Who Are You?:須藤康隆さん(39歳)契約社員

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Who Are You?:須藤康隆さん(39歳)契約社員

「脱退というか、相手にされなくなりました(笑)。間違いなくアルコール依存症だったんです」

週末夜のスーパー。おふたりのイケてる女性。これからしっぽりとホームパーティーかな。ごめんなさい、買い物カゴを覗きましたところ、赤ワイン、ローストビーフ、海老しんじょ。そして、「わー! 素敵なシールのコーナーですよ!」おそらく後輩さんであろう女性の目線の先には、お寿司の30%OFFコーナー。でも、おそらく先輩であろう女性は、ピザのコーナーにいました。お寿司の声、届いていたかな。

日々の生活の中で、私たちはたくさんの人たちとすれ違います。でもそんなすれ違った人たちの人生や生活を知る術なんて到底ありません。でも私も、あなたも、すれ違った人たちも、毎日を毎日過ごしています。これまでの毎日、そしてこれからの毎日。なにがあったのかな。なにが起るのかな。なにをしようとしているのかな。…気になりません?そんなすれ違った人たちにお話を聞いて参ります。

須藤康隆(すどう やすたか)さん 39歳:契約社員

須藤さん、本日はよろしくお願いします。

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よろしくお願いします。

応募動機がとてもシンプルでした。「モテたいから」と。

はい、ええ、はい。

すいません、「モテたい」というので、もうちょっとブーちゃんなのかなぁ、と勝手に思っていたのですが、とても渋くてステキですね。

いえ、そんなことはありません、そんなことは(笑)。

やっぱりモテたいんですか?

はい(笑)。

今ですか?

そうですね。

須藤さんがおっしゃる理想の〈モテ〉具合を教えてください。

…ジローラモみたいな。

わかりやすいです!

はい。やっぱり、ちょいワルって憧れます。

須藤さんは、ちょいワルではないと?

はい。ちょいショボです。いや、ただのショボです。

うまいこといいますね! やっぱりジローラモになって、お姉ちゃんをなんとかしたいんですか?

まぁ、上質なお時間が過ごせればと。

ほほう! そのお時間を教えてください!

まぁ、女性と一緒にお酒を楽しむようなことです。最終的にカラダ的なこと云々ではありません。その場の会話を際限なく進められるようになるのが理想です。

どんな会話をする予定ですか?

そこまで考えてはおりません。

はい(笑)。ちなみにこのコーナーに出れば、モテると期待しているのですか?

知名度は増しますよね?

まあ、そうかもしれませんけど、何名か、こちらで恋人募集みたいなことをやったのですが、おそらく成果は出ていないはずです。

そうなんですか。全然なんですね。

はい、全然です。すいません。

そうでしたか、そうでしたか(笑)。

じゃあ、現在付き合ってらっしゃる方は…

おりません。ひとりものです。

どんな生活をしてらっしゃるのですか?

お察しの通り、寂しくて、わびしい生活です(笑)。

はい(笑)。お住いはどちらですか?

横浜の南区です。最寄駅は、地下鉄ブルーラインの吉野町になります。

あ、終点は湘南台ですよね。リサコさんが住んでらっしゃるところ。女子大生はいかがですか?

嬉しいです。女性大生にもモテたいですよ、辛く(笑)。

現在は、おひとり暮らしですか?

はい。給料もそんなによくありませんし。はい、わびしいですよ(笑)。

お仕事は、なにをしてらっしゃるんですか?

ケーブルテレビのテクニカルサポートです。

ああ、テレビとかが映らないときとかに、お助けしてくれるヤツですか?

はい。おじいさん、おばあさんから電話がたくさんかかってきます。

帰宅後は何をしてらっしゃるんですか?

ひたすらお酒を飲んでいますね。

ひたすら何を飲んでいるんですか?

ビールです。ずっとビールを飲んでいます。

毎晩、どれくらい飲むんですか?

2リットルくらいです。

2リットル!!!! ちょっと大丈夫ですか! 痛風とかは? リサコさんもやばそうでしたよ!!

