島精機製作所の勤務地は、どちらだったんですか?

最初の3年半は、本社がある和歌山でした。

和歌山…。すいません、井出商店くらいしか浮かびませんでした。

私は、豚骨の匂いが苦手なので行きませんでしたが(笑)。

和歌山では、ひとり暮らしだったんですか?

はい。TSUTAYAで100円のDVDを借りてめっちゃ観るような生活でした(笑)。

知り合いもいなかったでしょう? 寂しくありませんでした?

そうなんですけど、和歌山に来てから2年目に、文化のときからつきあっていた子と結婚したんです。

あー! 経理の奥様ですか?

いえ、前妻です(笑)。僕、バツイチなんです。

あ、そうなんですね。どうして離婚されたのですか?

うーん、奥さんも不満だったんでしょうね。僕は仕事が忙しくて、毎日深夜に帰ってくるような生活だったんです。全く知らない土地だから、奥さんも辛かったと思います。その後、東京支店に転勤になったんですけど、そしたら今度は奥さんがはっちゃけてしまって。もろもろあって、その後、離婚しました。

現在の奥様とはどこで知り合ったんですか?

法律事務所で事務をやっている友達の女の子に、知り合いを紹介したんです。そしたら、そのお礼に紹介してもらった子です(笑)。5年くらい前に結婚しました。

じゃあ、ご結婚されたあとに独立されたんですね。奥さまは、独立に対して、なんていってました? 不安だったとか?

いえ、それはありませんでした。逆に励まされました。ずっと僕のなかには、独立したい気持ちがあったんですけど、それを奥さんに話したら「行動に移せばいいじゃん」っていってくれて。

会社のほうはどうでしたか?

こちらも応援してくださいました。上司に話したら、「1年間、準備期間として動いてもいいよ」といってくれまして、それから事業計画書を立て、1年後に退社し、会社を立ち上げたんです。

でもお金がかかりますよね? 開業資金はどうされたんですか?

事業計画書を見せて、親族から借りまくりました(笑)。「本当に大丈夫なの?」なんていわれましたけど、こっちもそれはわからない(笑)。

はい(笑)。

「大丈夫じゃない」とはいえないので、とりあえず「大丈夫」といいました(笑)。

それが今では大成功。

そんなことありません(笑)。まあ、なんとか食っていけるくらいにはなりましたけど、まだまだですね。

さて浦さん、さっきから気になっていたんですけど、本日は大荷物ですね。なにが入っているんですか? 糸の山?

ちょっと見てもらいたいものがありまして。こちらです。

んん? 何ですか、このパネルは? 絵…じゃないな。

これもニットなんです。ニットって、着るだけのものじゃないというのを自分はつくりたくて。

すごい! 確かに触るとセーターと同じですね!

18ゲージという細かいゲージで、ジャガード編みという編み方をしたものを巻きつけているんです。一応、〈photricot®︎〉という商標も取っているんですけど、技術商標ではなくて、ハイクオリティージャガードニットの製品っていうブランド商標みたいなものです。これはTRUMPとTRUTHをかけたものですね。

さすが元ラッパー! メッセージが強い!! 浦さんがデザインされているんですか?

そうです。

完全にアーティストじゃないですか! つくるのにどれくらい時間がかかるんですか?

工場が空いている時間にやってもらうんですけど、データは仕込んであるので、編むだけだったら1時間くらいですね。あとはパネルに貼る作業だけです。 

こちらは、どこかで買えるんですか?

弊社ECサイトで売っています。でもあんまり売れていません(笑)。インスタのフォロワーも増えませんし(笑)。海外からの注文はあるのですが、日本人って壁にパネルを飾ったりしないので、色々と試行錯誤しております。メッセージ性も強いので、方向性が違うのかな? とか、額に入れると高く見えるんですけど、そうすると触れなくなっちゃうしなぁ、とか。

これはゼッタイ実物を見て、触ってもらったほうがいいですよ! 個展とかは、やられているんですか?

