。

作中でふたりは接点がなかったので、ストーリーは無限大に広がっていきました。様々なルールを自分のなかにつくり、あらゆる二次創作を楽しんでいたんです。

エッチな場面もあったのですか?

いいえ、それはありませんでした。もちろん今は、男性同士のセックスはドンと来い、なんですけど(笑)。

ドンと来い、か(笑)。

当時は、まだそういうのがわからなかったので、精神的な繋がりが1番でしたね。K原くんとH吉くんは永久ノーセックスでした(笑)。

じゃあ、ずっとプラトニックな関係が続いていたんですか?

ところがどっこい。

はい、どっこい。

突然、終焉がやってきました。『○ニスの王子様』自体が終わって、『新○ニスの王子様』が始まったんですが、そしたら○ニスプレイヤーの合宿みたいなのがスタートしまして、4人ひと部屋の共同生活が始まったんです。そしたら、H吉くんとK原くんが同部屋になってしまったんですね。

えっと、これは本当の話ですよね?

はい。実際に作中で、H吉くんとK原くんが205号室になってしまったんです。

浅野さんの年表が狂ってしまうじゃないですか。

そうなんですよ! そもそも作中には、K原くんが「お前、H吉と戦ったよな?」って誰かにいわれて「そうだったっけ?」っていう場面しかなかった。そこから私がふたりの出会い、そしてストーリーを年表にしていたのに、自分のなかでは年表が完成していたのに、その年表の真ん中に合宿を入られると困るんですよ。

はい(笑)。

そんな状況になってしまったので、別の畑に移動しました(笑)。

H吉くん、K原くんとはサヨナラしたと?

はい。腐女子っていうのは遊牧民ですから。

お疲れさまでした! ちなみに現在は、どんな活動をやってらっしゃるんですか?

エロ小説をずっと書いております(笑)。

大人になりましたね(笑)。それも同人的なヤツなんですか?

具体的にはいえないのですが、実在する人物をくっつけるっていう、禁断の領域に入りました。

スゴそうですね! 内容が知りたい!!

すいません、それはちょっと。叩かれますので(笑)。

じゃあ、小説のタイトルだけでもお願いします!!

『前戯 オブ アヌス』です。

アハハハ!!!!

現在4部目に突入しました。

お願いします! ちょっとだけ教えてください!!

そうですね…。1週間オナ禁を耐えたあと、やっとセックス…となったのに、またそこから前戯を耐えるという話です。「ダメだ、我慢できない!」っていう感じでしょうか。

最高ですね! 楽しそう!!

ホントですか(笑)? ありがとうございます!

いつ執筆されているのですか?

朝の電車とかでも書きます。グーグルドキュメントって便利ですよね!

では、『前戯 オブ アヌス』に至るまでのお話をお聞かせください。ご出身はどちらですか?

静岡県の沼津です。大学で上京するまで、ずっと沼津でした。

じゃあ、沼津でH吉くんと出会ったんですね。

はい! あとは我愛羅くんにも恋をしました。

それは誰ですか?

『NARUTO』の我愛羅くんです。

恋多き女ですね。

額に〈愛〉って書いてあるので、筆ペンで〈愛〉って書く練習をしていましたよ(笑)。

『NARUTO』のドリーム小説は?

もちろん、やっていました。

じゃあ、我愛羅くんは、浅野さんを何て呼んでいたんですか?

最初は名字でしたが、だんだん名前になり、呼び捨てになり…。そういうのがあるんですよ(笑)。

我愛羅くんとはお付き合いしました?

はい。まず、私は里の忍者になりました。

アハハハ!

砂隠れの里というところなんですけど、我愛羅くんは皆から浮いているんです。浮いているんだけど、私には何となくシンパシーを感じていて、つっけんどんにされるけど、我愛羅くんにも変化が現れ、いずれふたりの間には…みたいな感じです。結局、最後は私が彼のために身を引くのですが(笑)。

そのパターン、好きですね! ちなみに現実の小学校の男子には全然興味がなかったんですか?

いえ、そんなこともありませんでしたが、でも、初めてつきあったのは小学5年生で、それも女の子だったんですよ。

あらま! 

その子がすごくエッチな子だったんですよ(笑)。道重さゆみみたいな顔をしてるんですけど。

エッチな道重さゆみって、いいですね!

すごく可愛いじゃないですか。それでつきあったというか、チューとか、聞きかじりの知識で色々しちゃったんです。それで天啓を得てしまいました(笑)。

天が浅野さんを導いたんですね! そして中学では年表作りに勤しむわけですが、地元の中学に入学されたんですか?

私立なんですけど、中高一貫の女子校に入りました。

あら、禁断の匂いがプンプン。

山の上にあるような学校で、本当にイノシシとかサルしかいないんです。何もないし、やることもないから、年表を書くしかなかった(笑)。

好きだったから、書いていたクセに! どうしてその学校を選んだのですか?

母がそこの出身なんです。うちの母はすごく厳しくて、すごく怖いんです。ですので、逆らうことなく入学しました。豊田真由子みたいな感じですね(笑)。

それは本当に怖そう!

母は、長唄の囃子方の先生をやっていまして、私も3歳からやらされていたんです。それで鬱屈としたものが全部、前立腺に注がれてしまったのかと(笑)。

前立腺(笑)! 新しいキーワードですね! ちなみに千野さんは、「女子校ってザックリいうと、宝塚に走るか、漫画に走るか、ジャニーズに走るかなんです」と、いってたんですが、浅野さんのところもそうでしたか?

本当にそんな感じです。腐女子も多かったですし、そうじゃなくても、みんなエロいものを求めていましたね。

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