今のところは大丈夫です(笑)。

500m x4本ってことですよね?

はい。

銘柄は?

サントリー金麦です。

じゃあ、冷蔵庫のなかには、金麦がいつも控えているんですか?

いえ、あればあるだけ飲んでしまうので、4本以上はキープしないようにしています。その日のうちに飲む分だけ買って帰ります。

偉いですね! いや、偉くないか。じゃあ、ご自身でおつまみも用意して?

基本的に飲んでいるときは、なにも食べません。お酒があれば大丈夫です。

夕飯は食べないのですか?

うーん、基本的に飲むと眠たくなってしまうので、眠気が出てきたら、サッと食べて寝るようにしています。

なにを食べて寝るんですか?

焼きそばですね。

アハハ!! ペヤングですか? UFOですか?

いえ、フライパン系です。マルちゃんとか。

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ああー(笑)。具を教えてくださいますか。

ソーセージですね。

はい(笑)。じゃあ、テレビでも観ながらゴクゴクと?

テレビではないですね。音楽をかけています。

なにをかけながら、金麦を飲んでいるんですか?

ピクシーズです。

アハハ!!!!!!

はい(笑)。最近は『ドリトル』です。アハハ!!!!!!

アハハ!!!!!! 最高ですね! でも、須藤さん、もしかして、ちょっとアルコール依存症入ってます?

うーん、ちょっとあるかもしれませんね(笑)。でも前はもっと酷かったんで。

あらー、その辺も今日は教えてくださいね。

はい(笑)。

須藤さん、ずっと横浜ですか?

いえ、仙台の出身です。大学を卒業してから横浜に来ました。

どんなお子さんだったのでしょう?

キン消し、ビックリマン、ファミコン…でしょうか?

はい(笑)。

あとは、うーん…。小学校の頃ってあんまり覚えていないんですよね。母親がやたら〈ボンバーマン〉がうまかったことは覚えています。

お母さんったら(笑)。ご実家のお仕事は?

喫茶店だったんです。夜はちょっとバーになるような。

ナポリタンとか!!

そうですね(笑)。あとは鴨肉のソテーとか。

おしゃれですね!!

お昼は母親、夜は父親が仕切っていました。

じゃあ、須藤さんもおしゃれソテーを食べて成長したと?

うーん、どうでしたでしょうか。あんまり覚えていないもんですね。すいません。

いつ頃なら覚えています?(笑)

中2くらいでしょうか。

じゃあ、そこからお願いします!

陸上部に入っていたのですが、その頃から音楽を聴くようになりました。

お! ピクシーズ?

いえ、その頃は王道のメタルとかハードロックですね。メタリカとか…

はい!

パンテラとか。

パンテラは王道かなぁ(笑)。

『俗悪』とかがリアルタイムでしたので(笑)。そこからどっぷりと音楽だらけの生活になりました。

ご自身でバンド活動とかもやっていたんですか?

ギターを始めたんですけど、バンドは高校に入ってからですね。

それはやはりパンテラ的な?

いえ、それがまったく違って、ファンク・バンドです。ジェームス・ブラウンとかスライのカバーとか。

んん? なんでそんな流れになったのですか?

子供たちにバンドをやらせていた大人がいたんです。ジャクソン5みたいに親が仕切って。

フムフム。

当時、僕はテレキャスターを持っていたのですが、フェンダーではなくて、セイモア・ダンカン製だったんですね。ファンク親父の息子が高校の同級生だったので、そこで目に止まり、スカウトされたんです。

でもパンテラから、いきなりファンクでしょ? どうでしたか?

はい、大変でした。それまではバリバリのパワーコードで、「俺は弾ける!!」と思っていたんですが、ファンクはまったく弾けなかった。めちゃくちゃ難しかったんです。でもやっているうちに、その難しさが面白くなり、自分の幅もどんどん広がっていったので、そこからはさらに音楽中心の生活になりました。

でもバンドマンだったらモテるでしょ。高校は共学だったんですか?