いえ、まだやったことはありません。そうですよね、やります(笑)。これって、「プリントと変わらない」っていわれると、確かにプリントと変わらないんですよね。実際、プリントのほうが安いですし、遠くから見たら、どっちかわからない。でも、色褪せはしませんし、ニットが好きなかただったら、「ヤベエ」ってなってくれるんです。例えば、僕は、デザイナーの倉石一樹さんのニットを担当しているんですけど、その倉石さんも気に入ってくださいました。

ニットをよく知らない私でも、これはヤベエです! ちなみに、これのセーター版はあるんですか?

あるんですよ(笑)。倉石さんのアイデアでセーターにしたんです。去年、エディソン・チャン氏が主催の中国であった展示即売会〈innersect〉にも出品したんですけど、ほとんど完売しました。わかる人には、わかってもらえるんですけど、うーん、もっと頑張らないといけませんね(笑)。

浦さんのニット愛、本当にすごいですね。ニット道を極めた感はあるんですか?

いえいえ、まだまだです。確かにニットのことは知っているほうだと思いますが、糸のことは糸商が強いです。うちは、コーデュラナイロンと綿の糸でニットをつくっていまして、コーデュラはスレに強く、5000回擦れても穴が開かないんです。それをニットにすれば、毛玉にならないし、穴も開きにくい。でも、そういうアイデアは、糸商のかたからの知識を借りて固めているので、これからは自分でも糸のことをもっともっと勉強したいと考えています。

ニットを突き詰めると、糸に辿り着くんですね。

綿の糸だったら、綿のワタをどこから持ってくるのか? 中国からか? インドからか? それとも、その他の国? 各国からワタだけを買い付けて日本で紡績する紡績屋さんもありますし、糸の状態まで海外で作って輸入してくる紡績屋さんもあります。本当にそこら辺は紡績屋さんによってバラバラなんです。

綿は、日本でつくっていないんですか?

はい、つくっていません。日本は良い綿を育てる気候に向いていないんです。

いやぁ、深いですね。

ええ。本当に深いんです。通常、アパレルさんがシャツなどをつくる場合、布帛を扱っている生地屋さんが積んでるものを買っているので、どこかに同じ生地が必ずあるんですよ。でもニットは糸から選べるので、編地が被ることは少ないですし、完全オリジナルのものがつくれるんです。例えば、白と黒の糸を撚れば、杢糸というのものができますし、編んだら違う雰囲気になるし、編み方を変えれば、違う柄にもなります。生地を1からつくるイメージですよね。

なるほどー。お母さんや彼女が編む1点物と同じってわけですね!

そうなんです。もっとたくさんの人がニットの魅力に気付いて欲しいですね。まぁ、先入観でメンテナンスが面倒だと思われがちな部分もありますが。

確かに洗濯機に入れたら奥さんに怒られます。

最近は自宅で洗える〈ウォッシャブルウール〉とかもあるんですけど、結局押し洗いをしないとダメなんですよね。そういう部分の改善も考えております。

ニットってワンシーズン洗わなくても大丈夫ですか?

カシミヤとかだったら、ワンシーズンの真ん中に1回、終わりに1回とかがベストですね。まぁ、人によりますが(笑)。クリーニングには出さなくても大丈夫です。手間はかかりますけど、メンテナンスはそこまで難しくないんですよ。化学繊維のメンテナンスは、確かに楽チンなんですけど、着心地、吸水性、速乾性を考えると、ウールや綿100%の天然物には敵わないんです。

ユニクロとか、ファストファッションのニットはどうお考えですか? やっぱライバル?

いえいえ、全然、思わないですよ(笑)。扱っているものが違いますしね。ユニクロはユニクロでいいと思います。安いから買い回しもできるじゃないですか。ただうちは、高いものは大事にずっと使おうよ、っていう考えだけです。そこら辺は気にしていないですね。

こんなにセーターのことを考えた日はありませんでした! 今年の冬は、奮発しちゃおうかなぁ! ニットの浦さんに頼んじゃおうかなぁ!

ああ、本当にそうなんです(笑)。〈ニットといえば浦さん〉になりたいんですよ(笑)。「ニットを頼むんだったら、あそこに頼めばいいよ」っていわれるように、これからも頑張って参ります。

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