ジオ・コスモス

デーモン・アルバーンが日本科学未来館にてミニライブ実施

今年4月、全英を代表するロック・バンド、ゴリラズとブラーのフロントマン、デーモン・アルバーンは初のソロアルバム『Everyday Robots』を発表。日本滞在中の7月24日(木)限定されたファンと2体のアンドロイドを招待し、日本科学未来館でパフォーマンスが行った。未来館が会場として選ばれた背景には今年3月、アルバーンがプライベートで未来館を訪問したことにある。未来館の雰囲気を気に入ったアルバーンが「ロボットに囲まれた場所で演奏したい」と、ファンとアンドロイドを招待した形でのライブを希望したことから、今回のパフォーマンスが実現した。ちなみに、最新アルバムの収録曲「Lonely Press Play」のミュージックビデオには、3月に訪問した時の様子が一部収録されている。

1 アンドロイドがデーモン・アルバーンのライブを鑑賞?

音楽に合わせて揺れるアンドロイド

本イベントには、約50名の関係者と共2体のアンドロイド(※1)が招かれた。成人女性の姿をした「オトナロイド®」(※2)と必要最低限の人間らしさを追求し作られた「テレノイド®」(※3)が前列に腰を掛けアルバーンの登場を待つ。会場の外では開始の少し前から雷と豪雨で嵐のようになっていた。稲妻が走るたび、建物内で巨大な地球ディスプレイ「ジオ・コスモス(※4)」が青く光り、この状況がより一層、場内の雰囲気を特別な空間へと演出していた。

19時、ミニライブがスタート。エレクトロピアノの前に座り弾き語るアルバーンは、最新アルバムから「Everyday Robots」「Hollow Ponds」、そしてブラーのアルバム『Another Star』に収録された「Strange News」と「Out of Time」の合計4曲を演奏した。ライブの間、「オトナロイド®」は音に合わせて身体を揺らしていた。歌詞を口ずさんだりまばたきをしたり、また切ないメロディーラインの時とアップテンポな時と、どことなく彼女らの表情が変化するようにも見えた。全曲が終了したところでアルバーンは特別ゲストである「オトナロイド®」のもとへ行き、目を見つめてお辞儀をするパフォーマンスも。特別ゲストである彼女は、アルバーンに対して満足そうにお辞儀を返していた。アンドロイドとはいえ、まるで生きている人間のようなその姿は、見ていてとても興味深いものだった。

2 アンドロイドがデーモン・アルバーンのライブを鑑賞?

3 アンドロイドがデーモン・アルバーンのライブを鑑賞?

アルバーンのライブを楽しむオトナロイド(奥)とテレノイド(前)

テクノロジーは「メランコリックなのかもしれない」

アルバーンは終了後のインタビューで、次のように述べている。

「アンドロイドとの共演は面白かった。近くで見ると確かに人工物なんだけど、遠くから見ると普通の人間に見える。フェイクではあるんだけど、リアルなんだよね。だってそこに、たしかに存在しているから。でもやっぱり、ロボットは絶対的な“他者”であることに変わりないと思う。そういった意味で、テクノロジーはメランコリックなのかもしれない。」

今回、実際に人工知能という機能によって二体のアンドロイドが音楽に反応したかのように思えた。だが、これには特別な仕掛けがあったと未来館担当者は説明する。「オトナロイド®」は今回のアルバーンとの企画のために組まれたプログラミングにより遠隔操作されており、「テレノイド®」にいたっては、「オトナロイド®」のように口を動かす機能はあるものの今回はそれを使わず、通常モードと呼ばれる待機動作でマイペースに動いていたという。実際確かに、彼女らはライブ終了後も観客が席を立つ間にも小さく揺れ続けていた。感情というところから切り離されていることを耳にすると、やはりロボットとの距離感を感じるものである。ただ、未来館担当者は「アンドロイドと共存する社会」は遠い未来の話ではなく、私たちの社会に密接に関わってくることでもある、そうした未来がすぐ近くまできていることをアンドロイドと過ごす機会に知って欲しいという思惑もあったという。

日本科学未来館で行われたアルバーンのパフォーマンスはまさに「ロボットのいる日常」が当たり前になった未来を予感させるものだった。けれど実際は今を生きる人間にとって、その光景はどうしてもまだシュールに映り、異次元に触れる体験である。だからこそ、こうした空間で奏でたアルバーンの音楽によって、普段わたしたち人間がもっている感覚とテクノロジーが自然にシンクロする瞬間を味わえたのかもしれない。

4 アンドロイドがデーモン・アルバーンのライブを鑑賞?

5 アンドロイドがデーモン・アルバーンのライブを鑑賞?

なお、今回のパフォーマンスとインタビュー映像は後日公開予定。

Photo by Takanori Kuroda
Text by Kana Inamura