いえ、工業高校だったので、女の子がまったくいなくて。

あらー、じゃあ、その頃からモテたかったと?

いえ、そんなこともなく(笑)。なんていうんでしょうか、当時はストイックにやっていたはずです。とにかく最初はファンクが苦痛だったんです。パーラメントとかも「わかんねぇー! 面白くねぇー!!」って感じで。でもスパルタでやらされているうちに、どんどんハマっていったんです。ですから一生懸命、音楽のことばかり考えていましたね。

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悶々としなかったですか?

そこは適当にエロ本とか見ていましたから大丈夫です(笑)。そんなに性欲が強い方ではありませんでしたし。今でもそうだと思いますよ。

あら! ジローラモを目指しているのに!!

ああ、そうでした(笑)。

高校卒業後は、仙台の大学に入学されたんですか?

はい、東北学院大学に入りました。

そして、さらにファンク道を突き進んだと?

いえ、大学からはミクスチャーです(笑)。

おお!! 高校時代にファンクを学び、出元はパンテラだから、完璧な流れじゃないですか!!

はい、ドンピシャでした(笑)。最初はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのカバーをやっていました。

須藤さんがトム・モレロですか?

はい。でも当時はみんなやっていましたよ。周りにはたくさんトム・モレロがいました(笑)。

バンド名を教えてください。

マゴット・ブレイン・ホモコア・ファンク・バンドです。

いい名前ですけど、なんですか、それ(笑)?

なんだったんでしょうね(笑)。誰も突っ込んでくれませんでしたけど。

ずっとホモコアをやっていたんですか?

いえ、そんなことはなかったです。その後は、違うバンドをやっては解散を繰り返していました。

そろそろジローラモにも近づきました?

お付き合いした方はいましたけど、そんなにベッタリって感じではありませんでしたね。

じゃあ、最初の方とは、どこでお知り合いになったんですか? 大学の同級生?

いえ、実家の喫茶店のお客さんでした。

あら! その彼女もおしゃれソテーを食ってたんですね! 須藤さんが声をかけたんですか?

いえ、向こうからでした。

モテてるじゃないですか!

まだ若かったですから。ショボくなかったので(笑)。

彼女さんとは長かったのですか?

いえ、そんなこともありません。うーん、今もそうなんですけど、恋人とか関係なく、あんまり人と長く続かない傾向にあります(笑)。

おそらくジローラモは超社交的なはずですよ。真逆ですね。

確かに(笑)。

そして大学卒業後は横浜ですよね。就職のためですか?

いえ、同じ時期に両親が亡くなってしまったんです。まず母親が癌になり、そのあと心労もあってか、父親も急性白血病にで亡くなってしまったんです。喫茶店も閉めまして、思い出深い仙台にいるのはキツくなったので、姉と一緒に別のところで新しい生活をしようと決めました。それで心機一転、ふたりで横浜に来たんです。

そうだったんですか。そして横浜でお仕事を探されて?

はい。でもちょうど私たちの頃って、就職氷河期だったんですね。受けても受けても、まったく受からない。大学在籍中に、ダブルスクールでDTPの専門学校にも通っていたんですけど、そっち方面の仕事にはありつけなくて。それで結局、最初は大学の警備員を始めました。でも1年くらいで辞めちゃいました。そこからは様々な仕事をやったり、休んだり。

休んだり(笑)?

はい。お金が貯まったら休んだときもありました(笑)。うーん、だらしない生活でしね。何をやっていたんだろう、当時の私は(笑)。

若いですからねぇ(笑)。私も同じようなもんです。音楽活動はどうされていたんですか?

本格的にやるというより、遊びの延長で続けてはいました。

どんなのをやっていたんですか? 初心に戻りパンテラとか?

エレクトロニカとかー。

これまた、意外な展開ですね(笑)。

まぁ、トリップホップとポエトリーリーディングの融合というか、マッシヴ・アタック系のバンド形態でやったりしていました。ただ、そのバンドのリーダーは「プロになって、成功してやる!」みたいなのがあったようなのですが、日本でトリップホップで売れるとは考えられない。

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はい(笑)。

私は無理だろうと思っていましたし、そんな活動をしていたらお金もなくなります。そのとき「ちゃんと仕事しよう」というか、「したい。お金が必要!」と思い、NTTで働き始めたんです。

ああ、それで今のお仕事に繋がりますね。じゃあ、音楽活動もそれっきりですか?

いえ、その後も、ちょっとはやってはいたんですけど、その頃からですね、お酒が出て来ます(笑)。

ああ、ここで!!

ウイスキー持って、スタジオ入ったり、飲むためにスタジオ入ったり。そんなの他のメンバーにしたら、ただの迷惑ですよね。仕事はちゃんとしていましたけど、それ以外の時間は飲んでばかり。さらにギターにもアルコールが付き纏うようになりまして。

どういうことですか?

ちょっと飲まないと指が潤滑に動かせなくなってしまいまして(笑)。

あらー。

バンドも人間関係ですから、そんなヤツとまともに活動できませんし、関係も築けません。

それでバンド脱退ですか?

脱退というか、相手にされなくなりました(笑)。間違いなくアルコール依存症だったんです。ですから、このバンド活動というか、人間関係も長く続きませんでした。そこから音楽活動はもうやっていません。

でも、これまでずっとやっていた音楽活動がなくなってしまい、寂しくなりませんでしたか?

うーん、もう思い通りに弾けなくなっていたので、しようがないでしょう。ただ、その頃、ずっと私の味方だった姉も亡くなってしまったんです。

ええっ!

私が35歳のときなんですけど、それもあってギターどころではなくなってしまった部分もあります。心を閉ざすようにもなり、さらに人付き合いも少なくなりました。

お姉さまとは仲が良かったんですか?

はい。一緒にサマーソニックとか、スプリングルーヴとか行くような関係でした。家族であり、親友だったので、姉がいなくなったときは本当に厳しかったですね。親が死んだときより、本当にキツかったです。

そのようなお辛い時期を経て、こちらにご応募いただきましたが、ちょっとお気持ちに変化があったのですか?

そうですね。姉が死んで4年経ちまして、気分的にも落ち着いてきました。傷も癒えてきたので、こちらに応募させていただいたんです。それにモテてもいいんじゃないかと(笑)。

はい、もちろんモテていいです! ちなみにどんなタイプの女性が好みですか?

優しい方がいいですね。私のバカを許容してくれる女性でしたら嬉しいです。

はい。

あとは美人かな。

コラ、欲張り(笑)!! どんな美人ですか?

普通ですよ。一般的な。

例を教えてください。

ガッキーとか。

アハハハ!!

綾瀬はるかとか。

予想以上に一般的な正解ですね!! じゃあモテたら、そのあとどうします? モテなくてもいいので、今後の夢とか野望とかあったら教えてください。

自分の店を持ちたいです。喫茶店です。

ああ、それはご実家の影響もあって?

はい、利潤を考えると夜はバーもやって。

須藤さん、料理はできるんですか?

いいえ、まったくですよ。

あ、でも焼きそば!!

ああ、そうですね(笑)。でもお昼は誰かに任せて、私は夜立ちます。

それでまたガブ飲みしちゃうんじゃないですか?

いえ、それはありません(笑)。

じゃあ、お金を貯めないと。そして、金麦も飲みすぎないように(笑)。

そうですね(笑)。5年後には開店させたいと考えています。

ご家族も見守っていることでしょう。

はい。私の場合、〈生きる〉ってことが重要です。本当に姉がいなくなったときは、どうなるかわかりませんでしたし、自分もおかしなことを考えたりもしましたけど、今は〈生きる〉という目的がありますので、そこを進んでいきたいです。

※「Who Are You?」では、インタビューを受けて下さる方を募集しています。自薦、他薦、構いません。お名前、ご年齢、性別、お住まい、ご職業、応募の動機を明記の上、こちらまでお問い合わせください。